グライスとの会談(2)
それを聞いてグライスは豪快に笑い出した。
「グアハハハ、人族が和平とな。王都の騎士よどうなんだ?え?」
今度はユウキが目を丸くした。
ボストンが呟くように漏らす。
「覚えてやがったか。」
「当たり前だ!貴様らの街の南森でやりあった時だろう。立っていた敵は少なかったからな。」
彼が言うのは15年前に起きた王が勅命を下した戦い、ダルカス大森林の獣人討滅戦だ。
討滅の名の通り総勢3万もの王都兵士が一体残らず滅ぼさんと、ゴブリン・オークの混成1万と激突した戦いだ。
その時ボストンとガルシアは王都下級騎士として前線に出ていた。
結果は両者痛み分けだが、事実上王都の敗北だ。
王都軍は1万もの兵士を失った。
先手をかけた王都軍が最初は蹂躙していった。だがグライス達ホブクラスが出陣すると状況が一変し包囲に穴ができた。
そこをグライスは部下を引き連れて東の帝国領に撤退。
そのグライス戦で指揮官と仲間達は手も足もでず殺され、辛うじて生き延びたボストンとガルシアは撤退した。
オーク軍もグライスと同様に反対の西側聖都領に撤退した、分散して領域外に撤退する見事な戦略であった。
この後王都は領域の獣人を排除したと宣言した。
この戦いで王都に不信感を抱き、二人は軍を降りた。
「俺たちはもう王都と関係ない。あの戦いで王都に不信感を抱いた。今は畑を耕す村人としがない冒険者だ。」
それを聞いてもグライスは考える。
「あの戦いは互いに多くの戦士を失った。だが何故攻め滅ぼすのだ、人族は。・・・変わるのか?何を俺たちに望む?」
ユウキはかなり驚いていた。
父の過去にもそうだが15年と言う近い過去に戦争があった事に。
それまで沈黙していたガルシアが、急に詠唱を始めた!衛兵が槍を構えた!
が、グライスがそれを制止する。
「汝は我を信じ癒しを求めるか《ヒール!》」
するとグライスの両足はみるみる内に良くなる。
ガルシアがそっと言った。
「・・・過去を清算したいのはお互いだ。これじゃダメか?」
そう言ってニヤリと笑ったガルシアは格好良かった。
そしてユウキは諭すように告げる。
「グライス、全ての人を信用してはいけない。ゴブリンとの和平がバレたら村も人に滅ぼされる。
だから隠密に村はゴブリンに作物を、ゴブリンは鉄の精錬や農具の整備を手伝って欲しい。」
それを聞いて納得した。
「和平と言うよりは共存だな?」
ユウキは頷く。
グライスの口角が上がる。
「ガハハハハ!やはりお前は面白い、乗ってやろう。」
四人はそれを聞いて綻ばせる。
「知らない仲で仲良くできないと言う奴もいるんだ。戦場跡地で初めての会合を開かないか?」
グライスは気分良く返事をした。
「望むところだ。あとで整地してやる。明日の朝で良いか?」
これに二つ返事をして会談を終えた。




