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邂逅(2)

 ダルメシア戦後は三国間で協定を結び、人族間で結託する事になった。

 だが新たな共通の敵が現れることで、想定していた以上に友好的となってしまったのだ。


 “人智継承計画”とは、ダルメシア戦争が終結することで戦術・戦略的な魔法技術が衰退することを危惧した対策だ。

 魔族と戦争になると言うのに、人族が平和ボケをしてしまっては到底敵わないと考えたのだ。


 つまり人族を教育し魔術の継承と研究をすることで、より進化した魔法技術を育もうとしたわけだ。

 それには学園という形が最も適しており、ノーザスの計画は的を射ていた。



 俺はトージとの話の最中に、突如として激しい頭痛に見舞われた。


「神…うっ痛ッ!」


 視界はグルグルと目まぐるしく回り、あまりの痛みに意識を失うこともできない。


『ワシはアヴィスターと呼ばれておる』

『使者の魂の裁量のみ』

『ようは平和にしろという事だ』

『ゆめゆめ神託を忘れる事の無いよう』


「ぐゥッ!」


 過去に起きた記憶がものすごい勢いで頭の中に流れ込んでくる。


 それは生前でも生後でもない。

 何もない荒野に玉座を構えた場所で、魂が行き場を失い彷徨っていた時の記憶だ。


 唯一欠落していた記憶。

 それが今“神”と言う言葉で鮮烈に蘇る。



 ハァハァハァ…


『ね……ちょ……と大丈………』


 誰かの心配する声が聞こえる。

 これまでよく聞いたことのある声で、とても居心地の良いものだ。


(あぁ、戻らないと)



 やがて視界はクリアになり、平衡感覚が戻ってくると背中にヒヤリとした物が当たっている事に気が付いた。


 どうやら背中から地に倒れたようだった。

 トージはそんな俺の様子を伺い、訝し気に問いかけてきた。


「お主は転生者か?だが、奴らの目的までは知るまいて」

「えぇ、火種燻ぶる世を平定するのが俺の神託…」


「奴らは最終的に世界を破壊しようとしている。そのための鉄槌を7つに分断して各地にばら撒いた」


 そしてトージは自らが持つ刀を突き出し、こう告げた。


「それがイビルウェポンだ」


 つまり神にイビルウェポンを渡すくらいなら、こちらで保管しておいた方が使われない。という事だ。


 やっと7つ集めると世界を破壊する代物を収集しろと言った意味が分かった。

 しかも武器自体が狂気的な魔力を有している事も。


 だが神は創造し管理しているこの世界を何故破壊するのだ?

 皆目見当が付かない。


「“ゼロの盤上”の事はどうか?」

「えぇ、ナルシッサさんから名前だけ聞いたわ」

「世界を全て無に帰し世界をリセットする事だ。それが奴らの最終目標」


 その目的が事実なら、魔族がこちらを攻め立てる理由もやや薄れてきてしまう。

 執拗なまでに魔族を警戒していた男は、なぜそんな事実を知るのだ?


「魔族の侵攻は確定要素だからだ。対策する前に滅ぼされたらそこで終わりだ」

「確定要素?確かに攻める気満々だったけれど、何処でその情報を?」


「吾輩の天命が魔族抗争の勝利であったからだ」


「「えっ!」」


 馬鹿な!

 攻められないし攻めてこない相手に対し、戦争をして勝利せよ?

 60年生きられたとしても、それが起きる要素は何処にあったんだ…


 何かの要因で神が考えたシナリオに亀裂が入って達成できなくなったのか?

 そういえばチェストでドワーフのサービッグさんから聞いたっけか。

 トージが死の間際に遺した言葉。


 “おおよそ人の生では事足りぬ”


 確かに数百年という歳月では到底まかりならないが、それならば何故神は遂行不能な神託を与えたのだ?


 うーん…分からない。

 トージが目的の意図を勘違いしたのか?


「神託に違和感を感じるであろう?」


 トージはニヤリと笑いそんな言葉を投げかけてきた。


「真龍が産れた目的は“破壊”…だったな。トージはここから神の目的を?」

「左様。吾輩の短き生の中で突き止めた事実。後は2か所の神々の世界への入り口だ」


 神に会えるというのか!?

 いや、普通に考えれば世界が繋がらなくては神の方からも干渉できない。


 ある意味では妥当な考えだ。


「一つは聖都の西、ノルアカ海にある孤島。ここは青龍が守護しており並大抵では通れまい。もう一つは北の魔大陸にある」


「ぇ~どっちも詰んでない?」


「然るに某は生前真龍と和睦を結んだが、青龍のみ頑なに命令を全うしおった」


 なるほど。

 ようやっと分散したピースがカチリと音を立ててはまり出した。


 この機を逃すまでもなく、必要な事や全て聞くつもりで行こう。

 確認の意味も含めて、これまでの話をトージに答え合わせして貰うのだ。




 まずはトージが現役で生きた時代、人族が三国間で争った“ダルメシア戦争”の話だ。


 最初は正史の通りダルメシア王国とゾディアック帝国が戦う。

 後にホルアクティの動向調査にナルシッサが向かうも、ホルアクティが聖都を撹乱しナルシッサは聖都から攻撃を受けた。


 ここが王都の正史と異なる点だ。

 聖都が参戦を表明し、大陸全土を巻き込んだ戦争へと発展する。


 世界の破壊を防ぐため真龍と和解したトージは、戦争の停止を願い真龍に王都の防衛を依頼し成就する。

 これにより何れの国も滅することなく、共存の道を歩むことに成功する。



 トージは魔族侵攻が確定している状況で、戦後に魔大陸がある王都の北側にドールガルス城塞を建設し生涯をそこで過ごして秘密の書庫を作り上げた。


 そしてナルシッサは仲たがいしていた当時のダルメシア王より国外追放を受け、帝国へと渡るがその強さによって頂点に立ち戦後を安定させた。


 これはトージにとっても僥倖であり、身内を帝国に置くことが出来たので赤龍を行かせ記録が残せる状況を作り出した。


 黒龍はトージの書庫を護らせる番人としての役割を受け持ってもらった。

 残る光龍は何れの道とも違い、残る事で必要な時に現れるよう約束してある。


 ようはリスク分散である。


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