獣人ゴブリン
岩の落石事件から2年半が経過した。
ユウキとアリサは8歳になり、基礎鍛錬のおかげでだいぶ様になってきた。
ユウキとアリサ、ボストンは森に入っていた。
猪のボアがユウキに突進してくる。
ユウキはサイドステップから横に拳を振った。
直撃を受けたボアは横にグラつき、図ったように地面が突き出してボアを突き上げる。
初級土魔法の《グレイブ》だ。
ユウキは跳躍すると、グレイブごとボアに踵落としを見舞った。
ユウキが言った。
「後ろにもう一体!」
アリサは手を後ろに突き出した。
その他には魔法陣が展開されている。
《ウオータースプラッシュ!》
初級水魔法だ。
ほぼノータイムで水流が一閃し、後方のボアを押し流した。
《ファストブロー!》
一気に距離を詰めるとそのままの勢いで肘打ちで強打する。
それを警戒しながら見ていたボストンが言った。
「・・2人とももう大丈夫だな。これからは森で自己鍛錬する事を許可する。
俺が不在の間も奥に入らなければいいぞ。」
それを聞いて2人は目を輝かせた。
「「ありがとう!」」
ボストンは頷き、来客の予定があるため言った。
「今日はもう戻ろう。これから用事があるんだ。」
「それなら僕たちだけでもう少し続けてもいい?」
ボストンは少し考えた。
「遅くならなければ良い。夜になると狼のワイルドウルフが出る。
あいつらは集団で行動するし、狩られる側に回ると非常に危険だ。
それまでには絶対森を出ろ。」
それを聞いてアリサが答える。
「分かったわ!実戦でなければ学べない事もあるから嬉しい!」
こうしてボストンは森を後にした。
「アリサ、さっきの連携は中々だったね!」
アリサはニパッと笑い「当たり前!」と言った。
「このまま真っ直ぐ行くとボアとラピッドが居そう。向かおうか。」
そう言い2人は警戒しつつ少し奥へと入って行った。
しかしこの時ユウキは慢心していた。
ボアの魔力反応に近づいて行くと、突然その反応が変わった。
アリサを手で静止させると、人差し指を立てて口に当てた。
それを見て頷き、2人はゆっくり腰を落とす。
目を凝らすとボアが動いていた。
否、正確には引きずられていた。
その先を見ると、120cmほどだが筋肉質で鋼鉄と革で出来た鎧を着た獣人ゴブリンが居た。
右手には無骨な棍棒を持っている。
(こんな村の近くにゴブリンが?
アリサ、危険だから排除しよう。)
それを聞いたアリサは驚いた。
(流石に危険だわ!戻ってボストンさんに報告すべきよ!)
ユウキは考えを改めた。
(こめん、調子に乗っていたかな。ゆっくりと戻ろう。)
そして振り返り、中腰のまま移動を開始した。
その時、2人からさほど離れていない場所でラピッドが跳ねた。
ゴブリンに気を取られて全く気がつかなかった。
音に気がついたゴブリンがこちらを見た。
アリサから自然に出る魔力が視認されていた。
「グガアァァァ!」
雄叫びをあげると、持っていたボアを離して棍棒を自分の鎧に何度も打ち付けた。
辺りにはガン!ガン!ガン!とけたたましい音が森中に響き渡った。