ホブゴブリン
ボストンとガルシアの会談から時は遡る。
ユウキ達は森でゴブリンに遭遇し、発見されていた。
ゴブリンは鎧と棍棒を使い、けたたましい音を鳴らす。
「グガアァァァ!」
2人を視認したゴブリンは。大声を張り上げながら突進してきた。
「アリサ!逃げるんだ!」
しかしアリサは腰が抜けて動けない。
「あっ・・だめっ・・・うごけな・・」
(くそっ!)
ユウキはゴブリンを観察した。
《点穴》で見ると右下腹部の魔力が弱い。
地面に足を突っ込むと、思いっきり蹴り飛ばした。
堪らずゴブリンは顔を覆い、勢いが弱まる。
《ファストブロー!》
一気に接近すると右下腹部に肘を打ち付けた。
ガンッ!という音ともに「グガッ!」とゴブリンから声が漏れる。
ゴブリンの鋼鉄の鎧はへこみ、内部にまでダメージを与えた。
しかし、ラピッドと違って吹き飛ばない。
足で耐えているのだ。
構わず回し蹴りを同じ所にぶちかます。
「とどけー!!」
再度ガンッ!!と音が響き渡り、そしてパキッという音が聞こえた。
鎧にヒビが入っている。だが、それだけだ。
ゴブリンがニヤリと笑い、棍棒を横薙ぎに振り回した!
ユウキは咄嗟に左腕を上げてガードするが、吹き飛ばされる。
「いつつ・・なんて馬鹿力だ。」
打たれた所は赤くなりジンジンする。
生来の耐久力の高さに助けられた。
(アホか僕は・・点穴で鎧の弱点を見たって鉄には変わらない。頭に一発入れればよかったんだ!)
仕切り直して再度ゴブリンに向かって俊足で迫る。
ゴブリンは目で追えず、焦って棍棒を上段から振り下ろした。
それを視認してサイドステップで躱す。
そして隙だらけの軸足に《足払い》をかける。
「これで、終わりだぁぁぁ!!」
《ダブルドローニング》
横に倒れるようにして中に浮くゴブリンを尻目に、思いっきり蹴り上げ、返しで顔面に踵落としを見舞った。
ズドォォォォン!!!
物凄い音とともにゴブリンは沈黙した。
「やったか!?」
ゴブリンは動かない。
ユウキはガッツポーズをする。
「いやったぁぁぁ!守れた!!今度は!!
アリサ!もうだいじょ・・」
アリサの方を振り向いてユウキは絶句した。
アリサの後ろに多数の魔力を感知した。
しかも1体や2体ではない。20体ほどだ。
その中の先頭に一際大きい魔力がある。
アリサが急に浮かんだ。
否、大きい個体に持ち上げられた。
「ガガガ、あの男が居ない時を待っていたが、いや何、ガキどもだけでいるとはな!」
そう言うゴブリンは体長2mほどあり、周りの個体とは一線をかした威圧を放っている。ホブゴブリンだ。
ユウキは怖じけず言った。
「・・なせ」
聞こえず、ホブゴブリンか聞き返す。
「うん?」
今度はよく聞こえる声で叫んだ。
「離せって言ったんだ!!」
ユウキは叫ぶと接近し、正面から足に全力で正拳を叩きつけた。
ドン!!と言う音が響いた。
しかし、ホブゴブリンは微動だにしない。
「ガガガ、貧弱なガキめ。身の程を弁えろ。」
そう言うと素手で横薙ぎに払い、ユウキを吹き飛ばした。
「ぐぅぅ・・違いすぎる・・」
20体はいるゴブリン、しかもホブゴブリンにアリサが捕まり、自分の攻撃は全然効いていない。
打開する状況がユウキには浮かばなかった。