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氷結時代の終わり  作者: 六角光汰
第三章 ラロス系の擾乱
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「いや、私がいいたいのは、前回の相転移爆弾を使った攻撃が、今回の結果を生んだのではないかとうことだ」

「ヤイサイダ評議員、発言の意味がはっきりとわかりません」

 そうルビアが言うと、ヨアヒムが続けて発言した。

「要するに、相転移爆弾を打ち込んだことが今回の白色矮星という報復を招いた、ということでしょうか」

 やっと発言の意味を汲んでもらえたヤイサイダは満足げな顔をしていた。

 交通局長のケオマ・ロカイが手を上げて発言する。

「しかし、それだと相転移爆弾を使った我々が悪いのではないかと問うていることになる。まさかヤイサイダ評議員はそういう意図をもっていないとは思いますが」

 ヤイサイダ老人は手を上げずに発言した。

「そのまさかだ。敵は怒っているのではないのか。我々の想像もできないような方法で攻撃してきた。しかも、白色矮星を送り込んでくるなんて文明の総力を使っただろう。余計なことをしれくれたのではないか?」

「余計なことですって?」

 ルビアが立ち上がったところで首相が発言した。

「ルビア君、座りたまえ。確かに敵を怒らせてしまった可能性もある。もしそうならあの攻撃には意味があったということだ。損害がなければ怒ることはありえない。そして、相転移爆弾を使わなかったら白色矮星の出現はなかったかもしれない。

 しかし、いずれにせよ、我々は攻撃を受け続けてきた。反撃する権利は十分ある。いや、反撃しなければならない。私は相転移爆弾の使用には賛成する。これからもワームホールが開いたら使用することを推奨したい」

 その言葉を聞いて文化局長は「ふん」と言ってそっぽを向いた。

「それで」と発言したのは交通局長のケオマ・ロカイだった。

「次に重要なことは、白色矮星対策ですが……。一番単純な発想でいくと相転移爆弾で吹き飛ばすことでしょう。しかし、無数の破片に分裂したり大量のガスやプラズマがラロス系を襲うことになります。ラロス系の近くで、小規模とはいえ超新星爆発を起こすわけにはいきません。

 次に考えられるのは白色矮星の軌道を変えること。しかしラロス並の質量があったり五万度という熱を考えるとそれは不可能。推進器もつけられません」

 そういえば、とルビア・ファフは思った。自分が深宇宙探査局長に就任して評議員になる前、現交通局長のケオマ・ロカイが深宇宙探査局長だった。どおりで専門家のような発言ができるわけだ。

 場がしばらく沈黙したが、我慢ができない様子で司法局長のルミノア・ターナが発言した。その隣に座っているルビア・ファフに不自然な横目で睨まれていることにも気がつかずに。

「我々のレザム星はラロスを周回している。そしてラロス系を含んだ銀河は二億年で一周している。そしてこの銀河そのものも隣の巨大銀河の方向へ移動している。それを考えるとレザム星は実に複雑な動きをしている。なのに、二百日後の位置をピタリと当ててそこに向けて白色矮星をぶつけてくる。ヨアヒム。そもそもこれは難しいことではないだろうか」

 問われたヨアヒムは即答した。

「いえ、それほど難しくはありません。ご存じのとおり、宇宙空間には絶対座標はありませんが、ある座標を仮定して未来の目標の位置を計算することは可能です。

 今回の場合、ワームホールは銃身に当たるわけですが、弾の速度と銃身の照準を二百日後のレザム星に向けるのは比較的簡単でしょう。

 難しいのは、白色矮星の調達法です。どんな方法を用いたのか。こればかりは私にはシミュレーションできませんでした。また、光速の二%で移動する白色矮星の前方にワームホールを開いたとしても、あれだけ巨大な物体が通過するまでトンネルを維持するには、どれだけのエネルギーが必要か計算できません。そもそも白色矮星は現在の速度で飛んでいたのか、それとも加速したのかも不明です。もしかするとワームホール内で加速されるのかもしれませんが、私にはわかりません」

「ヨアヒムでもわからなかったりするのか」

 ルミノア・ターナが溜息をもらし、テーブルにひじをついてあごを手に載せた。

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