表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/269

伝説の力

 フェニキアが持つ真の瞳。猫眼の強烈な眼光。

 それは、ユウキが持つ《真紅の瞳》その物であった。


(わたくし)を誰と心得るの?」


 フェニキアは自ら燃え上がる炎を右手に凝縮させ、灼熱の閃光を打ち放った。

 それは塊となり、上空に巨大な火の玉となって揺らめく。


「なんだこれは…!余はッ!」


 《グラビティ・クラッシュ》


 皇帝はフェニキアが作り出した炎を原点として、炎や光さえも飲み込む超重力を発生させようと試みた。

 だがそれは叶わない。


「私は新たな力に目覚めましたわ。それは《重力》という途方もない力」


 《ホワイトホール》


「何を言うか!その能力に目覚めていただろう!」

「違いますわ愚王。私は…転生した赤龍なのよ」

「なっ!転生の記憶…それが秘宝か!?」

「どこまでも愚か。邪な影を裁断しますわ、ユウキ」


 フェニキアは不敵に笑うと、かつて見たこともないような複雑な魔法陣を展開して行く。


「破滅への狼煙とならん《熱砂の業火》」


 フェニキアが今度は左手を突き出し、その拳に宿る炎を握りつぶした。



 直後、皇帝の頭上にある業火が濃縮されていき、轟音とともに大爆発を引き起こす。


「ぐおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「きゃあああああああああああ!!!」


 業火に焼かれ、怨嗟の轟が周囲に木霊する。


 あまりの姿に目を背きたくなるような地獄絵図だったが、それを涼しげな表情で見据えるフェニキア。


(いくらなんでもやりすぎだ!)


 フェニキアの肩を掴もうとしたところで空を切り、地面に無様に転がった。


 俺自信が投げ倒された事に気がつくのに、数秒の時間を要した。

 口の中に土が入り、シャリシャリとした気持ち悪い感触が残る。


 ハッとして辺りを見渡すと、業火などなく帝国兵や皇帝、偽フェニキアも地に伏せていたが無傷だった。


「これは?今確かに私は業火に焼かれていたはず…」


 幻影。はては幻想か?

 全員が今の光景を現実と思いリアルに感じ取っていた。


 その証拠に帝国兵たちは戦意喪失して膝から崩れ落ち、熱気による汗は背筋を伝い流れ落ちている。


「これが…真龍の力なのか…!」

「そうですわ。でも焼いたのはお父様ではなく、そこの愚王ですわ」


 俺は言われて皇帝を見ると、どこか見たことのあるモヤっとした黒いものが見えた気がした。

 そして思わず声を荒げた。


「あれは…ーッ!馬鹿な!」


 そんなはずはない。

 だが見間違えるわけも…《人心掌握》の魔力痕跡だ!


 これを使えるのはこの世でただ一人、現ダルメシア王国国王であるダルメシア三世その人だけだ。


「だから自分を“余”と言っていたのか…ここに来た時には術中に嵌っていたな」


「帝国兵士全軍、傾聴せよ!フェニキア・ゾディアックにある!

 皇帝はご乱心の模様にて一度待機とします。私の言う事を聞かない道理はあって?」


 この一言に帝国軍は全身を奮わせて、一人また一人と立ち上がると姿勢を正し始める。

 帝国では力が絶対的に信頼されるものであり、フェニキアは今それを示した。

 従わない者が居るとすれば、それは“バカ”か“自称最強”のどちらかだ。


 さて、問題は《人心掌握》の方。これは対象を錯乱させ言う事を聞かせる固有血技だ。

 ダルメシア王が人獣会談で一度行使したのを見た。その時はレクサスに使っており、本人から『錯乱中の記憶はない』と聞いている。


 ダルメシア王は皇帝に何をさせた?一体いつからだ?

 接触時期も不明で受けた本人にも分からないし、これは直接問い正すしかない…。



「フェニキア……よかった…本当に…」


 レナードがフェニキアに抱きつき、その身を自身が支える。

 フェニキアはそのまま身を委ね、心地よい微睡の世界へと旅立った。


「どうなのこれ?レナード君は俺に謝った方が良いと思うな」


 俺の呟きは風に流され、消えていくような気がした。


「フェニキア?男??」


 もっと聞こえてはいけない禁断の魔法が聞こえた。

 ルインさんは立入禁止エリアに堂々と正面から侵入する珍しいタイプだ。


 そのルインさんの一言が…小言だと!

 俺は耳を疑ったさ。


「転生言うてたよ。二人は純情だよ」

「でもユウキの御先祖の旦那は…赤龍だよね?」


 バンッ!と激しく机を叩く擬音が聞こえた気がした。


 気のせいだが、どう言う精神構造だ?

 俺は男が男に転生できたから良くわからん。


「秘密の花園…」

「「ブッ!」」


 アリサが顔を赤めて口に手を当てながら爆弾発言!


「おい、ルインお前の仕事だろう!」

「アリサがー…そっち趣味……bl」

「ちちっ違うわ!私はユウキ一筋よ!」


 ありがたいが、何かありがたみが薄れる状況だな…あいや、今はそれより皇帝だな。


「レクサス、一緒に来てくれ!皇帝は操られていた!」


「ふむ?…ぁ承知。先に行ってくれ、同志をまとめてから向かう」


 その一言にレクサスはピンと来たのだろう。

 ここでダルメシア王の策略で皇帝がリザードマンを攻めた。などと吹聴されると更に厄介な事になる。


 まぁ自分が似たような過ち犯したしな。あいつはあれでかなり頭がかなりキレる。


「ガルシアさんも来てください」

「おう、俺を忘れたら朝食にエッグを入れないようなもんだ」

「ボクが思うにトーストかもね〜」

「クハッ!メインかよ。そいつはゴメンだ」


 何やら2人は意気投合しているようだ。

 たしかに似たような気配は感じるが、2人だけで話は進むのか?


 そんな無駄な事を考えていると、皇帝と偽フェニキアの元へとたどり着いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ