入学試験(4)
ユウキの口元には自然に笑みが溢れていた。
(強い。この人は・・)
金色の甲冑を着た如何にも将軍という出立である。
腰に浴びる騎士剣は幾重にも宝石が散りばめられ、それ一つ一つが魔力を帯びている。
ユウキに近づくが、その一歩一歩が魔力で圧倒してくる。
臨戦態勢になり周りの声は聞こえず、神経が高ぶっていた。
団長はナーズが取り零した剣と盾を拾うと、10mほど離れて構えた。
それを見たアトリアが緊張して告げる。
「は、はじめ!」
ユウキは地面に足を突っ込んで一気に蹴り飛ばした。
初速が早く間合いを一気に詰める《ファストブロー》だ。
バルトフェルドは飛散した土塊を盾で防ぐが、これは近接戦を得意とする武闘家相手に悪手だ。
盾でユウキを視界から一瞬外した。
接近と同時にがら空きの胴体に肘打ちを見舞った。
ガァァァンッ!!と物凄い音がして防御壁を貫通して鎧が軋む。
しかし、気配を察知して接近された事に気がついたバルトフェルドが、肘打ちと同時に剣を振り下ろした。
これだけでも流石である。普通ならここで気がつかずにノックアウトしている。
だがユウキはそれを待っていた。
剣の魔力が弱い箇所を瞬時に見抜くと、斬撃に合わせてそこに肘と膝で剣に挟むように叩きつけた。
バキンッ!と言う音とともに剣が折れて宙を舞う。
《ウェポンブレイク》
《点穴》を利用してユウキが開発した武具破壊技。
武器を破壊されて流石にバルトフェルドは驚くが、直ぐにバックステップで後退する。
バルトフェルドは折れた剣をウッドシールドに突き刺すと、簡易のスパイクシールドを作り出した。
俺はそれを見てどんどん楽しくなっていった。
ユウキの戦闘についていけた者はグライスを除いて居なかった。
しかしグライスとの戦闘は協定の関係上避けていた。故に鍛錬した強さを実感出来ずにいた。
「もっとだ!」
ユウキは無意識に叫んでいた。
そしてバルトフェルドに距離を詰めて大振りのブローを入れるが、これはフェイントだ。
バルトフェルドはシールドで防ぐと、そのままスパイクシールドで殴りつけてきた。
サイドステップで躱し、ガラ空きの横っ腹に掌底を見舞った。
《烈風掌破!》
ドゴォォォォン!!と土煙を上げて二人が闘技場の壁に激突する。
ユウキは起き上がりざまに悪態をついた。
「いつつ、よくあのタイミングで折れた剣を引き抜いてカウンターしてきたな。」
すると対岸の土煙からも声が上がる。
「ハハハハ!お前最高だな、なんで魔力ねぇのにそんな強いんだ?
俺は王都騎士団団長バルトフェルドだ。お前はここで合格でいい。この後の試験をしても落ちるだけだろ?」
それを聞いてユウキは頭を下げた。
「ありがとうございす!でも受けても良いですか?」
それを聞いて団長は驚く。
「何?魔法が使えるのか?」
ユウキは首を横に降る。
「無理ですね。でもやってみなければ分かりません。」
そう言ってユウキは闘技場から下がり、ナーズが団長の元に寄ってきた。
「何なんですかね彼は。」
「分からん。だがブレイクには覚えがある。」
そう言って団長も観客席に戻っていった。