少年の願い
母に隠し事を見抜かれてユウキは決心する。
「ごめんなさい、本当のことを話します。」
ボストンは諭すように言った。
「どこに嘘があったんだ?ゴブリンとの戦いか?」
ユウキは首を振って答えた。
「ゴブリンとの戦いは全部本当。ただ一つ約束して欲しいんだ。僕を信じてと。」
嘘があったのは、“グライスを倒した”っていう部分。
本当は生きていて集落で静かに暮らしてもらっている。」
それを聞いてさすがに驚きを隠せない。
ボストンは自問するように問いかけた。
「なんてことだ・・・信じたい。だが、なぜ・・?」
ユウキは真剣な顔でそれに答える。
「お父さんは“獣人は言葉が通じず好戦的だ”って言ったよね。
殺す前にグレイスに問いかけたら、人も出会えば何も言わずに殺しに来るだろうって。
それと、過去に人と獣人が円卓に付いたことはないとも言っていたよ。」
ガルシアは難しい顔をして言った。
「過去に人と人が争っていた時代がある。ダルメシア戦争と言われているが、後にトージと言う英雄が現れて人は結束した。
このとき戦場への進軍で獣人集落周辺を通過した際に、兵力を削る邪魔物として各国に扱われた。
そこから自然と獣人悪が根付いたと言われている。
対話を試みたものは恐らく居ない。」
それを踏まえてもおかしい。
今回のユウキとグライスのパターンがどこかで生まれてもおかしくない。
そしてたどり着いた答えは一つ。
(もしかして扇動している者がいる?)
しかしこの問いが真実であっても、知る者は皆口を閉ざしている。
ここで話しても始まらないので、この会話を切り上げる。
「一つお願いがあるんだ。他の街には内緒でサウスホープはグライス達と和平を結んで欲しいと思ってる。」
それは突拍子も無く非常に難しい願いだった。
仮にこの村だけで行うにしても、他に漏れたら人から村ごと焼き払われる恐れがある。
だが、行動を起こさずにそのまま静観してもいい問題ではない。
ボストンは決意した。
「これから村長に相談しに行こう。」
2人は頷き、リースはユウキを見て優しく微笑んだ。
「優しく育ってくれて嬉しいわ。でも無理はしないでね。」
母の優しい笑顔はどこまでも少年の心を癒すのだった。




