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ダルメシア戦争の正史(4)

大陸の簡単なマップを添付します。

ユウキ達のいる現代マップの一部となります。


挿絵(By みてみん)



 学園長が戻って来ると席について紅茶を一飲みし、そしてユウキを見て問いかけた。


「それで答えは出たかね?」


 ユウキは考えた答えを述べた。


「騎士団を王都の防衛に充てて、騎士団長と義勇軍は攻勢に出た。

 騎士団長と義勇軍は帝国のヴァルジェ大佐を討った後に増援に駆け付け挟撃を図る。こんな所ですか?」


 レナードはやはりキラキラした瞳でユウキを見ていた。対して学園長は驚いた表情をしていた。


「悪くない戦略だと私は思う。だが正史はこう綴ってある。」


 学園長はどこが外れてどこが正解だったか。それを歴史の中で語ろうといい、ダルメシア戦争における最大の激戦となった『王都ダルメシア防衛戦』について語り出した。






 王都ダルメシア防衛戦の前日は天候に恵まれず、町民の不安をそのまま映し出したような空であったと言われる。


 その中で王都は絶対的な防壁があるため、籠城戦を取る方向で貴族を中心とした議会は進行していた。

 だが王や騎士団は籠城に納得しなかったが、王も敵戦力から籠城悪を説けずにいた。


 事態が変わったのは一方の報告。静まり返る議会に早馬が城に飛び込んだ。


 ダルカンダ陥落の報。敵将ヴァルジェ・サーマスが単騎で制圧との情報である。


 騒然とした議会に一人の男が名乗りを上げる。それは騎士団長デルタ・ガークスである。彼はこの凶変を好機と捉えた数少ない軍人であった。


 騎士団長は騎士団を王都の防衛に、自分は精鋭2,000を連れて帝国を討つと宣言。これを受けて王は義勇軍に対して教皇の進軍を阻むように指示した。


 トージは義勇軍を従えて王都の西側に軍を進め、騎士団長デルタは東のダルカンダへと急行した。



 義勇軍は結果的に撤退させる事に失敗するも、戦況を維持する事ができた。トージの《光の翼》をもってしても教皇の《結界》を破壊するに至らなかったのだ。


 参戦した義勇軍の手記によると、戦いは王都西側に10kmほど行った平原で鉢合わせ的に戦闘が開始された。


 トージが魔力を全力解放した姿は天使のように翼が大きく輝き、その表情は相手を凍てつかせる修羅であったとある。


 誰にでも分かるほど強力な魔力を前にして、教皇は《結界》対象を最小限に抑えて全力でトージの斬撃を防御した。


 最大限に発揮された《結界》の脅威をこの時初めて世に知らしめたが、それはもはや伝説となった。


 先の戦いで渓谷を作るほど高威力の斬撃を数度見舞った後、教皇の結界に亀裂が生じた。義勇軍はこれに歓喜した瞬間、絶望の淵に叩き落とされる。


 結界は即座に修復され、聖騎士隊からは上級魔法を幾度となく見舞われた。ここで全滅しなかったのは主にナルシッサの反魔法とトージの《ディバインガーディアン》による物であったとされる。


 双方死力を尽くすも決定打にかける中、闘争は一週間をかけて断続的に行われた。そしてトージの判断で一時王都へと撤退した。



 この一週間と言う時間でダルカンダへ向かった騎士団は、帝国兵力を削ぐ事に成功する。


 ダルカンダに到着したとき、局地的な豪雨に見舞われていた。

 騎士団はダルカンダの正門前で待機すると、南側の通用門よりデルタ騎士団長が単騎で突入する。


 正門に騎士団を確認した帝国は、これを迎え撃つべく籠城戦を決行。しかし籠城には全兵士が城壁に集まる事はない。


 デルタ騎士団長は街中で出会う敵兵を、豪雨に紛れて着実に数を減らして行った。


 ヴァルジェ大佐がなぜ気が付かなかったのか?

 一説によると正門前に整列する騎士団が全てと先入観を持ち、連絡の遅れは豪雨によるものと考えていたためとされている。



 半日経っても騎士団が動かない事に疑問を持ったヴァルジェ大佐は防護壁から騎士団を確認した。だが街中に異常な魔力を感知する。


 そちらに目を向けるとヴァルジェ大佐に向かって家屋と思われる何かが飛来したと言われているが、それが何であったかは定かではない。


 《エア・ドミネーション》で飛来物を粉砕し、開戦の合図が宣告された。


 それと同時に騎士団は突撃を敢行。


 だが街中のデルタに手を下せるものは居なかった。正確にはデルタの周囲には何も残っていなかった。


 《ソウルイーター》で倒した敵兵の魔力を吸収し、ストロングを用いて人外の力を得ていたのだ。


 ストロングはデルタが編み出した魔法であり、その燃費の悪さから彼の固有血技がないと実戦では使い物にならないと言うのが定説である。



 デルタはヴァルジェ大佐と相対し、激闘の末ヴァルジェの魔力が尽きかけた段階で撤退を宣言し、王都へと退却した。


 騎士団長録によると、この戦いで一般兵が戦いについてこれず周囲から魔力が得られなかったため、魔力不足による撤退である事が分かる。


 結果的に指揮官を落とせなかったが、3万5000の兵力は騎士団の怒涛の奮戦により1万にまで数を減らす。



 帰還したデルタ騎士団長と義勇軍は共に王都議会へ報告に向かった。王都議会議事録より戦果の詳細が裏付けとなっている。



 だが戦力は削いでも主戦力はそのままの状態となり、さらに事態は悪化の一途を辿る。

 双方が『敵の敵は味方』として、一時的に帝国と聖都が共闘を結んだのである。


 ただでさえ脅威であったヴァルジェ大佐に《結界》の恩恵まで受ける事により、王都は次の戦いが最後の砦となる事は容易に想像できた。



 作戦室にはダルメシア王、デルタ騎士団長、トージ、ナルシッサと副団長達が集めらる。


 この会議で王の《人心掌握》を使用して教皇またはヴァルジェを無力化・裏切りさせる案が提案された。

 だが行使するために王が直接前線に出る必要があり、さらに教皇の結界をすり抜けるか不明であると言う理由で却下された。


 最終的に内容を明かせないが時間を稼いで欲しい。と言うトージを信じ籠城戦に切り替えることとなった。


 早い話が手詰まりで藁にもすがる思いと言う事である。

 両軍は王都の突貫作戦による回復を待ってから、ダルメシア防衛戦で最後の戦いを開始した。


 時は突貫作戦より1ヶ月、最後の夜が明けた頃に開始された。


 王都は最大限の魔法障壁をノーザス・バレルを筆頭に行われた。何故かノーザス氏の部分は大抵隠されており、下級騎士の家族に宛てた手紙から判明する。


 開幕は連合軍の魔導師部隊による上級魔法が、王都上空を埋め尽くすように炸裂された。

 これに耐え切ると障壁を崩せないと判断し、物理的な城門の破壊工作を開始。


 双方矢が乱れる中で破壊工作は難儀し、持久戦へと持ち込まれる事になる。



 状況を覆したのはデルタ騎士団長である。彼は前線にヴァルジェ大佐を確認すると城壁から飛び出して彼を討ちに向かった。


 だが《結界》と《エア・ドミネーション》の両方を持つ相手に苦戦を強いる事となる。

 トージとナルシッサはデルタの事を知ると後を追いかけて参戦し、そこは誰にも手がつけられない激戦地と化した。


 帝国兵の手記によると、地は豆腐の様に抉れて岩石は竜巻により高速で入り乱れ、明暗も分からない状況であったとその凄まじさが克明に記録されている。




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