村長の決断
「サウスホープはゴブリンと和平を結んでもらいたい!」
ボストンの一言に村人は何を言われたか理解出来なかった。そして声を上げる。
「・・・それは、何を言っているか理解できているのか!?」
それを皮切りにやれ危険だ、おしまいだなど口々に漏らす。
ボストンは当たり前の反応が返ってきて、やはりと考えた。
そこでユウキが告げる。
「グライスは無益な争いを好んでいたとは思えません。戦いが終わって彼が言いました。人と円卓についた事はないと。
彼らは生きるために森を使い、村の人との接触を避けていたようです。
お互いのために共存の道を開きませんか?」
それを聞いても問題はある。人族だ。
「しかし王都にバレたら、俺たち獣人に加担したとかで打首じゃないか!そこに王都の人間もいる!!」
そう言いながらガルシアの方を指差す。
それを受けてガルシアが答える。
「俺は冒険者だ。王都に報告する必要もないし、グライスが大人しくしているならギルドも問題あるまいて。」
駄目押しにユウキが言った。
「彼らは鎧を持っていました。つまり落石と合わせると鉄の精錬技術があります。
この技術を村の特産にするのは目立ちすぎますが、彼らと協力して農具の整備などをすれば村の発展に繋がります。」
一同は唸る。
そこで恰幅のいい少年が間に入った。村長の孫ガラスである。
「村や人に危害がないのなら、親交を深めてもいいんじゃないか?
このまま静観や敵対をしても良い事は何も無い。考える余地も無いと俺は思う。」
それを聞いて村長が嬉しそうに決断した。
「わしもいいと思う。前提条件として人や村を襲わない事だがな。王都の件はわしの独断にすれば良いだろう。」
村人がそれに応じる。
「村長が良しとするなら反対はないが、知らぬ仲で共存も何も無いだろう!
あとゴブリンと戦ったのはボストンさんじゃないのか?」
それを聞いてもユウキが答える。
「僕とアリサの2人です。
グライスと連絡を取ってみます。会合を開きましょう。」
客間に唖然とした空気が流れた。8歳の子供2人がボブゴブリン達に勝利した。
俄かには信じられないが、ユウキにはあの大岩を破壊した実績がある。
村長はにこやかに告げた。
「段取りを頼む。」
そこで集会はお開きになった。
帰り道、ユウキは言った。
「お父さん、明日ちょっと森に入りたいんだけどいいかな?大事な事なんだ。
できればアリサもだけど。」
アリサが訝しげな表情をした。
「何をする気なの?今日の場所に入るの?」
ボストンは両手を上げて答える。
「俺も同行していいなら問題ない。」
それを聞いていたガルシアは嬉しそうに言った。
「俺はリースさんと家でお茶を飲んでいればいいか?」
3人が一斉に「ダメ!」と答え、夕暮れに輝く麦畑に笑い声が木霊するのであった。




