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真の勇者達

 副首都チェストに向かう中、2人の視線が気になる。


 ジトーッ


「うふふ、あたし幸せだと思うの。ねぇユウキ様?」


 冷や汗が止まらない。

 突き刺さる視線が痛くて堪らない。


「そ、そうだな。だがなんて言うかTPOは弁えよう」

「TPO?また難しい言葉知っているのね。流石ユウキ様だわぁ」


 ダメだこれ、何を言っても良い方に捉える。

 恋愛は盲目になると言うがまさにそれだ。


 早くなんとかしないと。


「リン、君の事は好きだけど2人の手前もある」


 そう言うと、小柄で可愛い顔をしたリンはキョトンとした目で見つめてくる。


「そうだね〜、あっ見て!あそこにサボテンがあるよ」

「くっぷぷ。ユウキ・・・」


 レナードが笑いを堪えて失敗してやがる。

 クソッ!どうすりゃいいんだ!


「リン、ケジメはつけろ。ユウキには既に伴侶が2人もいる」


 おお!助け舟が来た!

 グライスさん、流石親です。


「長、知ってるよ?ゴブリンの世界はいつも取り合い」


 ダメだ。

 常識の概念が違う。


 カルチャーショック?いや、リンが特殊すぎる。


「異種属なのだから、相手の文化も知れ」

「「そうだよ!」」


 グライスに女性2名が賛同している。

 リンはそれを見て考え込んだ後、ルインとアリサに向き直った。


 そして笑顔を向けて挨拶する。


「グライスの族長が一人リンです。よろしくね」


 いきなりの挨拶にややポカンとした二人は、急いで挨拶を返した。


「よろしくね。リン」

「ボクは始めましてかな?ルインだよ」


 握手を交わす。だが何か魔力がだだ漏れだ。

 ルインに至ってはリンと力比べでもしてるんじゃないかって位腕に力が入っている。


「リンはやる事があるから同行はしない。分かっているな?」


 グライスの問いかけに真面目な顔になりリンが答えた。


「はい、チェスト到着後にネフィル殿に同行し帰着します。その後はボブと別れ西の聖都領へ向かいます」


 流石は族長の一人だ。


 俺の事になると酷い有様だが、統率力、カリスマ性、単騎戦闘能力は極めて高い。

 五族長の中でもとりわけ、高水準にまとまったバランスの良さは群を抜いている。


「あぁ、頼むぞ。オークの所は熱い奴が多いからな」


 すると背後にヒヤッとしたものを感じ、背筋がゾクゾクしてきた。

 ルインが抱きついてきて温かな温もりを感じる。


「ボクは離さない」

「ルイン・・・」

「私もよ!」


 アリサも腕にひっついてくる。

 二人の温もりを感じながらやや反省する。


「ごめんね」


 二人は何も言わない、ただ引っ付いて歩み出す。

 それだけで十分だった。



 チェストには先に戻ったイージス支部長と冒険者によって、群鳥壊滅の報が知らされた。

 一連の誘拐事件から、更に遥か昔における悪行の数々を世に知らせることとなった。


 チェストの門は警備隊により厳重に包囲されているが、道は開いている。

 そこをオーギス筆頭に中へと入り、群鳥はチェストにある特殊地下監獄へと送られていった。



 それを外から見る者達がいる。


 ゴブリン達だ。

 獣士の登録は鍛治に関する数名しか登録していない。故に真の貢献者達は中へは入れない。


「皆!ありがとう!!」


 俺はゴブリン全員に聞こえるように、風魔法で拡張した声を張り上げた。


「俺の突然の助けに答えてくれた事、本当に嬉しく思う!

 皆が普通に街へ入る事が出来る世を、精一杯作るように尽力する」


 ゴブリン達はそれに対して、一斉に軍礼をして答える。

 それは圧巻であり、彼等がまだ武器を捨てられていない証でもあった。


「同胞よ、帰って子に伝えよ!自らの武勇を!!」


「「「ガアァァァァァァァ!!」」」


 グライスが腕を差し出す。

 俺も腕を出してガチッと打ち合わせると、ニヤリと笑った。


「今度は街で」

「おう、オークも一緒にな」


 種族の違う二人の男は背を向けて歩き出した。


 ユウキはチェストへ。

 グライス、リン、ネフィルはゴブリンの集落へ。


 行く方角は違っても、向かう先は同じであった。



 そしてこの声はチェストの街中に響き渡っていた。故に街の人たちは知っている。

 誰が人を助けたのかを。


 酒場で冒険者がその日あったことを熱を込めて話し合う。

そして詩人が聞き届け、やがて世界へと駆け抜けた。

 とある街と村を賊から救った勇者達の物語を。



 この瞬間から、世界は獣士を本当の意味で知る事になった。




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