グライスの密かな忠誠
集落の入り口に着くとユウキは向き直った。
「皆さんお騒がせしました!グライスと良くなるように頑張ります!!」
そう言って外に出ようとしたら声をかけられた。
女性のようだ。ゴツい男と違って出るところは出ているし小柄だが美人だ。
「さっきのは良い一撃だったよ!うちの子のためにも任せたからね!!」
いつしかそれはウネリになり、大きな喝采となった。
そしてグライスが締める。
「さっきのを見ればユウキはもう家族同然だ。明日の朝また頼む。」
頷いて集落を後にするのであった。
村への帰り道、魔物に警戒しながらガルシアが言った。
「ボストン、お前の倅は本当に8歳か?最低4年はサバ読んでないか?」
ボストンも呆れた顔をして答える。
「俺も驚いているさ。でもアリサちゃんもしっかりしているしな。
村長の所のガラス君だって、組の連中を前にして堂々と意見を言っていたし、サウスホープの若手は安泰だ。」
それを聞いて「確かにな」と答えるガルシアだった。
村に帰り場所と時間を村長に告げると、皆疲れたようにその日は眠りについた。
翌日、グライス達は先に戦場跡地に向かっていた。
「グガッ、お前ら覚悟しろよ。会合の準備は重労働だぞ。」
それを聞いて沈痛な面持ちになるゴブリン達。
一行は跡地に辿り着く。そして・・・
それを見て全員目を疑った。
綺麗に盛り上がった土、そこには墓石と装備が置かれており、中央の大きな石には花が添えられていた。
グライスが膝から崩れ落ちた。
ほかのゴブリンも同じように俯いているが、幾重にも雫が落ちている。
グライスは土を握りしめ、立ち上がると上を向いて歯を食いしばった。
部下の手前だ。
「お前ら、少し・・休め。」
そう言うと墓石に近づいた。
そして見てしまった。刻まれた文字を。
「勇敢なる戦士に永遠の安らぎを。
グライスの友ユウキ、アリサ」
目から涙が噴き出した。
「長!俺たちは!」
上を向いたまま叱責する。
「黙れ!これは必要なものだ!!」
幾ばくかの時間が流れ、落ち着きを取り戻した。
そして誰に言うでもなく呟く。
「なぁ、俺はユウキに賭けてみる。あいつと共に平和に生きる世界を。」
(人族の村と共存が軌道に乗ったら、俺も動くか・・オークだな。グロッサムのヤツ生きてっかな。)
そう思いながら会合の整地をするのであった。