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反省会

 日が傾きかけた頃、ゴブリンの集落では夜会の準備で慌ただしくなっていた。


 そんな中部族長達は特に手伝うこともなく、それを眺めていた。



 ゾゾとスズはレクサスに槍で貫かれて瀕死の重傷を負っていたが、ユウキの回復薬で延命し《龍の囁き》を浴びる事で完治していた。


 だが傷は残ってしまった。


 ゾゾは「これぞ戦士の勲章!」と豪語して見せびらかしていたので、グライスの巨碗で一括されて半刻ほど伸びていたが誰にも気にされなかった。



 しかし女性であるスズはそうもいかないようで、リンが付き添い慰めていた。


 だが元々可愛いリンをライバル視していたスズにとっては逆に難しいところであった。


「スズはお姉さんだから大丈夫!みんな戦場で鼻息荒くスズに従ってたよ!」



 それを聞いてユウキはモロコシで出来たコーヒーを吹き出してしまった。


 ユウキはリンの部隊の男どもが鼻息荒く士気を高めていたことを、戦場を見たから知っているのだ。



「ユウキ様どうしたの?あたし何か変なこと言った??」


 助けを求めるようにボブを見るが、全く見当違いの方を向いて、問題ない部下を呼び出すとアレコレ言いつけていた。


 完全に現実逃避だった。



「ダンゾウ、お前なら分かるよな?」


 ユウキは魔力を解放して真紅の瞳でダンゾウを見つめた。


「ユウキ様、我輩には何のことやら。」


(こいつ!腹の据え方を覚えたな!)


 ユウキは魔力を引っ込めるとため息を吐いてリンを諭した。



「鼻息荒いのはリンの部隊だぞ。それにスズ、傷のことは癒しきれなくて申し訳ない。嫁入り前の娘に・・」


 それを聞いてスズがバッと立ち上がると、直角に頭を下げた。



「助けて頂いてそれ以上を・・ごめんなさい、アタイはユウキ様に何も返せていない・・」


 ユウキは座ったまま顎に手を置いた。崩した姿勢が優しく諭すように見えるためだ。



「スズはよく魔法の勉強をしたね。実戦で地形が変わるほどの魔法を行使出来る魔導師はそうそう居ない。」


 これは事実だった。


 無詠唱を習得し魔力操作を柔然に行わなければできない芸当だ。これが出来るのはアリサ以外は恐らくスズだけだ。


「それに傷が原因で嫌になるような奴とは付き合うな。お前はそれを差し引いても余りある美しさがあるぞ?」


 それにスズは呆然としてしまった。名付け親であり敬愛する師に美しいと言われて、得意とする魔法を褒められたのだ。


 スズはもじもじしながら言葉足らずな感じで森の方に走って行ってしまった。


「ユウキ様は、あえ〜!!りがとうございます!」



 みな無言である。ユウキは両手を上げて一言。


「何なんだ?」


 グライスが「さぁな?」とはぐらかしていた。リンが慌ててスズの後を追って行ったのを確認すると、ボブに問いかけた。


「俺はボブとゾゾの戦闘を見ていないけど、どの位強くなったんだ?」


 ボブは鉄壁を誇るソリッドフィールドがノーデストに破壊されてしまった。初戦では圧倒的な守備力で勝利に貢献したが本人は納得していない。


「守備力に関して自負するところはありますが、ノーデストに破られました。まだまだです。」


「ちょっと何かやってみて。」


 ユウキはボブにそれを示す技を使うように促した。そしてボブは《ソリッドフィールド》を自分に展開した。


 それをみてユウキは素直な感想を漏らした。


「綺麗だね。その固有血技はいつ発現したの?」


「ユウキ様より命を受けた直ぐ後になります。

 リンとグライス様を相手に防戦訓練を行なっていた際、《ストロング》の脅威から死にかけて発現しました。」


 一体どんな訓練をしたら死にかけるんだか。過酷だったのは想像に難しくないのでユウキは考える事をやめた。


(いや待てよ?リンも固有血技を死の淵で発現、ルインも生きる為に発現、点穴もナルシッサが聖都に奇襲を受けて発現。)


 固有血技って発現条件があるんじゃないの?と言う疑問が湧き出し、突然メモを取り始めた。


 それを見ていた者は何も言えず筆か止まるのを待つしかなかった。やがて手を止めたユウキが族長達に告げた。


「よし、闘技場に行こう。」



 そしてボブとゾゾ、ダンゾウを引き連れてグライスと共に、ユウキはゴブリン集落にある闘技場へと移動した。



 闘技場についてユウキは中央に立つと、族長三体に向かって言い放った。


「全員かかってこい。」


 ユウキは魔力を発動させずに告げると、右手を前に出して手をクイッとさせた。


 一年前の旅立ちを思わせる何かがあった。


 だが前回と違うのは、ユウキを敬愛し尊敬している。そして全幅の信頼により全力で向かうことができる。



 だがグライスも指を鳴らしてリングに上がってくる。


 コイツは何を勘違いしているんだ?


 そう思ったらユウキの隣に並び、ボブとゾゾとダンゾウに向いて同じように右手を突き出した。


「死ぬ気でかかって来い。ストロングなしで何処までいけるか見てやる。」



 先程本気でやり合ったから、ユウキと戦う事は無いようだ。



「魔力とストロングを使わないので?

 先程の戦いは凄まじかったですが、流石に無傷とはなりませぬぞ!」


 ダンゾウが告げると皆が構えた。



 正直に言うとダンゾウが一番戦闘力不明なのだ。


 恐らく一年前の模擬戦での結果を考慮すると、五族長の中でもトップクラスだ。


 空気がピリピリとする。模擬戦とは思えない殺気が辺りを埋め尽くし、族長達からは魔力が溢れ出る。



 ボブが開幕を告げた。


「《ソリッドフィールド》!!」




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