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邂逅(1)

 視界がクリアになると次第に状況がわかるようになる。場所は運動場ほどの広さがあり、四方が石材の壁に囲まれた部屋に出た。


 石積みのため、恐らく城内に生成されたダンジョンなのだろう。

 なぜならダンジョンと同様に松明を必要とせず、壁全体が魔力を帯びて発光しているからだ。


「みんな大丈夫?」

「感じ的にナルシッサの残滓と出会った場所に似ているな」

「ここは僕に任せてくれないかな」


 俺がそのために来たのだろう?と問いかけると、レナードは頷いて返事をする。

 何をすべきなのかは、中央に鎮座する“それ”がすべてを物語っている。


 長刀と短刀が2本。刀は魔力を帯びていてイビルウェポンを彷彿とさせる。

 レナードが刀の方へと歩みを寄せると、刀は直ぐに反応を示した。


 キンッ!


 レナードが高速で振られた刀を弾くと、息をつく間もなく短刀との凄まじい連撃が繰り出される。


 “汝よ示せ。わたくしを満たせるか”


「くっ!」


 固有血技《光の翼》


 高密度の魔力がレナードを包み込み、捌くのが限界だった刀に対応し始める。


 《二刀・対尖》

 短刀で攻撃を捌き長刀で穿つ。

 シンプルだが隙を作り出し突き殺す強力な技だ。


「勝負あったわね」

「あぁ、ん?」


 固有血技《光之翼》


 “久しく感じる光の波動…世は流れたか?”


「トージ…いや、刀次郎……か?」


 自らの名を呼ばれ、それは不敵に笑う。

 その風貌は和装で、長い髪を後ろで結んだ浪人風の人物であった。


(ねぇアリサ、光の波動で目覚めたってレナードは戦わなくても良かったんじゃ…)


(シーッ、めっ!)


 何やら後ろの方からヒソヒソと声が聞こえるが気にしないことにした。



「御先祖様と推察致します。私はレナード・ドールと申します」


 そう言って頭を下げるレナードに対して、トージは手でそれを制した。


「墓参りでもあるまい。ナルシッサには会ったか?」

「俺はユウキ・ブレイク。赤龍とナルシッサの子孫だ」


 トージは眉を吊り上げ、剣呑とした眼差しを俺に向けてくる。

 ビリビリとした殺気を肌で感じ、油断したら首が繋がっていない感覚さえ覚えるほどだ。


 俺は魔力を解放して笑みをこぼし睨み返す。


 パンッ!


 トージと俺の間で何かが破裂した音共に、衝撃が周囲を襲った。


「上々。時は成ったか?」

「魔王自ら布告があったわ。それに“融和のカーテン”は消滅寸前だって言われたね」

「ナルシッサから“ゼロの盤上”のことを聞けとも」


 トージは皆に近寄り座るように促し、それに倣って円形状に座り込んだ。


「まず吾輩が何を見てきたかを語ろう」


 そう言った彼に、俺たちは身の上話を付き合うことにした。同じ転生者である彼の話に少し興味があったからだ。



 トージは生前この地とは全く異なる世界にいた。

 そこではこの世界とは違い、魔法など無く忙しない世界であった。


 その世界では、街道沿いに賊が出没するなど治安はこの世界と同程度だったが、僅かに科学技術力が進んでいた。

 恐らく魔法などと言う便利な物がなかったからであろう。


 そしてトージは武家の子として生を受けた。

 まだ帯刀が許されていた頃は剣術指南や治安維持に努めたが、時代の変革と共に武家は衰退していく事になる。


 新政府樹立と廃刀令の発令である。

 その後は行商として街道を行き来し、剣術を嗜むは我が身を守るためのであった。

 だが整備されていない道で野盗に身を追われれば、護身刀を失い木材で戦うしかなった。


 そして、その身を焦がすことになる。



 無念と念じれば、いつしか何もない荒野に一人立っていたのだが…そこで神と称す者に出会った。


(ここまでは俺と同じ。問題は何を言われたかだ)


 “強靭な光を持ち邪を打ち払う”


 そんな奇妙なことを告げられ、トージは光に包まれて新たな地へと誘われる。


 この世界ではイーストホープ近くにある農村で生を受けた。

 名をトージと呼ばれ、生前の剣術に加えて魔法が扱えたことで、冒険者としてある程度名を爆ぜるようになったのだ。


 だが国境付近より王国と帝国の不和が大きくなり、ついには隕石が衝突して戦争にまでなってしまった。

 当初はダルメシア戦争が勃発したことで、これが神託に該当する“邪”と考えた。


 だが戦況が動くにしたがって獣人に妙な動きがあり、疑念もあったので伝手を使って伝承の魔族を疑いだしたのだ。

 その時に力となったのがノーザス・バレルだ。


「その人は今の王都学園学園長の祖先です。僕たちもお世話になっています」


「ではノーザスの計画した“人智継承計画”が功を奏したようだ」



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