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かつての栄光は瓦礫と共に

 レナードは陥落したドールガルス城塞の様子を見て、ただ愕然と肩を落とすしかなかった。


 ミミと激戦を繰り広げて直ぐに魔法陣が起動し、魔族の侵攻が開始された。

 そしてドールガルス城塞は、防衛都市としての機能を失った。

 そう、魔族の行軍を止められずに陥落したのだ。


 だが死亡した魔族も散見されることから、獅子奮迅の活躍があったと推察できるが…

 やはり倒された兵士の数は、人族の方が圧倒的に多かった。


 静かに瓦礫避けながら城下へと足を踏み入れる。

 そしてレナードの住まいでもある城が存在していた場所へと進んでいった。

 かつて(そび)え立つ威光はどこにもなく、ここに城が存在していた事を疑問に思うほどたった。


 何か残ってないか。

 少しでも生きている人が居ないか。


 大きく瓦解しないように捜している時、広がる瓦礫の中から陽光に反射する物を見つけて土埃を払いのけた。


「…―!これは父上の甲冑(かっちゅう)だ!!」


 僕は回復した魔力で《光の翼》を使い膂力を向上させると、瓦礫を撤去しながら栄誉ある鎧へと辿り着いた。


「レナ…か……。無事でよかった…」

「父上!!」

「母は地下に……頼む…」


 馬鹿な…!こんなあっけなく…

 自らの感情で嫌だ嫌だと帰らなかった故郷が…


「ずるいや…父上は……」


 涙を止める事ができない。

 愚かな17年と思えた。


 12で父のもとを去り、喜んで学園へと旅立った。

 兄や父の考え方に反発して卑下(ひげ)にし、自分の意見が正しいと常に聞く耳も持たなかった。


「なんで…気が付いた時には、大事なものが落ちて行くんだ…」


 まだ残る気力を振り絞り、バッカス王はレナードの頬に手を添えた。


「大きくなった。多様な…考えを持て……俺も正しく、お前も正しい……突き進め、友と共に……!」

「はい!必ず!!」


 それを最後にバッカス王は腕を落とし、満足そうな顔をして力尽きた。


「父上!うあああああああああああぁぁぁぁ!!!」


 ダンッ!


 何処に向けてもいいかも分からない怒りを、地面に向けて叩きつけた。


 ダンッダンッダンッ!!


 何度も。

 何度も。


 手から噴き出す鮮血を無視して、ただ叩き続けた。


 ダンッ!


「レナード、ごめんね」

「ぐうぅ!わああああぁぁぁ!!」


 叩きつける手を受け止め、謝った女性の胸で泣き叫んだ。

 これで最後と言わんばかりに、溢れる感情を押さえつけずに泣き続けた。


 そんなレナードの頭をそっと撫でる事しか、彼女にはできなかった。



 しばらくして落ち着きを取り戻し、父が最後に指し示してくれた方向へと視線を向ける。


 そこは地下へと通じる秘匿された階段があり、母が隠れている場所に繋がっている。

 こんな状態だからハッキリ言って最悪な状況もあるかもしれない…


「ありがとう…一人なら僕は、壊れていたかもしれない……」


 僕はミミに礼を述べると、ミミは首を小さく振るうだけだった。

 そして二人は瓦礫を動かすと、その下から僅かに風が流れる感覚を受けた。


 レナードとミミは二人目を合わせて頷くと、残りの瓦礫も一気に除去していく。


「まだ塞がっていない!」

「あと二つだよ!」


 完全に口を開けた地下室への通路。

 だが崩落した瓦礫によって階段があった場所は、まるで急斜面の滑り台のようになっていて何処まで続いているのかも分からなかった。


「これは…下で生きていても容易には戻って来られないな」

「そだね、助けに行こう」


 ミミが漆黒の地下室に向けて明かり用の炎を灯そうとした。


「大地の清流よ原初にして…」

「待って」


 僕はミミが詠唱を始めたのを見て止めた。


「ん?風が抜けたからガスと空気は大丈夫だと思うよ?」

「いや、無詠唱って知ってる?」


 そう言って僕は手のひらに炎を作り出し、炎をジャンプするように動かして見せた。

 これには流石に驚いたようで、ミミは口をパクパクして問い詰めてきた。


「それどうやってやるの!?詠唱いらない???気合かっ!」


 そう言ってミミは手のひらから炎を出そうと顔が真っ赤になるまで力んだ。


 そして出たのだ…聞き慣れた音が。


 プッ…


「「……」」


「かわいい音は出たね?」

「いやいや、そこは流さないダメだと思うんだ?」


 聞き流すことも流儀の一つだが、レナードはつい言ってしまう性格だった。


「ボクも簡単な魔法しかできない。ユウキ曰く『魔力の流れをイメージして創れ』って」

「へぇ~、こうかな?」


 ボワッ!!


「ふぁ!出過ぎた!!」


 僕はミミの手に沿えて炎を抑えるように落ち着かせた。

 すると炎はソフトボールの大きさになって安定してきたのを見て、ミミにニヤリとしてみせた。


「さすがは魔血衆だね。僕は半年以上かかったよ」


 ミミは最初嬉しそうにしたのだったが、一瞬陰ったようにも見えた。


「それじゃ落とすね」


 気のせいだったのだろうか?

 まぁ、彼女が元気ならばそれでいいんだけど、母は果たして無事だろうか…




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