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入学試験前夜(1)

 王都ダルメシアの構造は城を中心に円形と扇状の鍵穴状に広がっている。

 城を囲む城壁があり第一門が次の敷地と通じている。

 次に学園関係と王都騎士団の拠点と居住区が円形の城壁に囲まれる。

 最後に第二門を隔たり城の正面から扇状に城下町が展開されている。


 この形状は城下町が全周囲にあると、多方面から攻められた際に守備部隊同士の離隔が離れすぎるのを防ぐ目的がある。


 ユウキが入った門は外界との唯一の通用門の第三門であり、城から最も遠い箇所になる。




 ユウキは城下町の大通りを歩いていると、ドンと誰かにぶつかりリンゴが辺りに散らばった。


 ユウキは慌てて「ごめんなさい、余所見をしてて。」と言いながら、リンゴを拾った。


 そして気がついた。ぶつかったのは年端もいかない少女で足に鎖が繋がっている。



 無言でリンゴを拾い続ける少女。

「はいこれ。ごめんね。大丈夫だった?」



 しかし少女はリンゴを受け取ると「あっあっ」と言って逃げてしまった。


 ユウキはため息を漏らし歩き始める。しばらくすると第二門に着いた。

 壮大な門で、人力で開けられるとは思えない大きさで、横にある通用門の近くに窓口が見えた。



「すみません、サウスホープからきたブレイクです。王都学園の願書を提出に来ました。」


 すると眼鏡をかけた老婆は事務的に書類を確認し、一枚の紙をユウキに差し出した。


「これが控えね。明日朝9時にここに集合。」



 それを受け取るとユウキが尋ねた。

「ありがとうございます。冒険者ギルドはどちらに?」


「宿探しだね。それなら向かって三股の通りを右に行くと良い。左は商店街だ。」



 ユウキは深く頭を下げると、右の道に進んでいった。父さんから貰ったお金は10金50銀だ。


 100銅貨で1銀貨、100銀貨で1金貨だ。

 通常使われない白金貨が100金貨に対応している。



 宿屋を探していると、元気な女の子に声をかけられた。やや丸っこい感じだが好印象である。



「お兄さん!宿屋なら『ポークバーグ』にどう!?素泊まり20銅、朝晩ついて1銀だよ!」


 それを聞いて勘定が合わない気がした。

「うーん、朝晩で60はどう?」


「お兄さん鋭いね!それでいいよ!」



 やっぱりふっかけてたか。もしかしたらこれでも高いかもしれない。



 ポークバーグに着くと、女の子はカウンターにいた女性に駆け寄った。

「お母さん、お客だよ!朝晩付き!」


 娘の言葉に女性は注意する。


「こらミサ!ここでは女将とおよび。また無理な接客をしたんじゃないのかい?

 ごめんなさいね、朝晩付きなら一泊50銅だよ。」


 ユウキはミサをジトっと見つめた。ミサは「あはは〜」とそっぽを向いている。


「ま・さ・か、またカマをかけたのかい!信用がなくなるからお止めと言ったでしょうが!

 重ね重ねごめんなさい。40銅でいいわ。」



 するとユウキはカウンターに2銀を出していった。


「あとで連れが来るので2部屋分です。60銅で来ましたから釣りは80銅で良いですよ。」



 女将は驚いた顔で言った。


「あんた若いのに算術が速いわね!雇いたいくらいだわ〜。気に入り分含めて1銀でいいよ!」


 ユウキはここで好意を無下にするのは失礼だと思い、素直に「ありがとうございます。」と述べて1銀を引っ込めた。


 この世界では算術教育があまり行き届いていない。四則演算でさえ出来ない者も少なくない。


「ミサ!お部屋に案内し!」



 そう言われるとミサが慌てて敬礼をして、ユウキに営業スマイルを向けると案内した。


「部屋はここと奥の部屋を使ってください。これがカギになるので無くさないで下さいね!

 ではごゆっくりどうぞー。」




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