表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/269

アリサの怒り

 もうもうと砂塵が舞い、ユウキのいた場所はまだ視認できない。


「ふむ、こんなものか」


 闇バルトフェルドは漆黒の魔力に覆われたまま呟いた。ユウキの状況は確認できないが、絶望的な状況である事に変わりはない。


「そんな・・・」


 誰が言ったわけでもなく、それは修練場を木霊する。



「バルトフェルド団長!やり過ぎです!」


 メアリー副団長が抗議しようと近づいた瞬間、メアリーの眼前の地面が抉れて静止した。


 驚くメアリーは団長を見て何かを言おうとした時、闇バルトフェルドが左手を突き出して漆黒の魔力を凝縮していく。


「何をするのです!」


 闇バルトフェルドは当たり前であるように告げた。


「闘争であろう」



 最初に動いたのはレナードだった。彼は即座にメアリーに対して《ディバインガーディアン》を展開した。


 だが、広範囲に使い更には複数回連続使用したため、光の粒子は形状を保てずに四散してしまう。


「クッ・・!」


 その時、闇バルトフェルドに照準された《ヒートエンドボム》が炸裂し、修練場全体を揺るがす振動が起きた。


 ズガァァァァァン!!


 けたたましい音と爆炎は辺り一帯を襲い、離れた位置からでもその威力の程が知れた。


 初めてアリサの上級魔法を見た騎士団員は、発動者を一目みて戦慄した。



 あの優しそうな顔立ちをした少女の面影は何処にもなかったのだ。


 周囲を20個の《ファイアーボール》が揺らめき、両手を前に出すと同時詠唱を使ったアリサの独自魔法、《ブラスタークラッシュ》を発動した。


 両手から激しい炎が闇バルトフェルドを襲い、20個の《ファイアーボール》が標的の周囲を高速移動する。


 そして拡散した炎が収縮されて、一点に集まった炎が一気に弾け飛ぶ。


 ドガァァァァァン!!


 《ヒートエンドボム》の上位魔法にあたり、アリサは20個の《ファイアーボール》を爆発に合わせて全周囲から襲うように仕掛けた。


「ユウキは・・あんたなんかに負けない!だから私も全力であんたを止める!」



 修練場は爆発による衝撃波で、外壁は崩れ落ち観客席の一部が焼失していた。


「クククッ・・・これ如何に素晴らしい。中断されてしまったぞ」


 爆発点からは闇バルトフェルドの声が響き渡った。


 そこにはユウキが纏う真紅のヴェールの色違い、漆黒のヴェールを纏ったバルトフェルドの姿があった。


「ユウキの力を使わないでくれるかしら?」


「はて?確かに彼奴は我等が龍種の力を行使していたな。擬態か?

 まぁ聞き出す前に滅びたがな」



 アリサは内心焦っていた。


 今の技が全力に近かったため、次なる一手は凡そ見当がついておらず万策尽きかけていた。


 だが諦めることはしない。

 それがアリサだ。


 アリサは腕を組み相手を威嚇するように問いかけた。


「そう言うアンタは何なのよ。黒龍なの?」


 その問いかけに闇バルトフェルドは不敵な笑みを浮かべた。


「我にして我に非。此奴は我が魔力を扱うには聊か未熟であった。

 故に御心も我に掌握されたのだ」


「でも本人とは似ても似つかないわね。もっと優しかったしトージを信頼していたわ」


 そう、地下ダンジョンで最初こそ闘争になったが、誰これ構わず襲うような奴でもなさそうであった。


 事実最初とこちらの素性が知れた時には、言葉で問いかけてきた。


「我は人など信じずトージなど知らぬ。仮に未来過去において信じたのであれば不可思議なものよ」


 どうやらトージと出会う前の黒龍と同じ人格のようであった。真龍はやはり人とは相入れない者であったのかもしれない。


「さて、茶番は終いだ」


 闇バルトフェルドはアリサに対して《レディアントブレス》の構えをとった。


 対してアリサは全力で魔法障壁を展開して迎え撃つ。



 再びの死の閃光。


(まだ終われない!ユウキは・・・まだきっと!)


 闇バルトフェルドの《レディアントブレス》とアリサの《魔法障壁》が衝突した。


 たが、先ほどのように衝突と共に砕けるようなことは無かった。

 アリサは黒龍から譲り受けた魔力を全開で使用していた。


 パキッ・・・ピキッ


 しかしそれでも虚しく、過酷な現実を突きつけてくる。

アリサの障壁は限界を迎えて尚も闇バルトフェルドはまだ十分な余力を残していた。


「ハハハッ!いいぞ主ら!」


(ユウキ!)


 バキンィィィィン!!


 障壁は惜しくも崩れ去った。



 アリサは死を覚悟していたが、目の前の光景に目を疑った。


 眼前でブレスは受け止められていたのだ。


 やがてブレスの猛攻が止まると闇バルトフェルドが怪訝な顔をして状況を整理した。


 何が起きていたのか。


 アリサに真紅の魔力でできた翼が優しく包容していたのだ。

 そして翼を拡げた主が闇バルトフェルドの方へ向かって咆哮を鳴らす。


「ガアァァァァァァァァ!!」


 《龍の咆哮》


 これにより周囲にいた騎士団は耳を塞ぎ、立っていられなくなってしまった。


「くあっ!なんだっ!」


 メアリーとマーカス副団長も耳を塞ぎ片眼を開けているが、咆哮にとても耐えられたものでは無かった。


 やがて鳴り止むと、その対象の全貌を見ることができた。


 それは確かにユウキ・ブレイク本人であった。


 だが纏う真紅の魔力には龍の翼がはためいており、迸る雷光がこの者に勝てると思わせる要素が何一つ浮かばない。


 そして上空から大きく翼をはためかせると、闇バルトフェルドに対して最終通告を下した。


「俺の女に手を出すな。それを返してもらうぞ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ