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副首都チェストへ

 昨日は久々にゆっくりと休息をとることができて、それぞれ精神的な疲労回復が得られた。


 やはり、いきなり野宿を含めた長期間の移動は辛い。


 更にこの村でもゴブリンは製鉄・鋳造技術か発達していた様だ。

 グライス達に農具などの整備を手伝ってもらったのも、彼らがそれらに熟達していたからだ。


 少し集落を見て周り、村民と話をして少しずつ融和を説いていく。

 自分達は害するものではないと。


 だがあまり時間をかけることも出来ない。


 4人で話し合った結果、一度街道から外れて真南へと向かい新街道を経て副首都チェストへと向かうことにした。


「お世話になりました。ここでのご恩は忘れません」


「なに、こちらも一度はその命を刈り取ろうとした。

 その礼はいつか必ず」


 ここの族長は高齢なホブゴブリンで、ネフィルというネームを持つようだ。


 グライスのような肉体的な屈強さは見られないが、魔導士として熟達しており自衛に猛威を奮ったという。


 族長建屋を出て門へと向かう途中、ゴブリンの子供達が寄ってきた。


「また遊んで!」


「えぇ、次は水かけね!」


 ルインとアリサはそれに笑顔で答えた。どこも種族関係なく子供達の反応は同じだ。


「ボブ、頼むな。この子達を泣かさないでくれ」


「承知、もといそのつもりです」


 その返答に満足し、一つの手応えを感じつつゴブリンの集落を後にした。



「よし、このまま真南に向かうぞ」


「迷子はこれで終わりだねー」


「迷子じゃないわ。道を間違えただけよ」


 物は言い様である。

 アリサはなんて前向きなのか。


「それじゃ馬を走らせるよ」


「レナード頼む。この獣道はお前じゃないと無理だ」


「ははっ練習しなよ」


 そんな雑談に花を咲かせながら、道なき道を突き進む。

 コンパスのような物が必要だなと感じつつ、日と山の方角から進むのであった。




 ーー1週間後ーー


「ユウキー見えてきたよっ!」


 馬車を操作するルインから声をかけられた。


 言われて荷台から顔を出し、ルインの肩に手を置いて前方を確認する。


 そこには巨大な渓谷の姿が窺える。

 近づくにつれてその幅の広さが分かるようになるが、結構な幅である。


「本当にトージがこの渓谷を作ったのか?」


 ユウキの問いかけに応えられる物はいなかった。

 もしそうであれば想像を絶する威力である。


「僕と同じ力・・・まだまだだね」


「ふふっそうね」


 まだまだ。自分の力を過信せずに邁進する。

 自分達の信条のようなものである。


「取り敢えず飛び越えるか。馬車は俺が持つよ」


 幅200mはあるが、魔力解放すれば問題ない。

 レナードが馬に跨り《光の翼》を解放すると、天馬のように翼をはためかせた。


「せーの!」


 掛け声と共に皆それぞれやりやすい様に対岸へと飛び越え着地する。


 馬も暴れるかと思ったが、ここまでの旅で大分信頼されている様である。


「底が見えなかったね。落ちたら大変」


「ルイン、案外こういう下にお宝があるかもよ?」


 そう言われて覗き込んだルインのお尻をツンと突いた。


「ひゃ!」


「可愛い声が出るじゃないか。それじゃ行こうか」


 頬を膨らませたルインがユウキを追いかける。まるで修学旅行のようであった。

 こう言ったやり取りも心を癒す大事なものだ。



 また暫く南へ移動していると、やがて草が生えていない場所に出た。


 新街道だ。


 本来来るべき道へ戻ることができて、ホッと肩を撫で下ろしそのまま帝国領方面である東へと向かった。


 幾ばくかの日数を経ると共に、商人達と行き交うことができた。

 もう近くまで来ていることは分かっていたが、やはり聞いてしまうのは人の性か。


「あぁ、チェストならこのまま行けば明日には着くと思うよ」


「ありがとうございます。それと高値で良いので何が簡易食はありませんか?」


 行商から購入することで、野草などの食を避けて空腹を満たすことができる。

 自然の食材を使った調理は決して悪くはない。だか飽きてきていたのだ。


 この辺りではあまり見かけない、塩やジャガイモなどを購入し、この日の晩は野ウサギの塩肉じゃがを食した。


 塩分が体に不足していたのか、程よい脂身に塩が溶け込み非常に絶品であった。



 翌日、言われた通り遠方に城壁と思われる純白の壁が見受けられた。

 徐々に近付くとその全貌は見えなくなるほど広大であると分かる。


「ユウキ、そろそろ検問の列に着くと思うよ」


「やっとだな。しっかし広いな」


「副首都って言うけど、広さは王都に負けないわね」


 このチェストの北側にイーストホープ渓谷まで荒野が広がり、南には森林と噴煙を上げる山々が広がっていた。


 チェストは森と荒野の境に作られた街で、丁度王都と帝国関所の中間部に位置する。


「取り敢えず検問を終えて宿を探そう」


「了解、ルインそろそろ起きなよ」


「んぅんー」


 ルインはあまり心地よいとは言えないガタガタと揺れる荷馬車で熟睡していた。

 昨夜の早朝夜警を行っていたためだ。


「アリサー、なんか身体が痛いよぅ」


「布団が必要ね」


 これには全員が激しく頷いた。

 ぶっちゃけ痛いと言うのも生易しい。


「フローリングに寝た時の比じゃ無いからな」


 俺の呟きに皆が考え込んだが、考えるのを辞めたようだ。


 木の板を張り詰めた床は普通にあるが、フローリングと言う言い方はこの世界には存在しない。

 度々前世の言葉を口にするので、皆慣れっこになっていた。


 やがて商人や冒険者などの行列が見受けられた。

だがダルカンダより仕事が良いのか、進むスピードは早かった為あまり時間もかかりそうに無い。


 ダラダラと4人で話しをしながら、チェストの検問まで時間を潰して進むのであった。




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