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第1回人獣会談(3)

 なにが起きたのか。


 それは会談が始まり最初の闘争経緯を説明していたときに遡る。

 この時王からアリサの首飾りを通じてユウキに念話を投げかけてきた。


『ユウキ・ブレイク。この場において話す事が難しい事案がある。』


 ユウキは先日の考察を踏まえておおよその見当がついていた。この場に居る人物で有力者はバルトフェルド、ノイント、ジーザス。


 消去法で考えると一番危ういのはジーザスである。


『ご退場願いますか?』


『話が早くて助かる。』


 この時の念話は王の固有血技である《人心掌握》の発動で魔力をごまかしていた。


 詳細な流れを知るには点穴などの固有血技を有するものに限定される。ノイントは気付いていたようだが黙っていてくれた。


 それどころか、どこか浮ついた様な感じが見受けらる。


(あの人もなにを考えているのやら)


『レナード、ルイン、これからちょっと荒事が起きるぞ。』


『んっ、ボク達はどうすればいいの?』


『近衛兵が動くけど防衛のみで構わない。』


『了解!アリサはどうする?』


『裾を引っ張っておいてくれ。暴れたら俺が対応する。』



 こうして先程の荒事へと発展した。


 結果としては獣人排除派筆頭のジーザスを会談から退場させ、過去の経緯をスムーズに説明する事ができる。


 それぞれが再度席について話の続きを始める。意識を手放し伸びているジーザスは、近衛兵に連れられて医務室に運ばれていった。


「さて、獣人諸君すまなかった。この場に不要な者がおったが、近衛兵長という要職上不参加の命令に納得をしなかったものでな。」


 王が簡潔に先程の事情を説明すると、グライスたちは納得したように頷いた。


「でもあれは何処かで精算しないと尾を引きますよ?」


 ユウキの問いかけは最もであった。彼がいる限りこの後の行動にも支障をきたすことになる。



「問題ない。彼奴は今日を持って暇を言い渡す。

 理由は近衛兵長としての力量不足と国家転覆。十分だろう?」


 ユウキはため息を吐いた。


「それならダルカス大森林の獣人討滅戦と時にやっていれば良かったでしょう?」


「うむ、本会談の裏の本題だな。」



 ユウキは先日行き着いた考察を踏まえて王に問いかけた。


「レクサスの領地への射撃、グライス達の所に魔法妨害、グロッサムの所は防護策の倒壊。これらは全て魔族の関与を疑っています。」


 魔族と言う単語で王の眉が吊り上がるのを確認した。やはりここがキーポイントとなっている様なのでもう一押し加えることにした。


「更にその前に遡るとダルカス大森林獣人討滅戦は、城下町の内部強化、闇ギルドの獣人への警告、団長クラスの不参戦、追撃をしなかった事が疑問に残ります。」



 そこまで聞いてダルメシア王、バルトフェルド、ノイントが驚きをあらわにした。バルトフェルドが思わず聞いてしまった。


「お前はどこでそれを知った?」


 ユウキはバルトフェルドの方を向くと、簡単なこととばかりに答えた。


「獣人、人族双方の当時を知る人達から情報を集めて、自分の知る情報とマッチングしました。」


 それは簡単なことではない。知り得る人間を特定して情報を聞き出すことは勿論、答えに行きつく前提の知識が必要となる。


 ユウキは一年間王都に滞在して、それを知ってしまったのだ。


「ダルメシア王、討滅戦は王都近郊の魔族の排除を目的に実行されたのではないですか?それも強硬派と穏健派の間に揺れ動いた状態で。」


 王は腕を組んだままため息を吐いた。


「その通りだ。ユウキはワシが穏健派についていたのはどこで知った?」


「闇ギルドの警告。あのギルドを裏で動かせるのは貴方しか居ない。」


 王は両手を挙げると降参したと告げた。



「20年ほど前に遡る。ジーザスが頭角を表してのし上がってきた頃から様々なことが闇ギルドから報告された。」


 王の話によると城下町で不審な殺人や拉致が相次いだようだ。拉致されたものは今だに見つかっておらず、その中には王政を支える貴族も含まれたという。


 それは討滅戦後も続き闇ギルドと騎士団の強化に繋がったが、便乗した賊が大量発生し被害を抑えることに苦慮した。


 その被害者にルインの両親も含まれていた。


「時期がジーザスと重なるのは引っかかりますね。レナードは生まれる前のことだから分からないか。」


「うん、ただ父上も母上も王政に仕える兄上の事は良く聞かされたよ。

 幼少から武芸に長けて人より貪欲に上にのし上がろうとしてたって。」


 ユウキと王は互いに考えていた。彼が何かを知っているのか、はたまた人格を奪われた状態にあるのかを。


「ダルメシア王、この事は保留にしましょう。とりあえず今後の方針は先程の内容で宜しいですか?」


「あぁ、暇をと言ったが投獄も検討しよう。その事についてだが、ユウキは他国に赴き外交を計らってもらえないか?」



 この申し出にはユウキも驚いた。それが出来るのかも含めて王に返答しようとした時、ダメ押しをしてきた。


「君の友人も構わない。外の世界を見て回るのだユウキよ。お前はきっと英雄トージと同じ道を進むのであろう。」


 ユウキは悩んでいた。


 この世界で表に出された歴史は人族に一方的な部分が多い。その裏側を言っていいものなのかどうか。


 だがこれからのことを考えると歴史の裏を知っておいた方が良い。


「ダルメシア王・・・俺は、ブレイク家は英雄トージと密接な関係にあります。ダルメシア戦争時にトージの参謀としてナルシッサ・ブレイクがついていました。」


「知っておる。歴史を学んだ者であれば一度は聞く名だが、直系か?」


 ユウキは地下ダンジョンの書斎に記された歴史の1ページを、彼らと共有するため話し始めた。



「これは地下ダンジョンに入った時に遡ります。」




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