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アリサの本音

 今日は色々とあって時間が自然と過ぎ去っていた。

 陽光は低くなり、やがて夕焼けが差すような時刻が近づいてきた。


「何かごめんね。アリサの望むような時間は過ごせなかったかな?」


 それを聞いてアリサは俯いていた。

 本当なら噴水の時のような、甘い時間を過ごしたかったのかもしれない。


「違うの。2人で過ごせたことが何より嬉しかった・・・」



 思えば入学してからアリサとは生活空間も違った。


 告白してからはそれらしい時間も少なかったし、直ぐに自分がルインと浮気してしまった。


 ユウキは過去を思い返して自然と手が伸びていた。

 そして、アリサの腰に手を添えて体を密着させると、アリサも返してくる。


 アリサの栗色のポニーテールが揺れて肩へと当たっては離れていく。



「アリサと離れたいわけじゃ無い。ルインも大切なんだ」


「分かっているわ。あの子がユウキを必要としていることも、ユウキもルインが離せないことも!」


 立ち止まりアリサを見ると、瞳からは涙が溢れていた。


「だけどね、私の気持ちも騙せないの!!ねぇ、貴方の本心を私に委ねてよ!」


 ユウキはソッとアリサを抱きとめた。


「強がって隠しているけど弱い部分がある事。

 誰よりも自分に厳しい所。

 俺をずっと見ていてくれた事、みんな知ってるよ」


「なら!なら!!私を分らせてよ・・・」


 泣きながら本心を打ち明けてくれた。

 ルインといる自分を見るのが辛かったのだろう。


 ルインはあれでいて独占欲が強い。

 でもアリサの事も大好きで、喧嘩もしたくは無いし気も使っている部分がある。


 だけどもっと自分を抑えているのはアリサの方であった。


「もう少しだけ俺らの時間を作ろうか」


「ぅん・・・」


 2人は手を繋いで歩き、何処とも目的もなくダルカンダの街を歩いて廻った。


 道では子供達が家路に走っていく様子が見て取れた。



「また明日ね!今度はお前のウォーターボール躱してやるからな!」


「へぇーじゃぁ今度は頭からぶっかけてやるわ!」



 その会話に思わず2人は足を止めた。

 とてつも無く懐かしい感じが湧き上がり、アリサを見ると呟いた。


「やるか?」


「ふふっ、良いわよ」



 2人は商店街にあった噴水広場へとやってきた。時間が遅いためもう人通りは殆どない。


 5メートルほど離れた所で向き合い互いに構えた。


「あの時とは違うわよ!」


「言ってろ!俺もバケツはもう要らない!」


 少しすると噴水が止まり、これを合図に2人とも動いた。


 無詠唱で繰り出されるハイレベルなウォーターボール。

 だがやっている事は昔と変わらない。


 子供の水の掛け合いだ。



 一進一退の撃ち合いに噴水を挟んだ所で、2人同時に放ったウォーターボールが激突して辺りに水を撒き散らした。


 丁度噴水が飛沫を上げて噴き出し、相手が視界から外れた。


 するとアリサがウィンドアーマーで全身に風を纏って噴水を突っ切り、ウォータージェットを仕掛けてきた。


 突然噴水から出てきたのは想定外で、しかも勢いのあるジェットだ。


「クソッ!」


 紙一重で回避すると、そのまま空中にいるアリサに撃ち込む。


 パァァァン!!と言う音がして相殺されると、今度はアリサがユウキを見失った。


「あははは!そこね!!」


 ノータイムでアクアヴェールを発動させると、水の膜がアリサの背後に出現した。


「ここだよ」


 横からだった。


 ユウキはアリサが背後を守る事を予測して、側面から高速移動してきたのだ。


「チェック」



 そのままアリサを抱きとめると唇を合わせた。


「んぁっ」


 どれくらいの時間が経ったかわからない。

 ずっとこうしていたい。


 薄着の服は肌の感触が直接伝わってくる。

 深く、深く、もっと深くアリサを知りたい。


「んぁむっ、んっ」


 止まらない衝動が全身でアリサを感じたがっていた。


 アリサも同じだった。

 もう離さないで欲しい、ずっとこのまま居たい。



 だがその時間もやがて終わりを迎える。


「ぁんっ、もう唇が赤くなっちゃうわ」


「元々赤いさ、なら最後」


 んちゅ


「ぁぅ、んっ。もぅ・・へへっ」


 2人は満足して宿屋に移動を始めた。


 来た時とは違って、アリサが腕に抱きついてずっと一緒にいた。



「ルインは寂しがり屋だから私の事は気にしないで。

 でも・・・たまに私も寂しがり屋になるかも」


 それにユウキは優しく微笑んだ。


「もっと甘えて良いんだよ。俺もアリサに甘えるから」


 くちゅ


「んっ、もう・・・ばか」



 2人は1日の最後に知りたかった事をちゃんと互いに分かり合って、宿屋に帰った。


 遅い帰りに今度はルインさんがご乱心だったのは言うまでもない。


 だがアリサと2人その光景に微笑み合うのであった。




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