表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/269

夢の終わりのカタチ

 俺は腹の底から猛り狂う魔力の奔走を全身から解放させた。


 それは新たな覚醒へと誘う誘導灯。


 記憶が走馬灯のように目まぐるしく通り過ぎ、この地に祝福されて生まれた景色が浮かぶ。


 そしてその先に…

 もう一つ大事な記憶がある……


 刹那のように過ぎ去る時の中で、俺は一度生まれ変わったと思っていた。

 でもその記憶は、まるで波が砂文字を消すようにやがては薄くなって消えていく。


 それはきっと自身の記憶ではないのだからだろう。

 だが受け継いだ意志は必ずこの拳で成し遂げる。


 …優希、俺はやるよ。

 新たなステップへと駆け上がるんじゃない。


「これが俺の…本来の力なんだ!」


『ウルサイ!召されよ!!』

「召されない!」


 漆黒の腕はふと振りで周囲を浄化し、二振りで大地にき裂を入れた。

 そんな凄まじい威力の腕を、熱い目頭に俯いて受け止めた。


「ナルシッサと赤龍が描いた希望のバトン…」


 ブレイク家に発現したのは、魔力を感じる事ができる固有血技《点穴》。

 だがこれは始まりの力に過ぎなかった。


 優希が《魂魄並列(こんぱくへいれつ)》で俺の中にある赤龍の魔力と一つにして完成させた


 “夢の終わりのカタチ”


 遠い過去に遠い未来へ向けて、願いを込めた人々の夢物語。

 それが…ようやく辿り着いた一つの終着点。




「夢を掴むためには理想じゃダメだ。それを掴むための努力と決意が…必要なんだ!」



 ゆっくりと見据える先に…

   その瞳で見る世界は何色だろうか?



「さぁ…登ろうか。未来への階段を!」

















 あらゆる魔力を見透す力は


      本来の姿を 思い出す。







































    固有血技 《真紅の瞳》 覚醒



























 全ての事象を見据える聖獣の(まなこ)

 あらゆる魔力が舞い踊る気流の様に見える。


「真龍は神が創造した破壊神ならば……俺が神の盤上を破砕(ブレイク)してやる!」



 一瞬、ナルシッサが微笑んだ気がした。



 全身を柔らかく覆っていた真紅のヴェールはその形を変え、尾が長く伸びて孔雀のような美しい羽根を広げていく。


『小賢しい!人が真龍になろうとも神には勝てぬ!』


 カイラスは《漆黒の腕》の右腕を振るい攻撃を仕掛けてきた。左手で空間を引き裂き、俺の目の前に移動してきたのだ。


「もう見えている。その気配、残痕、軌跡。お前の生み出す全ての行動が分かるぞ」

『良くぞここまで!だが所詮駒は駒。盤の上で踊るのみよ!フハァッハッハ!!』


 ダァァァン!


 真紅の魔力が形成した長い尾羽でカイラスを叩きつけた。本来なら地面にめり込むはずだったがそうはならない。


 力任せに漆黒の腕で受け止めたザッハークは、振り回す様に放り投げてきた。


 クッ!


 激しい加速度だ…どんな力で投げればこうなるんだ!

 だが投げた張本人が見当たらない。


 俺は感覚的に背後で魔力を感じ取り、後方に向けて炎をまき散らした。

 それを見たザッハークは驚きと共に左腕で空間をこじ開け、両手剣で炎を両断した。


「左腕の力か…空間を引き裂いたかッ!」

『気付くのが遅い!』


 ガキンッ!


 真紅の翼で両手剣を受けてカウンターでアゴを蹴り上げると、カイラスが大きくのけ反った所へ踵落としを脳天から落とし込み、一気に魔力を開放した。


「カイラスを返せ…烈風華!」

『ふぐっ!』


 炸裂音と共に真紅の魔力が華開きカイラスは大地へ向けて墜落していく。


 だが追撃の手をここで緩めない。

 上空に幾何学模様が広がり荘厳な光が周囲を照らす。


 そしてカイラスを転移させた。


 その場所は真下…つまり地表だ。

 ザッハークは落下の距離を急激に短縮され、受け身も取れずに大地へと叩きつけられた。


 俺はカイラスの状態など構う事もなく、荒れ狂う真龍の魔力を暴風の塊へと変化させ右手へと集束させる…


 それを目の前の転移魔法陣に向けて手を突っ込むと、カイラスの胸ぐらを掴んで一気に解き放った。


「これで終わりだザッハーク!」

『フグッおおおおおお!!』


 《赤龍の咆哮》


 ズガァァァァァァァン!


 土煙が舞い散り、削れた大地からその威力がうかがい知れた。


 だが、それが一気に集束を始めたのだ。

 それは漆黒の腕。


 ヤツは赤龍の咆哮を受けながらも、そのエネルギーを空間ごと引き裂いたのだ。


「今のは効いたぞ…ユウキ・ブレイク。だいぶ変わったようだな……」

「カイラスか…?正気に戻った…ぐあッ!」


 左腕で空間を引き裂き、目の前に出現すると大剣を振るって襲い掛かってきた。


「まだザッハークの呪縛が解けないか!?」

「その力、その意志が神に届くのか?魔族を……いや、俺を納得させてくれ!」

「なるほど…」

「唸れイビルウェポン!その真価を発揮せよ。魔族は我に力を…!」


 カイラスの持つイビルウェポンが《女王蜂の楽園》に呼応するかのように輝きを増していく。

 その魔力は今まで発動した魔法よりも濃密かつ高威力であると確信できる。


 故にカイラスはそれが放てることを、それを受けられる相手がいる事に対して敬意を表する。

 隠しきれない愉悦と恍惚の気分が、魔王カイラスの口角を引き上げた。


「イビルウェポンが示すその力、シックザールよ…宿命を全うしようぞ!」

「来いカイラス!!お前の…魔族の全てを受けてやる!」


 カイラスは左腕の空間を引き裂く能力をシックザールへと付与をした。

 そして不可避なる一撃に仕上げるため、右腕の時空間能力を加えた完璧なる一撃。


 漆黒の腕が奥義 《深淵なる三重奏》


 それが放たれた…事ですら知覚できない。

 空間的な魔力変化、直前の挙動、そのすべてが無。


 放たれた斬撃は真紅の翼を斬り捨て、遥かに彼方へと消え去る。


 ーッ!


「炎が消された……?」

「クククッ…どうだ!魔王の一撃は真龍をも凌駕する!」


 ニヤリと笑う魔王カイラス。


 人族だけでなく魔族でさえ、皆がその威力に怖れ慄き驚きの表情を見せた。

 だが一人、神が想像せし叡智の結晶は、静寂を突き破りボソリと漏らした。


「アレでは消えませんわ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ