戦士達の慰霊
翌日朝食を終えると家にアリサがやってきた。
玄関からコンコンという小気味良い音がなると、元気の良い挨拶が響いた。
「おはようございます!」
「おはよう、アリサちゃん」
そういいながら出迎えたのはリースだ。
家に入ったアリサはユウキの部屋に向かった。
部屋で準備をしていたユウキはその音に気がついた。
ダダダダッ!バン!「おはよう!ユウキ!」
笑顔で挨拶するアリサに対して、ユウキは着替えの真っ最中だった。
振り向くとそのままの姿勢でユウキは挨拶を返した。
「えっと・・おはよう?」
笑顔で冷や汗をかいたまま、アリサはゆっくりと扉を閉めた。
着替えを終えたユウキは2人で庭の倉庫に来た。
「アリサ、昨日は大変だったけどあそこでやる事があるんだ。」
それを聞いてアリサは赤面したまま言った。
「えっとその・・うん、さっきはごめん。事故でね、入ったら着替えてたの。
なんでユウキはいつも通りなの!?」
最初の方は言ってることが滅茶苦茶だった。
ユウキはそれを涼しい笑顔だけで答えた。ただ達観して無かったことにした。
「うんしょっと」言って出したのは荷台の一輪車だ。
それとスコップも取り出していた。
そうこうしているうちにボストンとガルシアがやって来た。
「ユウキ、今日何するか教えてくれ。手伝うに手伝えん。」
それを聞いて答えた。
「ゴブリン達の供養だよ。何体もの戦士達を僕は殺しちゃった。グライスは多分動けないからまだ行けてないはずだよ。」
さらっとそう言って2人は唖然とした。
2人も人生のうち何度か獣人と戦いになり殺している。しかし命を賭けた戦いに供養など考えたこともなかった。
ガルシアは生きてきた中での経験も踏まえ、少年に問いかけた。
「坊主、いやユウキよ。互いに命を張ったんだ。相手も悔いはないと思うが。」
それを聞いてもユウキは曲げない。
「これから全ての獣人や魔物を同じようにできるとは思ってないよ。
だけど、グライスは僕に集落の場所を信じて教えてくれた。だから、彼らはもう敵じゃない。」
ガルシアは今の言葉をよく吟味してため息を吐いた。
「持っていくものはこれで全部だな?俺が持つよ。」
ユウキは嬉しくなって笑顔で「ありがとう!」と告げるのであった。
森に入り現地に着くとまだ木々から白煙が上がって霧のように霞んでいた。
アリサがそれを見て思わず呟いた。
「これを私がやったの・・・現実に見ても信じられないわ。」
一行はゴブリンの遺体を発見した。
「お父さんとアリサは土を掘ってもらえるかな?
ガルシアさんは僕とゴブリンの遺体運びをお願いします。」
それを聞いて各員は作業を進める。
途中ガルシアがユウキに聞いた。
「装備はどうする?」
「鎧は取って埋めた上に置きましょう。」
そうこうして昼下がり、ゴブリンの戦士達の墓標を作ることができた。
遺体の上には装備と大きめの石を置き、それらしくしておく。
そして最期の石を置くと、ユウキは両手を合わせた。
それを見た3人は首を傾げた。
しかし瞑想しているのが分かると、3人も片膝をつき祈るように手を額の前で握った。
「みんなありがとう。僕自身の整理も少しはついたと思う。
それと、これから集落に向かおうと思うけどいいかな?」
ボストンは頷き「昨日の件だな?」と問いかけた。
「うん、僕についてきて。こっちの方角のはずだから。それと僕が先陣で話をするから絶対に武器は出さないで。」
そう言いながら激闘跡地であり、戦士達の墓場を後にした。