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双斧鬼神サービッグ

 まだ熱覚めやらぬ中、受付嬢に素材を渡す為一度外に出てもらった。

 中だと大変な事になる。


「なぜこんな所に呼び出す?」


 オーギスは怪訝な顔をして俺に問いかけてきた。

 それに応える為、ポーチからスコーピオンの素材を取り出していく。


 ドサッドサッ…


 どんどん山のように積み上がっていく甲殻や毒針。


「やめやめやめ!こんなにいらん!」


 オーギスに途中で止められてしまった。

 仕方がないので最後の奴だけ出すとするか。


 ポーチから尻尾らしき物を掴むと、一気に引っ張り出した。


 ズドン!


「「「…なんじゃこりゃ!」」」


 皆が一様に驚いた。

 胴体だけで3メートル、尻尾は5メートルほどあるボスの遺骸だ。


「ユウキはダニエルさんを守ってこれと戦ってたの?馬鹿なの??」

「しかもボクと交信している時じゃないかな?」

「僕にも交信が来たけど?」


 皆好き勝手言いやがって。

 仲間を呼び出して物凄い苦労したのに。


 それを言うと、更に絶句されてしまった。


「これがゴールドの力…」

「でも目標が見えた」

「あぁ、俺達にも出来るさ。努力しよう」


 周囲の冒険者は静かに熱を滾らせていた。

 良い影響を受けたようで、それを見たオーギスは嬉しそうに頷く。


「因みに俺とイージスは20メートル級の大蛇を倒したぞ」

「ゴールドは化け物かよ!」


 それに皆が笑い出し、素晴らしい光景が広がった。だが受付嬢だけは困っていた。


「えっと、素材は必要な分だけであとは入りません」


 キッパリ断られた。

 まぁ自分らで使う分があるのでボスをポーチにしまい、出した素材を換金してもらった。


「皆、この金で好きなだけ飲んでくれ」


 俺はギルドから金を受け取ると、そのまま冒険者のリーダーである男に渡した。

 大凡160金貨ほどだ。


「こんな大金…良いのか?」

「背を預けたせめてものお礼です」


 これに大いに沸いた。こんな事でしか返せない自分が情けない。だがこれで失踪して悲しむ人々は大きく減る。


 これに喜ぶべきであろう。

 冒険者ギルドを背に俺たちは歩き出だす。残念ながら自分達が今すべき事は宴会ではない。


「おい、グライスにまた呑もうと言っといてくれ」

「自分で言ってください」


 オーギスの声が聞こえて振り向き、苦笑いを浮かべて答えた。

 この後向かうのは家具師ビッグの所だ。素材は集まったし、ゴブリンも向かったはずだ。



 家具が外まで出ている店までくると、扉を開けて中へと入った。


「ビッグさん、素材持ってきました」

「ちとまっとれ」


 奥から声が聞こえてくるが、何やらガチャガチャとした音も聞こえる。

 暫く待つと、奥から油だらけのビッグがやってきた。


「お主の渡した図通りだと思うぞ」


 そう言って渡してきたのは直径200mmほどの円柱状の物であった。

 中心の輪を持ち外周を思いっきり廻した。


 シャーー…


 いつまでも廻り続けるのを確認してそれを机の上に置き、ビッグに笑顔を向けた。


「素晴らしいです!これがあれば馬車はグッと良くなりますよ」


「ハンッ!量産には設備が足りない。して素材は?」


 俺達は外に出てスコーピオンのボスを取り出した。

 それを見たビッグはあれこれと必要な素材を採取していく。


 見事な解体技術であった。それにボスに驚かないところを見るとやはり…


「こんなもんじゃろ。後は人員だが」

「待たせたな、道に迷った」


 そう言って現れたのは、これまたガタイがガッチリしたゴブリン三名。


「群鳥戦のあとで申し訳ないわね」

「我等は戦闘要員では無い。鍛治師が戦場で死んだら状況は悪化する」


 ごもっともです。

 そんな事を思っていると、ビッグがこれでもかと言うほどの笑顔を見せていた。


「主らは素晴らしい!早速だがバネを作りたい」


 こうして技術系の話になったので手持ち無沙汰になってしまった。

 中の家具を見て周り、中々良いのが揃っている事に気がついた。


 タンスを見ているとルインが声をかけてきた。


「ボク達が使うには少し小さいかな?子供の分も考えると…ね?」

「ちょまて、早く無いか?」

「そうでも無いわ。家はどこに構えるか考えないとね」


 アリサまで話に乗っかってきた。


「ドールガルスは良いところだよ。皆が居たら城砦としても安心だしね」

「ったく、本当は近くにいて欲しいんだろ?」

「ふふ、そうかもね」


 そんなたわいも無い話をしていると、ビッグが戻ってきて一週間時間をくれと言ってきた。

 特に問題もないのでそれを了承すると、準備に取りかかり出した。



 一週間後、約束の日が来たので家具屋を訪れると、ビッグはカウンターに座り待っていた。


「出来たぞ。試したが乗り心地は最高じゃ」


 言われて裏庭に出ると、荷台を綺麗に掃除するゴブリン達がいた。

 最後の仕上げまで手を抜かない丁寧さに感心しながら、荷台の下を見ると想像した通りの出来栄えだった。


「ありがとう、皆のおかげで無事完成したよ」


 それに笑顔で答える者達。

 しかし、ビッグは家具師と言うよりは鍛治師がしっくり来る。


「時にあのスコーピオン、どうした?」

「倒してきました」


 ビッグはやはり気になっていたようだ。

 その答えにピクリとして今まで見せた事もない剣呑とした目付きで見てくる。


「お主、何者じゃ?」

「俺が聞きたいね。双斧鬼神サービッグさん」



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