王都ダルメシア
張り切って出発したユウキは森の中を突っ切っていた。
街道は森を避けているため、直線に進むと距離を短縮出来る。
それ以外にもう一つ理由があった。ナックルを試したかった。
ユウキはポーチからナックルを取り出すと装着してみた。
物凄くしっくり来る。重さも速度を殺さない程度でバランスが良い。しかもユウキの腕に合わせて大きさが変わったようだ。
不思議にちょっと体が軽くなったみたいだ。
このナックルには風属性の魔力が封入されていた。魔力がなくても武器から恩恵が得られる。
「これが魔法・・?今までがバカだったみたい。ハァァァァ!!」
構えて一気に地面を蹴ると、物凄いスピードが出た。
ユウキは動体視力を全開に木を蹴りながら高速で移動する。
前方に巨大な魔力反応を感じた。
ビッグベアだ。普通の人が合えばまず惨殺される狂気の熊、熟練シルバー三人で安定して狩る獲物だ。
ユウキは速度を落とさず、ビッグベアの前で停止するとビッグベアが飛び退く。
構わず思いっきり前方を殴りつけた。
《烈風掌破!》
すると衝撃波が発生し、空気が唸を上げて離れたビッグベアを無惨に切り裂く。そのまま木々をなぎ倒しながら見えなくなるまで吹き飛んでしまった。
「こいつは凄いや・・・加減が効かないから本気で封印かな。」
しかしそう言いながら森を抜けるまで装備して、馬車で半日の旅程を1時間足らずで到着した。
途中森の開けた場所に出た。あたりの木々は燃えた形跡があり、戦鬪の跡を思わせた。
「もしかしてここがダルカス大森林の討滅戦跡地・・?グライス、ボブ、ダンゾウ、スズ、ゾゾ、リン、僕は誓うよ。
こんな悲しいことは、もうしてはいけないんだ。」
そして、森を抜けると荘厳な城の上部が見えてきた。
周りは高い城壁で囲まれている。
「ついたー!」
とそこには門に並ぶ行列が見えた。
「あー並ぶのか、これはまた大変だ。」
そしてユウキはナックルをポーチにしまい、最後尾に並ぶのであった。
順番が来て衛兵が問いかける。
「何の用だ?名と年齢と都市名を。」
「サウスホープから来たユウキ・ブレイクと申します。12歳で王都学園の受験に来ました。」
すると衛兵はユウキをジロッと見て言った。
「魔力隠蔽を解け。その歳で使えるのは驚きだがな。」
ユウキは首を傾げた。
「あぁ、俺は魔力が生まれつきありません。隠蔽どころか魔法が使えません。」
それを聞いて衛兵が沈痛な面持ちで謝った。
「すまない、初めて見たものでな。辛いだろうが頑張れ。」
そう言って中に通してくれた。
周りからは嘲笑う声が聞こえるが、ユウキは無視する。
「わー凄いな!こんな城や城下町初めて見た!!
あっ、衛兵さん、王都学園の願書はどこに?」
「あぁ、そのまま大通りをまっすぐ進むと城門に出る。そこの受付に渡すんだ。
今日は泊まりになるから、宿を取るいい。冒険者ギルドの近くが安くていいぞ。」
それを聞いて親切な衛兵にお礼を言う。
「ありがとうございます!」
ユウキはキョロキョロしながら、街を進んでいった。