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ファーストコンタクト(1)

 その容姿はこの世界でも見たことがない、尖った耳と突き出す2本の角。

 レナードを見るが、レナードも絵含めて初めて見たようで難しい顔をしていた。


「魔族が…ついにここまで来たか!」


 確かに威圧するような魔力は感じるが、融和のカーテンを通過したせいで暴力的とまではいかない。

 ハウレストは困ったようにナルシッサを見つめると、扇で口元を隠して呟いた。


「こないな暑苦しい場所で大変だったでしょ?ウチが最後のお客やわ」


 ナルシッサは警戒を解かずに臨戦態勢をとり始めたが、彼女はあのまま戦えるのか?

 そう言えば、最初に思念体でも魔法を行使していたか。


 戦い始めようしているのを俺は静止することにした。


「いきなり暴力的になるのは良くないぞナルシッサ。俺は短い生涯でそれを学んだ。そちらの要件は?」


「ーッ!?敵は目の前、することは一つだ!その命を刈り取られたくなかったらな!」


 ハウレストは細い狐目を僅かに開くと、見据えるようにジッと見てきた。

 扇で口元が覆われているせいで、表情までは読めない。


「遺産」

「チッ!イビルウェポンならないぞ」


 ヴヴヴッ……ヴッ…


「あっ…」


 誰もが音のする方を見ていた…


 俺の馬鹿?

 えっ?俺のせい?


 明らかにアリサ、レナード、ルインがジトっとした目で俺を見ている…


「これは…パーミスト特有のダンジョンの地面から生える刀…そうだ、特産だ!その名も『ピュルガトワール』だ!!」


「いやいや、ユウキ無理だから」

「流石にないわ〜」


 クッ!無理か…ならば!


「ウチ…地面から生える武器を初めて見たわぁ!」

「「えッー!!」」


「冗談ですぇ。ピュルガトワールは刀型の“イビルウェポン”。間違いありません」


 まじか!

 名前超適当に考えたんだけど!それが合っているってどんだけの確率よ!


 “汝の力見せてもらった。我はピュルガトワール、身を滅ぼさんことを…”


 聞こえた!今たしかに声が聞こえた!

 あっ…認めるとこの武器達語りかけて来るんだったわ。


 無意識に名前言ってたわ〜……



「ウチが聞きたいのは“ゼロの盤上”対策の全貌。適当やと消えて貰いますえ?」


「先に消してやる」


 ハウレストとナルシッサは一触即発の状況。

 俺が馬鹿な事を考えている間に、話し合いで終わりそうもない空気になっていた。


「それは先程知らないって言ってなかった?」

「言っても聞き入れんだろう?」


 ならば出る答えは暴力か。それとも聞くこと以外に目的があるのか?


「だからハーはダメなんだよぅ。皆困ってるよ?」



 突然ハウレストの背後から幼い女性の声がした。


 ハウレストの背丈はさして高い方ではないが、それでもその陰に隠れてしまう程に小柄である。

 そして、その頭上には一匹の可憐な蝶がフワフワと飛んでいた。


 俺は直感的に違和感を感じた。

 ハウレストには感じなかったが、こいつは魔力とか関係なしにヤバいと思わせる何かがあった。


(何だあれは?ハウレストと比べて小さいけど…)


「帰ってお寝んねしていいどすえ。もうウチの仕事はほぼほぼ終わってますえ」


「カイラス様がカーテン潜るから、ハーについてってって。だーかーらーねっ?」


「あの~…」


 俺の問いかけに小柄な女性はニパッと笑うと、直角に腰を曲げて頭を下げた。


「あっ、ごめんね!ミミはね、魔王様の直属部隊“魔血衆”ミミっていうの!よろしく!」


 その姿に何かを重ねた。

 首だけで一人の少女の方へと視線を投げかけると、皆が見ていた。


「なっ…何かな?ボクは、えと…ルインだよ!よろしくね!」


「くはっ、そう来るか」

「ルーちゃんイイッ!その短剣かっこいいね!」


 言うが早いか刹那、ルインの目の前に来て笑顔を崩さずハウレストの元へと帰っていった。

 だがその手には、短剣“クリミナルナイフ”をクルクルと回しながら。


「えっ!?ボクの短剣!」

「なっ!僕にも見えなかった!」


 アリサやフェニキアはおろか、前衛のルインとレナードにも見えなかったようだ。

 レクサスは唯一ピクリと反応したが、俺が一瞥くれると目の前の敵に集中した。


 ナルシッサも片眉を上げ呆然としてるが当然だ。

 ミミと言ったか。彼女は一連の行動に魔力を使っていない。


 固有血技《点穴》は、魔力の痕跡があれば看破することも容易だが、それ以外となれば滅法使えない。



「少し雑だな。ルインの手前に足跡が残ったぞ」

「へぇ?名前は?」

「ユウキ・ブレイク。武器はこの肉体」

「ユー…ゆうぃー…うん無理!ユウキでいいや!」


 ミミは先ほど同様、俺の目の前にきて短剣を持たせようとした。

 だが逆に短剣を足で弾き飛ばすと、ミミの首根っこを掴んで左手で短剣をキャッチする。


「こらッ」

「へへ~、ミミは高い所が好きなのだッ」


 短剣は返してもらったし、ミミを地に降ろそうとした。



 だがここで異変が生じる。


 突然右手に重さを感じなくなったのだ。

 焦り正面を見るとミミがハウレストの隣に居るではないか。


 ??


 わけが分からない。

 何が起きた?


「ユウキ以外とは遊べなさそうだから帰ろ~?」

「んー、ウチの収穫としても十分…ですぇ」

「待て!僕としてはこのまま返せない!」


 レナードは相手にもされなかった事に憤慨し、刀に手を置き臨戦態勢を取るが…


「君のその刀はお飾りかにゃ?」

「では虚無の幻想はご退場あれ。あっそれぇ~」


 ハウレストは扇を振るうと、とても立っていられないほどの強風がダンジョン内を吹き荒れた。

 塵や砂が舞い上がり、とても目を開けていられる状況ではない。


(まずい!このまま攻撃を受けたら…!)


「待て、少々興味がわいた」





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