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戦士達の出発点

 最初に来た三体は剣と盾、短剣二刀、素手だ。後方に弓と魔術師。



 剣の縦切り躱すと後ろから短剣で切りつけてきた。


 それを屈んで躱し、勢いをつけて剣のゴブリンを蹴り上げるが盾で塞がれ後方に流されるだけに終わる。


 着地のタイミングで土魔法、《グレイブ》が発動してユウキを突き上げ、素手の女性が殴りユウキは吹き飛ばれた。


 追撃で激突地点に矢が数本放たれた。


「・・ハッ!何だこの程度か?大口叩いた割には大した事ないな。殺しちまったか?」

 弓を持った族長が言う。


 すると土煙から声がした。

「合格だ」



 ユウキだ。何事も無かったかのように土煙の中から歩いて出てきた。


「盾を持つ戦士、ボブと名乗れ。その堅固さで仲間を守れ。」


「次に魔術師、スズと名乗れ。見事なグレイブだった。タイミングも完璧だ!」


「短剣の者、ダンゾウと名乗れ。気配を消して背後を取る速度、申し分ない。」


「弓!お前はやらん!」

「何でっすか!下さいよ!」

「一番仕事してない!だが速射と精度は見事。ゾゾと名乗れ。」


「次に武闘家。リンと名乗れ。見事な正拳で美しかった。」



 それを聞いても誰も動かない。

 ボブが発した。


「しかし貴方の力が分かりません故、名前を頂戴しても・・魔力も見えませんし。」


 それにリン、スズ、ゾゾ、ダンゾウが頷いた。



 ユウキはうーん?と顎に手を当てて考え、ニヤリとした。


 そして消えた。

 反応できたのはダンゾウだけだ。


 後衛のスズとゾゾが吹き飛び、大木の柵に激突して木が折れ曲がった。



 ユウキの初速からそのまま肘打ちを入れる《ファストブロー》だ。そこに回し蹴りを連撃で追加した。



 遅れて反応したボブが盾を構えるが、盾に掌底を放たれ吹き飛ぶ。

 《烈風掌破!》

 掌底を高威力で繰り出し、衝撃波を発生させる。

 その威力は軽くボブを吹き飛ばし、後方にいたダンゾウに飛ぶがこれは避ける。


 そのままユウキに迫る。

 ユウキはそり返ると、背後を取ったダンゾウの腰を掴み思いっきり地面に叩きつけた。



「さて、あとはリンだけだね。どうしたい?」


 徐々に近づくユウキに恐怖を覚えた。

「いやぁ・・来ないでぇ・・ぁ、ぁ」


  そこでペタンと座り込んでしまった。

 それを見たユウキはそっと抱きしめた。そして耳元で囁いた。


「ごめんね、怖がらなくても大丈夫。」


 リンは呆けていた。そして徐々に顔が赤くなっていく。

「あたしはその・・」


 ハッとして立ち上がり、リンは軍礼をすると告げた。

「ユウキ様の名に恥じぬよう精進します!!」



 すると大木や瓦礫の中から出てくるとユウキの前に集い、同じように軍礼をした。


「ダンゾウ、君にお願いがある。見込みのある者に忍ぶ事と暗殺術を教えて部隊を構築してほしい。

 そして一年後に王都学園にいる俺の場所を突き止め、接触を図るんだ。」



 ダンゾウは軍礼を崩さず答える。

「御意。」



 そしてグライスの方に向き、ユウキは問いかけた。

「グライス、これでいいかな?」



 グライスは笑顔で「あぁ。」と答え付け加えた。

「で、リンの責任はどうする?あんなプロポーズをして。」


 何だって?俺はいつ何処でリンにプロポーズをした?

 あれか?抱いた時か?



 もじもじしなからリンが説明する。


「ゴブリンは勝負して男が勝って抱いたら、プロポーズになるの。

 あたしのここ、そんなに大きくないのに優しくて強いし嬉しい・・!」



 ナンテコッタ!この闘いの流れ全部じゃないか!!


「待てグライス、リンが可愛いのは認めよう。だがプロポーズじゃな・・」


 リンが泣きそうになっている。



 慌ててユウキがフォローを入れた。


「まだその時じゃない。俺はまだ12だ。

 それにお互いを知らないのに結婚は出来ない。」


 リンは輝いて言った。

「ユウキ様に認められるくらい、あたし強くなるね!」


 やっちまった。

 可愛いし小さいが嫌いじゃないので問題はない。あるとすれば種族差だ。



 ボブが「めでたいな。」と呟いた。


 ゾゾは「いーな、俺も今夜はパーティだ!」とかほざいてやがる。

 一回こいつは締めたほうがいいと、ユウキはニコッとして視認できない速度で股間をカスるように蹴り上げた。



 股間を押さえて痙攣するゾゾを置いて、一行はグライスの建屋に向かった。






 族長達が膝をつくとボブが述べた。


「グライス様、ユウキ様、これから精進致しますので我々はここで。」



 それを見てユウキは告げる。

「ボブ、集落を守護できる自衛団を立ち上げるんだ。

 スズ、この無詠唱極意の冊子を渡すから訓練しろ。出来ないかもしれないけどね。

 ダンゾウは先の通り一年後に。

 ゾゾ、魔法と弓を磨け。そのままじゃ戦略的戦いにお前は無意味だ。

 リンは俺を追え。グライスが良き師になると思う。」


 それぞれに向かう道を示す。



 それを聞いて唖然とした。皆ユウキがどこか適当にしか考えていないと思うところがあった。


 しかし実際は違った。ゴブリンの事を誰よりも家族のように考えてくれる人族であるという事に気がついた。


 故に出る答えは一つ。

「「「「「ハッ!(御意!)」」」」」


 真に忠誠を誓った瞬間であった。



 それを見たグライスは空を仰いだ。

「あぁ、気持ちいいな。」


 ユウキも頷いた。

「うん、また遊びに来るよ。」



 2人の間に流れる空気はそよ風のように静かで、だけど何処か寂しげだった。


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