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パーミスト洞穴(2)

 階層が進むにつれて、中の様相は変化して行く。

 最初は溶岩が作り出した溶岩洞と言った感じであったが、10層を超えたあたりから徐々に溶岩の流れが見え出してきたのだ。


 今は30層を越えた所だった。


 そこで思わず歩を止めてしまったのだが、それは人であれば当たり前だったのかも知れない。


 その絶景に皆が目を奪われたのだ。

 …巨大な溶岩湖。


「凄いわ…こんな物が世の中にあったなんて…」

「あぁ、冒険者も悪くないと思ったよ」

「綺麗……」


 溶岩湖に近づいたフェニキアを慌てて止めに入り、レクサスが駆けつけヒョイと持ち上げた。

 最初に言った通り、溶岩はその高温を持って近づいた物を自然発火させる。


 《アクアヴェール》を纏っているとは言え、何が起こるか分からなかった。


「油断するな。自然も敵となる時がある」

「ー!ごめんなさい。私は…」

「良い。休むならこの溶岩湖を避けた方が良いな」


 そのまま溶岩湖を迂回する道を進み、休憩できる場所を探していると、突然道がなくなってしまった。


「ん?行き止まり?道を間違えたか??」


 俺は《点穴》で周囲を確認するが、やはり道と思われる場所はここしか無かった。


「俺の眼にもここしか道は無いぞ」


 まさか崩落したか?

 いやでもダンジョンだし…皇帝の言う最終はここなのか?


 考えるが答えは出なかった。だが点穴で探るとこの場所が埋まってることは分からなかった。

 つまりダンジョン壁のように魔力が出ていない。


「ここで終わり?」

「いや、待ってくれ。ここが怪しい」


 皆を溶岩湖の方まで退避させると、腰を落として手に魔力を集中させた。

 スコーピオンの装甲を貫いた技、《殻刃》でこの崩落した場所を破壊するつもりだ。


 《点穴》で岩塊を見極め、どこを壊せば良いかを考えぬいてブラックスポットを貫く。


「見えた!ここだぁぁ!!」


 ガンッ!

 ガラガラガラ……


 瓦礫が崩れ落ちる音ともに土煙が辺り一帯を襲う。アリサ達も凄まじい音を聞きつけて戻ってきた。


「ユウキ!大丈夫!?」

「ケホッ…問題ないよ。それよりほら」


 そう言って指差す先には通路。

 だがそれは僅か10メートル程で突然の終わりを告げていた。


「ここまで来て行き止まりですの…」

「いや、あれは転移魔法陣だ。地下ダンジョンで1度目にしたことがある」


 フェニキアの不安を払拭するかのように告げた。

 恐らく帝国の調査隊はここが地圧に耐えかね、本来あるべき姿に戻ろうとした隧道奥地と勘違いしたのだろう。


 ダンジョンの壁面からは微弱な魔力が絶えず放出されており、一定時間で破壊箇所を修復する機能を持つ不可思議な空間だ。


 つまり修復されないこの場所は、作為的に誰かが分断した隠し通路という事だ。


「でも細かくなったけど、これじゃ通れないわね」


「ボクがやるよ。ハアァァ!」


 レナードは光が瞬いたかと思うと、刀に移ったそれを一気に振り払った。

 一閃された斬痕は足元を埋め尽くした瓦礫を蒸発させた。


「また腕を上げたな」


 ニヤリと笑うレナードの肩を叩いて魔法陣へと歩み寄る。それはあの地下ダンジョンでみた物と瓜二つであった。


 その中で一点だけ浸る場所を見つけたが、何だこれは?


「これは…」


 それに触れるかどうか。と言った所で突然光の粒が空間を飛びわまり消え去っていく。


 そこには飛行機雲のように跡を引いた文字が残さていく。


 “《点穴》が見た光。堅固たる表皮に覆われた友がその鍵を持たん”


 堅固たる表皮…?

 言われてレクサスを見ると、皆がレクサスを見ていた。


「な…なんだ。鍵など持ってはおらんぞ」


「れーくーさーすー、ここで隠すなんてイケない子だぞっ!この辺りに入ってるんでしょ!」


「やめっ!そこはちがっ!あひゃっ」


 ルインがレクサスの装飾の中を手あたり次第に弄り出した。

 なんかもの凄い擽ったそうにしているが、何かに触れたのか変な声をあげている。


「おいルイン、確かに一致するが…」


 カチッ


「「えっ?」」


 ルインがレクサスを押し倒した拍子に魔法陣の上に載ってしまった。

 そしてレクサスの持つ首飾りが突如として光出し、魔法陣に吸い込まれていく。


「おおぉぉぉ!なんか神聖だが、この姿勢はまずいぞユウキ!」


「あ、あぁ、ルイン下がるんだ。レクサスだいじょ…」


 パシュ!



 消えた?

 えっ?起動しちゃった?


「追うぞ!」


 言うが早いか魔法陣に手を置くと周囲が光り出して目を開けていられなくなった。


 眩しさを抑えるその瞳で片目を開けると、そこは広いドーム状になった空間に出た。

 だが移動する前と同じ溶岩洞である事には変わりない。


 やがて同じように魔法陣で移動してきた友人が無事であることにホッとした。


「ここは何処かしら?」

「それよりレクサスが居ないよ?」

「あぁ、レクサスを探そうにもここはこのドームだけだ」


 そこで突然ドームの中心部分から禍々しい魔力の塊が渦巻くのが見えた。


「何か来るぞ!このダンジョンのボスかもしれない!」


 全員が臨戦態勢を執り、アリサが防護魔法をかけるとフェニキアを護る様に後方へと下がって行った。

 アリサは言わなくても分かってくれるのが助かる。


 レクサスが居なくなった今、後方でフェニキアを護れる人が居ない。


 その間にも禍々しい魔力の塊が、やがて一つの形となって現れる。

 それは龍というべきか、トカゲと言うべきか悩むものだった。


「レナード、俺が隙を造るから一撃必殺で決めてくれ」

「了解。《光の翼》」


 はためいた光の翼は、やがて粒子となって周囲へと降り注ぐ。


「ルインがやられたら《アクアヴェール》が解ける可能性がある。アリサと一緒に後方へ」

「うん、気を付けてね」


 俺は深く腰を落として地を這う龍のブラックスポットを探し出した。

 一点喉元に防御の薄い箇所があり、攻撃方法を決める。


 相手も準備が整ったようだ。けたたましい咆哮が耳を劈き、それだけで恐怖心をあおる。


「ギャアアアアアアアアアアアア!!」


「行くぞ!」



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