入学試験(1)
翌朝目が覚めると、ユウキはシャワーを浴びて着替えた。
アリサを呼んで朝食に一階へ行くと、晩より混み合っていた。
冒険者の朝は意外に早いようだ。
空いているテーブルに着くと忙しそうに女将がやってきた。
「昨夜はよく眠れたかい?」
とニヤリと笑いながら聞いてきた。
「はい、心地よいベッドで快適に眠れました。」
それは良かったと、パンの入ったバスケットを置いて戻っていった。
「アリサ緊張している?」
「うーん、よく分からない。でもやれることを全部やるわ!」
アリサらしい答えに優しく頷いた。
食事を済ませて支度を終えると、2人は出入口に向かった。
途中ミサにあったので、機会があればまた使うと告げて宿屋を後にする。
第二門に着くと大勢の受験生が来ていた。
すると一斉にユウキの方に向く。
「ぷはっ」「ハハハハハッ!魔力が・・魔力がねぇ!」「何だよあいつ何しに来たんだ」と指をさして笑い出した。
目立つ鎧を着けているが貴族だろうか。
アリサは今すぐにでも突っかかって行きそうになるのをユウキが制止する。
そこでよく通る声が響き渡った。
「魔力がないのがそんなに面白いか?努力して来たなら、していないお前らよりよっぽど強いだろう。」
言われた方は激怒するが、相手に気がついた。
「何だって?お前何様だ・・・すみませんでした!無礼をお許しください!!」
服装をよく見ると貴族のようだった。
よく知られた者らしい。
そこで別の声が響いた。
「おい貴様ら!これから騒がしくしたら辞退とみなすからな。俺は今日の試験官のナーズだ。隣の奴がアトリア。
今より王都学園の試験会場に向かう。付いてこれなければそこで不合格だ。」
そう言うとナーズが走り出した。ぞろぞろと皆走り出した。後ろにはアトリアが付いてくる。
「アリサ、これは試験だ。風魔法で補助して走るんだ。」
アリサは頷くと俺にも掛けようとする。焦ってそれを止めた。
「ダメだ!個人戦かもしれないから援護はマズイ。それにこの程度大丈夫だよ。」
こうして先ほどの見せびらかすような鎧を着た貴族が、重たい鎧で付いて行けなくなる。
そしてアトリアの所まで来ると彼は言った。
「僕は第七位爵位のこうけ・・」ドサッ。
「はい失格。王のお膝元である学園の試験に、爵位とか関係ないから。」
それを見た後方者は焦って走り始めた。
遠回りをしておおよそ10kmほど走り、スタートの城門を通り過ぎて王都学園に到着した。
最初に300人程いた受験生は100人程まで減少していた。
支援魔法を使えなかったり、魔法にかまけて鍛錬を怠った者たちだ。