決着
ユウキは「くどい」と言い放つと、一気に飛んだ。
木を蹴って立体的に距離を詰める。
そしてホブゴブリンの顔面を踏みつけ飛翔すると、両手を握り締めて重力を利用し、思いっきり胴体に叩きつけた。
《アースシザー》
叩きつけると同時に、地面から土塊が隆起して上下から挟まれる。
ホブゴブリンはガハッと血を吐きだした。
そして告げた。
「人族の戦士よ見事だ。先も述べたが・・我々は強き者を賞賛する・・。」
炎の光が2人を照らす。
ユウキが言葉を漏らす。
「お前も見事だった。だが許されない事もある。
グライスと言ったよね?なぜ人を襲う?共存の道は・・」
遮るようにグライスは言う。
「我々が人族と遭遇すれば立場は逆・・我々が襲われる。ただそれだけだ。
円卓についた事もない。」
それを聞いてユウキは、父から聞いた獣人の説明が一方的であることに気がついた。
(知性はあるが、話が通じず好戦的な種族)
故にユウキはグライスにこう伝えた。
「時を待って静かに暮らして。ゴブリンの勇敢なる戦士達に賞賛を送る。」
それを聞いてグライスは眉を寄せ俯いた。
「小さき人族の戦士よ・・名は?」
ユウキは迷わず答える。
「ユウキ・・・ユウキ・ブレイク。」
グライスは考え俯いた顔を上げる。
「ユウキ、この事は生涯忘れぬ。集落はこの先にある。」
それを聞いて満足した。
「もうじき村の人が来ると思うから、ゴブリンは討伐したと報告するよ。戦士達の遺体はそのままに。」
グライスは起き上がると頷き、巨体を引きずり動ける者とその場を後にした。
ユウキは「ふぅー」と息を吐くと、瞳が黒く戻っていった。しかし、髪の色は淡い赤毛のままだ。
ユウキはアリサを抱き上げると、村の方を目指して歩き始めた。




