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開かれた幕(2)

 ノイントは目の前から消えると同時に、雪山の山頂へと移動していた。


「ノーザスに力を与えましょう。そして共に渡るのです…あのカーテンの残滓を」

「はい!はいはいはい!直ちに行きましょう!」

「まだカーテンが解かれていません。死にますよ」


 融和のカーテンはまだ現存していて、強大な魔力を持った者にしか渡る事は叶わない。

 類まれな能力を持つ学園長と言えど魔血衆ほどの力はないので、海を渡る際中に魔力が枯渇して死ぬ可能性が高い。


 諭されてジーザスは姿勢を正し敬礼するとレナードへと向き直る。そしてノイントは水晶玉を懐から取り出し、ジーザスの上空へ放り投げた。


「さぁ《光の翼》の神髄を魅せてあげない」


 固有血技《波長干渉》

 《フラグメントシステム》発動。

 《集結解放》


「学園長!何を?!」


 ノイントが放った水晶に遥か彼方から大量の魔力が集まり、ジーザスへと降り注ぐ。


「グオォ!!溢れる!私の…わたしの翼ぁぁぁああ!!」


 ジーザスから溢れ出る魔力は塊となって巨大な翼を形成していく。だがそれはレナードがかつて怒りによって自我を失い発現した能力と同じだった。


 その翼の色は…漆黒。


 《天満(そらみつ)の翼》


(トージ、最悪の方に行きそうだよ…)


「さぁジーザス、その力を存分に揮うと良いでしょう!はははっ!」


「うがああああああああああ!」



 状況は良からぬ方向へと向いている。

 無実だったダルメシア王は俺が眠らせて脱力し、エルザ・ドールも拡大した戦闘エリア内に入っている。


 護りながら学園長と《天満の翼》を発動したジーザスを相手にするのは分が悪い。

 ルインに戦闘エリアから離脱するように目配せし、ルインも頷き理解した事を返す。


 しかしあまりの出来事にエルザは放心してしまっていた。

 ただでさえ兄から「逃げれば殺す」と言われて拉致され、目的地を知らされぬまま大雪山を淡々と歩かされていたのだ。


 それだけでも精神的にすり減っているはずだ。


 さらに兄が弟に刃を向け、学園長が兄に何かをして禍々しい姿に変えてしまった。


 どう見ても固有血技の《光の翼》が関係しており、エルザは自分の手を見てしまう。

 あまりの状況にエルザは考えが追いつかず、思考停止してしまったのだ。


「なんで…あれは何?私の血は何で出来ているの…?」

「エルザ落ち着いて。あれはレナードが間違った力だって言ってた」

「レナードが…?なら私も……あぁなるの??」


 ダメだ。

 何を言っても悪い方向へ考えてしまう…


 それならば説得できる状況を創り出すしかない。

 そしてそれが出来るのが、ボクの固有血技サイレントミストだ!


 《蠱惑の楽園》


『エルザ姉さんは大丈夫さ』

「レナード…でもドールの血があんな異形になるのでしょう…?」


『いいや、護りたい者を思い浮かべれば違う道に行ける』

「私にそんな崇高な思想はないわ!ただ学園で平和に暮らして、平和に友人を作って、恋をして…それで……」


『エルザ先輩には護りたい友人や世界があるじゃないですか。それは立派な事ですよ』

「ユウキ…そうね、そういう考え方もある…かな」


 かつてエルザはユウキに対して異性として好意を抱いていた。

 だが幼馴染のアリサや熱愛するルインというライバルがいる中で、どこか諦めのような気持ちを抱いていた。


 そんな彼に今一度声をかけられ、そして手を差し伸べられている。


「今はまだ戦えなくても、ボクたちと生きることを選択しよ。ね?」

「そう…ね。悲観は後でもできるわ」


 エルザはユウキ、レナード、ルインの手を取ると、ホワイトアウトした視界は晴れてルインに抱きかかえられた。


 実際にはルインの固有血技によって幻影を見せられていたのだが、エルザの視界には再びホワイトアウトした中から皆が説得しているように見えていたのだ。


「さぁ、逃げようか!」

「うん!」


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