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ジアスの誕生(2)

「これは実戦を想定した戦略シミュレーションが可能な物だ」

「知っておる。地球と言う星に存在した遊戯だ」

「あいつらは賢いな。模型で視認する事によって創造戦略が容易くなる。実に面白い」


 ザッハークは駒を片手に遊びながら、アヴィスターを見てニヤニヤとしている。


「アヴィスターよ、俺様が手伝ってやろう」


 ……ふぅ。闇は先導する光を消してしまうか。

 はたまた闇を照らし道しるべとなるのか…実験すべきではあるのだがなぁ。


 だがそれには。


「さぁ星を創れ!最高に楽しい実験をしようじゃないか!」

「黙れザッハーク!魂は弄んで良い物ではない。この場所に集まる魂を見てもそう言える貴様はやはり害悪だ」

「ノッて来たじゃないかアヴィスター!普段は無表情のお前がいい顔をしているぞ…!」


(クッ!してやられた…)


 まんまとザッハークの意図した方向へと舵をきられてしまった。


 この場所は死者の魂が集まり生前の裁量を待つ場所だ。

 アヴィスターの創った世界の一部となるため、何の種族や世界に輪廻するかを測る場所でもある。


「…このチェスで俺様に勝てばアヴィスター、貴様の前から消えてやろう」

「そでは足りぬ。対価は?」

「相対意見の実証ではどうだ?この提案をしたのは俺様だぞ?」


 実験をやりたければ自らの意のままになれと…!

 こやつ…やはり腹立たしい!


 だが確かに自立した世界を創生するためには、この大いなる実験が必要不可欠だ。

 それには多くの魂を犠牲にして成り立つ実験であり、やはり創造神としては躊躇(ためら)われる物があった。


「まだ悩むか?」

「光はどうする?適当な者を輪廻させても良いが」

「あの世界がいい。このチェス盤を考えた地球だ…カオスの中に善意が入り混じったお誂(あつら)え向きの魂が多い」


 確かにあの世界には何度か光を持つ者が現れている。

 だが光に乗じた闇が同居し、全てが善に傾かない不安定な世界だ…


 良い光になる可能性を秘めているのも事実。

 アヴィスターは仕方なしと星の構築を開始した。


「創生に多少の時間を要する」

「小さくていい。あぁ…世界を破壊するシステムも創造しておけ」

「…チッ。それはお前の仕事だろう」

「ガハハッ!違いない。では真龍の幼体を送り込もう。それと星の破壊には…イビルウェポンも散りばめておくか」


 ザッハークはイビルウェポンの製作をすると言い、意気揚々とどこかへと消えて行った。


(全く自分勝手で迷惑極まりない奴だ)


 これから多数の命を無駄にすると考えると心底やるせない気持ちになるのだが、神々での闘争は理で禁止されている。


 口八丁な奴が得をする世界だと嫌気がさす。

 アヴィスターは大きくため息を吐きながら、まだ歪な形の星が目まぐるしく変化して行くのを眺めていた。


 噴煙を上げマグマの海が広がり、時折隕石が衝突しては再構築を繰り返していく。

 やがてはその姿を徐々に綺麗な球体へと変化させて行った。


 その時だった。

 アヴィスターは突然何かを閃いた。


「ん?真龍を放り込むと言っていたか?そうだ…もしそうなら……。ふふふ……フハハハ!!わしは創造神アヴィスターだ!俄然やる気になってきたぞ!」


 しばらくしてザッハークが戻って来ると、形の変わった星を見て満足そうにうなずいた。


 そして真龍とイビルウェポンをその世界へと放り投げた。

 そう、文字通り適当に放り投げた遺物は吸い込まれるように球体の表面へと飛んでいったのだ。


「光が道しるべとなるか…」

「闇は光を覆うほどの混沌か…」


(じゃが、まずは光の強さや神託の遂行可能レベルを調整する必要がある…テストケースは何度か設けたほうが良いな)


 さぁザッハークよ。

 その口八丁な邪神が黙る日をワシは楽しみにしておる!


 破壊される運命に苛まれた星ジアスは、こうして二人の神々の手によって誕生した。



 後に最初のテストケースとなる生方刀次郎を転生させ、『強靭な光を持ち邪を打ち払う』と言う神託を与えた。

 実験内容は個のカリスマ性が周囲を巻き込み、平和を手にする事が出来るかの実証。


 結果、刀次郎はダルメシア戦争を見事勝利へと導きその性質の強さを示した。

 この結果に不満を募らせたザッハークは何かを画策しているようだが正直どうでもよい。


 ザッハークには黙っていたが、刀次郎にはもう一つの目標を与えていたのだ。


 それは戦争を終結させても終わらぬ神託。


 戦時中から背後にある魔族の存在をチラつかせる事によって、神託の『邪』が戦争とは異なると言う事を明確にさせる。


 するとどうだろうか?

 融和のカーテンが破損しない以上は、刀次郎が一生の間に遂行不可能な神託となり得るのだ。


 結果として二つ目の実験、『遂行不能な物はどう足掻いても遂行不可能』と言う実験結果を得ることができた。



 つまり、『人』には神託を超える神々の力が手に入らない。

 多少強大な力を持つ魂を創っても、神々には抗えないと言う結果が得られた。


 想定通りの結果に、神々の領域に到達するのはどだい無理だと分かり満足した。

 これで更に強力な個体を創る決心がついたと言えよう。


 (なにせ最終的には…ぐふふ)


 だがここで我々の想定を超える事態が生じた。それは刀次郎が融和のカーテンを超えたのだ。

 そこで見た光景と神託の内容から、どうやら我々の実験に感づいたようだった。


(しかし問題あるまいて)


 ザッハークはこの結果に苛立っていたが、まだ融和のカーテンによって遮った過酷な環境下で育んだ憎悪をぶち撒ける実験に支障はなかった。


 ここまではワシの狙い通り…

 フフフッ……


 さぁ、見せてみろ!

 可憐で美しい魂が織り成す叛旗の光を!



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