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王都調査隊

 翌朝、朝日が昇り始めた頃にユウキ達は王都に向けて出発の準備をしていた。


 他の者達は昨晩の追悼夜会で遅くまで騒ぎ倒していた事もあり、就寝の真っ最中である。


 ユウキの周りで小さな炎の灯が近くを照らして、風でチロチロと揺れてはまたピンと立つ。


 ユウキは灯の中でゴブリン、リザードマン、サウスホープ村民のそんな姿を一様に眺めて頬を緩める。だか直ぐに表情を引き締める告げた。


「彼らは乗り切った。昨日の夜会は種族問わず心の底から場を楽しんでいたからね。

 次は俺らの番だ、行くよ!」


「オウ!王都までは1時間ほどか?」


 サウスホープから王都ダルメシアまでは街道沿いで大凡100kmほどあるが、彼らの速度なら1時間ほどで着いてしまう。


「うん、今からいけば丁度7時には着くから、城までの移動を考えると丁度いいかな。」



 それに同意すると、ユウキ、グライス、レクサス、グロッサムは森の外へ向かった。


 森から出るとサウスホープ内に出て、サウスホープの正面口から街道沿いに向かおうとしたところでゲートの下に人影が見えた。


 それも一人や二人ではない。皆の表情が強張り臨戦体制を取った。



「待たれよ。王都騎士団副団長メアリー・カイサルにある。まずは敵意がないことを知らせたい。」


 ユウキが代表して答えた。


「俺はユウキです。事情はご存知の様で?」


「あぁ、君が学園の人かな?今回の任務はサウスホープ村民の安否確認と被害状況の確認だ。

 そちらの御仁達は王都へ向かわれるのであろう?」


 ユウキが頷くと、メアリーは軍令をしてグライス達に向き直った。


「ダルメシア王の名の下に。

 貴殿らの集落並びに村民への攻撃は一切行わない。加えて有事にはサウスホープ村民らと共に防護対象であると告げよう。」


 グライスは眉根を寄せた。どこまで信じて良いのかわからないが、結束部隊を相手にするほど馬鹿でもないであろうと考えた。


「今は時間がない故信じよう。」


「今はそれだけで十分です。」


 そのやり取りで会話が終わったと感じたユウキは、メアリーに居場所だけ教えた。


「サウスホープ村民の大半は森で休息をとっています。」



 しかし、いきなり王都騎士団が森に入ることで言葉もなく闘争に発展する恐れがあった。


「族長達に知らせた方がいいかな?このまま行ったらやっぱりマズくない?」


 グライスは少し考えた後にダンゾウを呼び出すことにした。この中で一番足が早いのはレクサスなので彼が呼びに行くことになった。



「メアリー副団長、差し支えなければ任務内容を伺っても良いですか?」


 待っている間暇なので少し話をすることにした。


「うむ、内容は先程の通りだが重要なのは真に和解した事を確認すること。」


「なるほど、やはり人族もピリピリしているのですね。これから連れてくる獣人はゴブリンの族長です。」



 会話をしていると森の方からレクサスがダンゾウを連れて帰ってきた。流石の速度である。

 ダンゾウの他にノーデストも連れてきた。


「あれ?ノーデストも連れてきたんだ。」


「なに、リザードマンもおるからやはり同族の指導官が一緒にいた方が良いであろう。」


 流石は部族を束ねる者である。浅薄そうである彼だが、意外にも色々な事をしっかりと考えて行動している。


「ダンゾウ、ノーデスト、この人族は王都騎士団の副団長だ。」



 ユウキが騎士団の目的をざっくり説明すると互いに目配せをして挨拶をした。

 今回の闘争で村に被害がない事、それと和解の真意を探りにきただけで戦う意思はないことを素直に受け入れた。


「ゴブリンが将で族長のダンゾウである。我輩が引率を手引きしよう。」


「リザードマンのノーデストだ。不用意な行動には気を付けてもらうぞ。挙動に何かあれば次の瞬間には灰になると心得よ。」



 2体の獣人はネームドである。一介の兵士が集まったところで彼等にさえ勝つことは至難である。

 それを察した兵士たちは縮こまった様子であるが、メアリーだけは違った。


「承知した。だがそちらも行動には気を付けて欲しい。私一人でも場を乱すことは容易であると伝えておこう。」


 ふぅとため息を吐いたユウキは各々に告げた。


「戦うわけじゃないんだからもう少し気楽に行きなよ。それじゃ俺たちは行くからね。」



 そう言うとそれぞれが全力疾走する為に魔力を解放した。


 グライスは真・ストロングを使い青白い輝きを見せた。

 レクサスは俊敏の軌跡を発動させて黄色く輝きを増す。

 グロッサムは巨体から蒸気が吹き出し、魔力を肉体強化へと転じていく。


 最後にユウキの瞳が真紅に輝きを増すと、全身から真紅のヴェールが溢れ出して包み込んだ。



 それを見ていた騎士団員が皆一様に後ずさり、中には尻餅をついたものもいる。


「うぐっ!これほどとは!」


 ユウキがそれを一瞥して「戦闘時はこんなもんじゃないよ?」とか言うものだから、冷や汗ダラダラである。



「それじゃ行こうか。」


 ガンッ!と音を立てて地面を蹴り飛ばすと一瞬にして彼らは見えなくなった。

 後に残されたメアリーは流れる汗をそのままに一言呟いた。


「団長も化け物だが、奴らはそれと同等以上だな・・・」



 尻餅をついた団員を尻目にダンゾウも頭に手を当てて呟いた。


「そんなんでお前ら大丈夫か?」


 乾風が吹いて誰も何も言わないサウスホープの正面玄関口は長閑な農村へと戻った。



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