森の異変
自宅に戻ったボストンは、既に来客が来ている事に気がついた。
「ガルシア!着ていたのか。遠いところをよく来てくれた!」
ガルシアと呼ばれた男はボストンと同い年で40歳前半。髪は短く大柄で無精髭の強面だが、話すと好印象な人物だ。
「ボストン!」
そう言いながら2人は抱き合った。
離れると2人はテーブルについた。
「ボストン、連絡をくれたのに遅くなってすまなかった。東の帝国に行っていたので王都を三年も開けていたんだ。」
それを聞いて要領を得たように答える。
「冒険者は根を持たないから仕方ない。王都騎士や農民とは違うものさ。」
2人はニヤリと笑った。
するとガルシアは真顔になり言った。
「さて、手紙は読んだぞ。ホブが出たかもしれないって。
あれが出ると場合によっては、冒険者のシルバークラスが36人のアライアンス(連合)を組むほど強力になる。
2年半前に兆候があったなら、俺が1人来ても変わらないぞ?」
冒険者は主にブロンズ > シルバー > ゴールドと階級が上がって行く。
階級の大雑把な戦力はこのように示される。
ブロンズは獣人との戦闘など不可能で、雑務や弱い魔物の討伐がメイン。
シルバーは一対一から熟練なら多対一でも辛勝できる。
ゴールドはホブクラスと集落を単騎で殲滅できる。
ゴールドは規格外であり、世界でも数名しか居ない。
難しい顔をしてボストンも頷く。
「確かにそうだが妙なんだ。森でゴブリンを一体も見ない。」
それを聞いてガルシアは驚いた。
「何だって?それじゃギルドにも依頼が出せないじゃないか!」
「あぁ、証拠や実害がないからな。調査から金を出していたら村の金がなくなる。
俺が調べているんだが芳しくなくてね・・だから旧友の君に手紙を送ったのだ。」
納得したようでガルシアは息を吐いた。
「はぁ、なるほどね。それじゃまずは村長の所に挨拶にいこうか。
村民の旧友といえど部外者が勝手をしたら怒るだろう。」
ボストンは頷き、2人は席を立って外へ出た。
そして異様な気配に気がついた。森の奥の方から黒い煙が上がっていた。
ガルシアが怪訝な顔をした。
「なんだ?あの煙は。村でバーベキューでもしているのか?」
しかしボストンはふるえていた。
「この村は炎の扱いを禁止されている!あれは絶対何かあった!
あ・・あそこには息子達がいるんだ!」
「なんだって?!」と言うと、2人は森へ向かって走りだした。