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ギルドの初任務

 次の日、天候に恵まれた初めてのダルカンダの朝、気持ちのいい気分で冒険者ギルドへと足を運んだ。


 依頼板に目を通して大凡の依頼難易度を見ていく。


 解体作業任務、大木輸送、王都護衛任務、魔物の素材採取、薬草採取。


「ブロンズとシルバーのラビット級任務が多いね」


 レナードの言う通りであった。

 ここにあるのは駆け出しでも可能な任務ばかりである。


「あぁ、こんなものなのか?」


「私達が異常な依頼を受けてきただけよ」


 アリサが言う任務は王都の特務で闇ギルドと戦ったり、地下ダンジョンで黒龍と戦ったり、獣人の戦争に仲裁だ。


 どれも通常考えられない事ばかりであった。


「ボクとしては外で体動かせるなら何でもいいかな」


「ルインはマグロか?」


「マグロもいいよ!」


「「そっちじゃない」」


 ツッコミ多数にガヤガヤしていると、ジャック達がギルドへ入ってきた。


「おはようごさいます。ジャックさん、カーミラさん、ナタリーさん」


「おはよう、朝から元気だな。それと呼び捨てでい良い」



 そんなやり取りをしつつ、何の任務をこなすか考えていると一つの疑問にぶつかった。


「この任務内容に7人って多くないですか?」


 アリサさんご明察。

 と言うか俺もそれに頭を抱えていた。


「それなら分散させましょうか?私は魔導師ですのでアリサさんと組めると嬉しいわ」


 このカーミラの提案で、修行も同時に行うとしてパーティを二つに分けることにした。


「ジャックと俺は組むから、レナードは魔導師組について貰えるか?ルインはこっだ」


「やったね!」


 ルインは嬉しそうにユウキに引っ付いていき、アリサはどこか不満そうにしていた。


 アリサの髪をかき上げると、オデコに軽く口付けをする。


「なななっ!もう!大丈夫ですよっ」


 額を抑えながら顔を真っ赤にして後ろを向いてしまった。

 そんな様子を見ていたジャックは微笑ましい顔をしている。


「俺たちの為にすまないな。少し貸してくれ」


「大丈夫です。それじゃ軽くこの依頼を受けますか」


 そう言って依頼板からちぎり取りカウンターへと持っていった。


 昨日の受付嬢とは違う人で、少し背の低い可愛らしい女性だった。

 そして依頼を受け取り中身を確認してギョッとした。


「あの、ごめんなさい。ギルド証は見える場所に装着して下さい。

 それと・・・大丈夫でしょうか?」


「ん?何か問題があるのか?」


 ジャックの問いかけに受付嬢は依頼書を手に取り、見えるように前に突き出した。


 総数12枚。

 ジャックもユウキが取る時よく見ていなかった。


 しかも内容は全て討伐系で2枚はベアが含まれている。


「ベア級4名いるから問題ないだろう。道中倒すからラビットとかの依頼も受諾する」


「ユウキは天然だからねぇ、仕方ないかなっ」


 レナードとアリサも頭を抱えていた。

 受付嬢は苦笑いをして口元がピクピクと震えている。


「ジャックさん達は良いですが、貴方達はギルド証を提示して下さい。

 先程言いましたが、腕または首に装着するのがセオリーです」


 言われて腕にギルド証をつけ直すと、受付嬢に腕を差し出した。

 そして僅かに魔力を通して内容を確認する。


 再度口元がピクピクしている。


「あぇっと、支部長を呼ぶので少々お待ち下さい」


 そう言って足早に去っていった。


「何なんだ?」


「「「さぁ?」」」



 しばらくして帯剣した若い男声がやってくる。


「ここの支部長だ。お前らが12枚も依頼を受けようとした愚か者か?」


「はい、愚か者です」


 ユウキの返しに半ば呆れた感じである。


「シルバーベア級なら問題ないが、ジャック達はボア級だ。

 どんな特務を遂行したか知らないが、死人が出るような受け方は承認しかねる」


 そして着いて来いと言いギルド支部の奥へと通され進んで行くと、やがて闘技場のような円形の何も無い場所に出た。



「お前らの力量を測るが、まとめてやるか?」


「パーティを二手に分けるので、代表で俺とレナードをお願いします」


「良いだろう、先ずはお前からだ。かかってこい」


 ユウキは素手を構えて支部長に相対した。

 武器を出さないが、ギルド証で格闘戦と記載されているのは知っている。


 そしてユウキは地を蹴ると一気に間合いを詰め、支部長の背後から裏拳を放ち外壁に吹き飛ばした。


 ガシャァァァン!



 もうもうと土煙が上がる中、辺りが静まり返る。


「れ?やっちゃった?」


 ゾクッ


「な・・・体が動かねぇ!」


 ジャック達が突然叫び出した。

 支部長を吹き飛ばした方向から殺意が満ち溢れていた。


「上々。悪くないがお前ら死ぬぞ?」


 支部長から溢れんばかりの殺意と魔力が首を締め付けてくる。


 だがしかし。


「バルトフェルド団長ほどじゃないな。あの人から比べたらそよ風だ」


 再度距離を詰めて支部長の眼前に姿を現した。


「チッ!」


 《斬光閃》


 上段から一気に振り下ろした刃は魔力を伴い、綺麗な剣閃が尾を引いた。


 支部長の先には地が切れ、その威力を窺い知れる。


 しかし、構えが長すぎて実践的では無い遅さだった為、ユウキはサイドステップで躱すとガラ空きの横っ腹を強打した。


 ズンッ!


「クハッ!」


 腹部にダメージを受けた支部長は、堪らず剣を杖にして膝をつく。


「勝負有りですか?」


「貴様、バルトフェルド団長と言ったな・・・」


「えぇ、あの人が一年間担任でしたから。

 ホームルーム中は常に殺気を当てられていました」


 それを聞いた一同はポカンとしていた。

 王都騎士団団長といえば、一介の冒険者などでは到底会う事も叶わない大物だ。


 辺境の支部長も同様である。


「馬鹿な、そこの3人もか?」


「なんとも無いでーす。それ位で気絶したら授業が受けられないからねっ」


 ルインの言う事はもっともだ。


 日常的になっていたので麻痺していたが、ジャック達の反応が普通なのだろう。


「チッ!お前らの依頼受領を許可する。

 ただしジャック達を殺してみろ?ギルドから追放だ」


 それにユウキは笑顔で答えた。


「勿論です。彼らは冒険者としても戦士や魔導師としても成長します」


「馬鹿らしい、好きにしろ」


 支部長は最後にそう言い残して闘技場を後にした。

 彼が何を見たかったのかイマイチ分からない感じで去ってしまった。


 残された7人も正式に依頼を受けるため、受付に戻る事にした。



 ユウキ、ルイン、戦士ジャック。

 アリサ、レナード、魔導師カーミラ、治癒師ナタリー。


 2つのパーティに分かれ、依頼を遂行するため出発した。


 その2時間後、討伐対象の部位をドッサリと持ち込み、ギルドが騒然としたのは言うまでも無い。




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