入学試験(3)
ユウキが通路を進むと、武器庫のような場所に出た。その中に合格したもの達が集まっていた。
ユウキが部屋に入ると会話が途切れ、皆ユウキに注目した。
「ねぇ、来る道が違うよ。」
そう言ったのはブロンド髪の女性で、魔術師風の子だった。
それに長髪を後ろで縛った男が反応する。
「おいシンシアは優しいな。道が違うとさ帰りな。なぁザック。」
ザックと呼ばれた男は短髪でややイケメン顔だが目が釣り上がっており強面だ。
「バース、シンシア、ここに来たからには試験を通ったんだろう。最初に言われただろうが黙っとけ。
最初に落ちたあの貴族と一緒にされたら笑い者だ。」
そう言われて2人は俯いて黙った。
するとアリサがユウキに寄ってきた。
(あの・・良く通れたね?)
流石にアリサも驚いたらしい。
はにかみながら「問題ないよ」とユウキが答えると、アリサは微笑んだ。
すると試験官ナーズとアトリアが武器庫に入ってきた。
「よし、これから本試験だ!実技の武術と魔術試験を開始する。まずは武術試験からだ。
相手は俺だ。防御壁を張るから死にはしないので本気で来い。認められれば通過だ。」
ユウキが手を挙げた。
「武器の指定はありますか?それと魔法の有無は。」
「いい質問だ。武器の指定はない。ここにあるものの中であれば自由に使え。
魔法は支援や強化を自分になら使っていい。使えるならな。」
ナーズはニヤリと笑う。強化魔法はそうそう使えるものはいない。攻撃魔法と違って難易度が高いのだ。
「他に無ければ準備しろ。五分後に始める。」
それを聞いて一斉に武器探しと点検が始まった。ユウキは武器を取らずそのままじっと待った。
アリサは短剣を選択したようだ。
最初の人が闘技場に入っていく。ザックと呼ばれた貴族風の男だ。
ザックは剣を抜くと正眼に構える。
対してナーズは左腕を前に出して盾を構え腰を落とす。剣と盾を持つスタイルだ。
「はじめ!」
ザックが一気に距離を詰めて下からの薙ぎ払い。
それをシールドバッシュで払い、剣を上にかち挙げた。
ナーズはそのまま剣を振るうがザックは流される力を利用して後方に下がって回避する。
すかさずナーズが一歩前に出し追撃するが、これは剣で受け止める。
しかし鍔迫り合いは鍛錬を積んだ騎士には敵わない。自力で勝るナーズが押し切り、蹴りを入れてザックが吹き飛ぶ。
「そこまで!ザックは合格だ。鍛錬を惜しむな。」
防御壁のおかげで無傷でザックが立ち上がると剣を鞘にしまい、お辞儀した。
「ありがとうございました!」
するとザックに対して歓声が湧いた。
そしてすかさず声が響く。
「次、ユウキ・ブレイク!」
それを聞いても歓声は騒然に変わる。
「あいつ名家だったのか?」
「しかし武器持ってないぞ?」
ユウキは周りの声など気にもせず前に出て、試験官ナーズに向き合った。
「武器はいいのか?油断していると怪我をするぞ。」
腰を落として構える。
「武闘家でして。よろしくお願いします。」
それを聞いてナーズは頷くと構える。
「はじめ!」
開始と同時にナーズが攻めた。盾を正面に構えてタックルしてきた。
跳んでそれを躱すとナーズの肩を踏み台に飛翔する。
宙返りをするとそのままナーズの肩に踵落としを見舞った。
ガァァンッ!と防御壁に阻まれるがショルダーまで貫通する。ナーズは勢いで体勢を崩した。
そこに回し蹴りを放つとズドォォォォンと大きな音を立てて闘技場の壁に激突した。
見ていた者はその美しさに誰もが見惚れた。そしてナーズは小さい声で言った。
「・・・バルトフェルド団長、ありゃ本物ですわ。魔力使ってなくてあの強さは尋常じゃないです。」
ナーズが飛ばされた先には男がいた。王都騎士団団長バルトフェルド・ガークスである。
それを聞いて団長はニヤリとした。
「ユウキ・ブレイク!この試験は中止だ!試験官は俺がやるから再試験を臨んでほしいが良いな?」
(この人、すごく強い。)
ユウキの目には魔力が迸る男の姿が見えた。
「もちろん良いですよ。」
そう言うと、団長は闘技場の中に入って進んだ。