旅立ち
「ユウキ、忘れ物はない?願書は持った?」
朝から慌ただしいのは母のリースだ。
この愛情がたまらなく嬉しい。
「大丈夫だよ母さん、もう子供じゃないよ。」
「何を言っているの?あなたはまだ12歳よ!赤ちゃんだわ!」
母よ、心配しすぎだ。
するとボストンが間に入った。
「リース、赤ちゃんは言い過ぎだ。だが、子供には変わらん。無理はするなよ?」
ユウキは優しく微笑むと、2人に抱きついた。
「ありがとう、ここから俺も進むね。本当に・・ありがとう。」
3人は泣いていた。
誰が子供の旅立ちに涙を我慢して送るものか。そんな無駄な努力はしなくていい。
「それじゃ、行ってくるよ。」
するとボストンが止めた。
「待ってくれ。グライスから選別だ。」
そう言って出したのは獅子が象られた金色のナックルだった。
宝石が散りばめられて細部にまで装飾がされており、それだけで喰われてしまいそうな威圧を感じだ。
「これはグライスが昔ダンジョンで取ってきた物だそうだ。これに見合う武闘家がいたら渡そうとしていたらしい。」
「これは凄いね・・でも・・・」
ボストンが続きを受け取ったり
「そんな物装備して街中を闊歩したら大事だな。本当に必要な時に使えるよう鍛錬は忘れるな。
それとこれは俺からだ。」
するとポーチを投げてよこした。
「これは?」
「俺が昔使っていたものだ。マジックポーチと言って中が拡張されている便利品だ。
だが貴重品でもある。使うところを見られるな。」
ナックルをポーチにしまい、ボストンとリースを見た。
姿勢を正すと頭を下げ礼を言う。
「ありがとうごさいました!」
ボストンとリースは笑顔で手をヒラヒラさせた。
「父さん、母さん、行ってきます。」
ただ一言だけ言った。
「おう。行ってこい!」
「ユウキ、しっかりね!」
こうして家族と別れ、行商人の元に行く。
アリサはまだ来ていなかった。
「おはようございます。すみません、王都までどの位ありますか?」
聞かれて商人は「うーん、100km位かなぁ。」と答える。
「それじゃぁ、女の子が来たら先に行ったって伝えて貰えますか?俺は先に行きます。」
行商人は「はっ?」と声を出すと、ユウキはもう村の境に向かっていた。
「ここからが俺の新しい第一歩だ。いっくぞー!!」
そう言うとユウキは駆け出した。
どこまでも続く長い道を走って駆け抜けていった。




