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正義と忠義(1)

 ハッ!

 目を覚ますと、カイサルがその刃を眼前で止めていた。


「…悪いな」

「殺してもよい。だが望まぬ結末だ」

「それが出来てなぜ…!」

「………神託を受けて、なお分からぬか?」


 ー…カイラスもそうなのか?

 だから、抗えぬと……


 この世界に俺を連れ込んだアヴィスター。奴はゼロの盤上が起動すると言っていた。


「なぁ、神の言いなりでいいのか?」

「神には勝てない…であるからこそ、この戦争に勝たねばならないのだ」

「言われた通りに他部族を淘汰できるのに…なぜ!なぜその力があって神に対抗しない?!」

「この力自体が神から譲り受けた物だ!無駄に抗い同族が消し飛べばどうなる?!王は民の全てを預かる故に俺の命は一つじゃない!」

「それなら俺達と手を取り合えば背中を預けられるじゃないか!!」


 一人で出来ない事も相棒となら乗り越えられる。

 かつて親友であるレナードに教えられた事だ。


 思いの拳は真紅の魔力を帯びてカイサルとぶつかる。

 カイサルの漆黒の魔力も止め処ない思いを俺にぶつけてくる。


 双方が大きく構えを取り、その全ての魔力を濃密に集約した。


 《黒滅の腕》

 《烈風華》


 最大限魔力を練り合わせて放つ技同士が激突した。

 だがカイサルの技は凄まじく、深淵の闇は全てを飲み込むが如く激流が迸る。


「凄まじい…威力だ!」

「かの地を明け渡せ!そして貧困と略奪の円環を終わらせるのだ!」

「カイラス!お前は……間違っている!」


 漆黒の魔力の中を俺は構わず突き進み、カイサルの頬を思いっきりぶん殴った。

 そして咲き誇る真紅の華。


「ユウキ・ブレイク。何故お前は今になって現れた!200年前のあの男もそうだ!」

「200年…?あぁ、そうか。俺はトージ達の意志を継ぐ!」


 強大な力の衝突を前にしてレナード、ミミ、ハウレストが周囲を見渡し驚きを露わにした。

 二人が突然消えたと思ったら、大地が爆炎と暴風に曝された。


「何が…起きた?」

「ウチには二人がヒュン。んでもってドーンって感じ。ミミは?」

「……ミミにも分からない。それくらい異次元なことだよ…きっと」


 カイラスが落下した位置を睨みつけて問いかけた。

 真龍の記憶から俺は真意を知る。

 だから魔王にもその事を知ってもらいたいと言う思いがあった。


「カイラス。真龍とイビルウェポンとは何だと思う?」

「真龍とは破壊神であろう。イビルウェポンは神が用意した世界崩壊の道具だ」

「最初はトージから聞いたんだろ?」

「…そうだ。あの男は200年前だったか、融和のカーテンを乗り越えやってきた。驚きを通り越して笑ったさ」


 トージの思念体に出会った時、神々の世界に辿り着く場所を二か所だと特定していた。

 一つが聖都の西側に浮かぶ孤島。

 そしてもう一つが魔大陸の魔王城だと言っていたが、それを知るには魔大陸へ渡り確認する必要があったと言う事だ。


「イビルウェポンはゼロの盤上…つまり世界崩壊を行う鍵だ」

「故に七つ全てを揃えてはいけない…だが、なぜ貴様はそれを持とうとする?」

「それが俺たちの…いや、この世界に生きる全ての希望なんだ」

「なんだと?」

「今の俺には真龍の使命と記憶を受け継いでいる。神の計画を止められるんだ!」

「…なら、失った命に対してどう敬意を表せばいい?」

「それには皆が知る必要がある……共に行こう。奴らの世界への扉を開けよう」

「しかし…ウグッ!ガアァァァァ!!神託を遂行…滅する……!クッゥゥ…」


「カイラス!」


 さっきの俺と一緒だ。

 カイラスもまた、神託に縛られているんだ。このままだとカイラスが暴走してしまう!


『滅せよカイラス!多くの駒によって生み出されたイレギュラーは規格外だ…確実に葬れ!!』

「ザッハーク…!俺は魔王だ!お前なんぞに…アアアア!!」


 《女王蜂の楽園》によって強化された魔力が、漆黒の腕を介して禍々しい威圧として放出された。

 それは誰であっても絶望するほどの力。


「あああああああ……ウチは…カイラス様に手を出すなぁ!」

「ハー!急に…そうか!《女王蜂の楽園》の効果!」

「ミミは平気なの!?クッ、僕は魔族を止める!」


 ハウレストや魔族たちはカイラスの強大な魔力に呼応するかのように、一斉に人族に対して殺意を示した。

 だがその力は今までの比ではない。


 カイラスの力が上昇するにつれて、同族も強大になっていく。


「ミミは…死ぬかもしれない……」

「ダメだ!君は死なない。僕が殺させない!」

「そうじゃない!ミミはレナードとの戦いで自分の《女王蜂の楽園》の繋がりを斬ったんだ!」

「そうかあの時…」

「でも今の威力じゃとてもミミには斬れない…だから、やったら死ぬかもしれない」


 狂暴化した魔族は理性を失い、ダルカンダへ向けて攻撃を再開した。

 その勢いは凄まじく、騎士団の防御があっという間に崩されるほどだった。


「くっ!頼む、力を貸してくれ!」


 俺は即座に転移魔法陣を起動した。


「座標は聖都サンクチュアリとリザードマン本拠地!」


 ダルカンダ城門に発動した転移魔法陣が現れたが、その数は三つ。

 二つは俺が出したものだが最後の一つは別物だった。そしてこれが出来るのは世界であと一人だけだ。


「ユウキ、助太刀に参りましたわ…あぁ、もう少しですのね」


 現れたのは赤龍ことゾディアック帝国王女フェニキア。

 そして彼女は俺を見て何かを悟ったようだった。


 すると転移魔法陣から更にもう一人現れ、フェニキアに抱き着くように飛び出した。


「フェニキアお姉さま!へぇ、ここがダルメシアなのね」

「違うわソフィア、ここはダルカンダよ。ハァ!(こうべ)を垂れなさい愚物が…」

「頭が高いわ!大地に根差しなさい…お姉さまの《重力》でね」


 帝国からの増援はフェニキアとソフィアだが…ソフィアは口先王女なので戦力にはならない。

 だがフェニキア一人でも広大なダルカンダの一方面を守れるので、これほどうれしい助っ人はいなかった。




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