第一回人鬼会合
村人達が戦場跡地に着くと整地された状況に驚いた。
ウッドテーブルがいくつもあり、その中で真ん中に一際大きい丸いテーブルがあった。円卓だ。
「グライスのやつ、イキな事をしやがるぜ。」
ガルシアが思わず漏らした一言にただ共感するのであった。
程なくしてゴブリン達が到着する。
初めて獣人を見る者も少なくなく、ただその光景に圧倒された。
後ろからグライスがやって来た。
その巨体にまたも周りは騒然とする。
村人を一瞥するとグライスが言葉を発した。
「ユウキ、アリサ、戦士達の墓に礼を言う。
そして人族の村の者よ、我がこの森のゴブリン集落を収めるグライスだ。
敵意がないことはユウキから聞いている。」
そう言うと村人がやれ本当にだったんだ等様々に感想を漏らす。
村長は表情を変えずに答える。
「わしが村サウスホープの長でマクラスと申す。
この度は我々の意向を汲んで頂いて感謝する。」
そう言うと、各々が席に着いた。
村長とグライスは対角に位置し、ガラスと村の組、ゴブリン集落の族長クラスが円卓に着く。
ユウキとアリサはどこの席にも付かなかった。
それを見て村長が言った。
「ユウキ?なぜ席に付かん。」
ユウキはどこ吹く風といった調子で答えた。
「対等な会合なら僕が席につく必要はないさ。ガラスと村長に任せるね。
アリサ、あっちで遊ぼう!」
「ふーむ、本当にあやつは不思議なやつだ。」
村長の漏らした言葉にグライスがククッと笑い同意した。
それから会合ではまず、共存について意義がない事を確認した。その中で取り決めが行われた。
①相互不可侵。
②小競り合いは長が仲裁で解決。
③サウスホープはゴブリンに作物を提供する。
④サウスホープは農作技術を提供する。
⑤ゴブリンは農具や耕作機械を提供する。
⑥必要に応じて鉄鋼備品を提供する。
そして大事なのがここからだ。
⑦他国または他部族からの侵攻に、相互の族長から要請があれば共闘に応じることが出来る。
⑧会合や取引は全てこの第一回人鬼会合の会場で行い、他国や他部族に共存を知られてはいけない。
⑨会合は最低半年に一回は開き、親睦を深める。
これらの事が双方合意された。
ここで問題なのが⑦だ。⑦が実行されると⑧に低触する。
そのため⑦が実行されるときは、要請を出す側も慎重に判断する必要がある。
しかし出すのは自由だ。受ける側次第という事である。
これら取り決めが決まると、村長とグライスが立ち上がり双方歩み寄ると向き合った。
そして二人はにこやかに握手を交わした。
ジアスでの歴史的瞬間だが、それは誰にも知られずひっそりと幕を閉じるはずだった。
そして他所で遊んでいた少年と少女は戻ってくると、当事者はグライスにサラッと言った。
「僕たちそう長くはここに居ないよ。あと数年で王都に行っちゃうからね!」
グライスは笑顔で答える。
「それで会合に参加しなかったか。お前はどこまで考えているんだか・・まぁそれまで遊びに来い。」
そう言ってゴブリンたちは帰っていくと、村人達もまとまって村に帰っていった。
ガラスは家に戻ると手記を手にした。
これが後に歴史の1ページとして残るなど、夢にも思っていなかった。




