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黒龍の魔力(1)

 目を閉じるとアリサの鼓動が響いてくる。


 そして全身を駆け巡る魔力の流れを読み解き、一つの始点を発見すると更に深く潜り込んでいった。


 そして現れたのは扉だ。


 ユウキと違うのはオレンジ色をした扉が一つ。

 黒い扉は見当たらなかった。


 扉に触れてみると、そこから鼓動を感じ取ることができる。

 そして扉からはオレンジ色の魔力が流れ出ているが、一緒に黒い魔力が漂っているのがわかった。


「あぁ、アリサの魔力に入り込んでいるのか。やっぱり創造器官が複数あるのは異常なのか?」



 ユウキがそんなことを考えていると、オレンジ色の魔力がユウキの周りに集まりだした。


 そしてユウキの魔力と合わさっていき真紅とオレンジの魔力が絡み合うように周囲を流れる。


「魔力同調?」


 それを彷彿とさせる現象に近かった。


 だがゆったりとしたその流れは今まで見たような強烈さはなく、互いに遊んでいるような感じであった。


 その中に入り込めない黒い魔力。


「そっか普通の人には馴染めないよな。黒龍」


 そしてユウキは黒龍の魔力を誘うように絡めると、オレンジの魔力も一緒に着いてきた。


「3人で遊ぼうぜ。お前は1人じゃないよ」



 すると先程まで一切絡まなかった黒い魔力が、ユウキとアリサの魔力に入っていき楽しそうに渦を巻き出した。


 暫くそんな様子を眺めて、ユウキは自分の魔力をそこから離してみた。

 すると残る二つの魔力は、互いにゆったりと扉の中へと戻っていった。


「もう大丈夫だな」


 そう言い残してユウキはアリサの深層から離れて行った。



 ユウキが現世(うつしよ)に戻ると、アリサに変化が訪れていた。アリサの魔力に漆黒の魔力が合わさり、今までより遥かに強い力を感じる。


「これは?力強いけど優しい。あの時の黒龍みたい」


 アリサの質問にユウキは優しく微笑みかけた。


「楽しそうだったよ。3人で遊んだらすぐに仲良くなった」


 周囲の人たちは完全に置いてきぼりである。

 そもそも魔力の創造器官に潜り込める者など未だかつて居なかった。



 この後にレナードの魔力へも潜り、同じように施すと特に問題はなさそうであった。


「ありがとうユウキ、黒龍の魔力が自分の魔力のように自然と扱えるよ」


「あぁ、俺のように暴走する事はないはずだ。レナードとアリサの魔力に結びついているからね」


 ユウキはそう言ってバルトフェルドの方へと向かった。彼の残滓も確認する必要がある。



「バルトフェルド団長、よろしいですか?」


 やや疲れた表情をしてバルトフェルドは同意した。

 ユウキはバルトフェルドの胸に手を当てるとその中へと深く入り込む。


「・・・扉は一つ。だけどこれはー」


 その扉は大分痛んでいた。所々剥離しており今まで見た中でかなり劣化しているのが窺える。


 ユウキはそっと扉に手を付けようとしたその時、悪寒が背筋を這い回り咄嗟に扉から手を離してしまった。


 オオオオオォォォォ・・・


 扉からは怨嗟の声が聞こえてくる。


「《ソウルイーター》とはこれ程のものなのか・・・」


 自分の魂をも侵食する諸刃の剣。

 正史が正しいとしたら初代発現者のデルタは、敵将のヴァルジェ大佐を執拗に追撃していた。


 最後は戦友と称えたが、果たして彼の心理はもっと別の危険な方向に向かっていたんじゃないのか?


「それより黒龍だな」


 様々な魔力が入り乱れて、とても黒龍の魔力の残滓を見つけ出す事は叶いそうに無かった。


 ユウキは自分の魔力を解放すると、黒龍に向かって問いかけた。


「黒龍、俺だ!出てきてくれ!」


 静まり返る中で、漆黒の魔力が姿を現した。


「汝は何者か?分からぬ。ここはどこだ?」


「ユウキ・ブレイク。黒龍の魔力を譲り受けたナルシッサ・ブレイクの子孫だ」


 だが反応は鈍かった。

ナルシッサの事も知らない様子であり、説明に困ってしまったが暴れる気配はない。


「その魔力に赤龍を感じる。我はお前に託したのか」


「あぁ、未来と共に俺達に託した。ここはお前の居場所じゃない」


 黒龍は先程の戦いを思い返しているようだ。


「ここは悍しい。怨嗟の轟きに絶望しかなく、お主の中に戻れるなら喜んで行こう」


 すると漆黒の魔力はユウキの中に流れるように吸収されていった。

 ユウキはそれを見届けると、早く立ち去りたい気持ちから現世に戻ってきた。



「バルトフェルド団長、ソウルイーターは危険です」


 バルトフェルドは何処か思いふけるように空を見上げた。しかし彼の決意は変わらない。


「知っているさ。だが必要な時がきっと来る」


 ユウキは固有血技を使うなとは言えなかった。

 それは彼自身が決める事であり、生涯背負う重荷である事も理解しているからだ。


「俺にできる事はフォローしますから、助けてと声をあげてくださいね」


 バルトフェルドにそんなことを言うのは母親位なものであった。


 久しぶりに聞いた温もりを受けて、バルトフェルドは優しく微笑むと騎士団に連れられて医務室へと運ばれていった。





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