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氷結時代の終わり  作者: 六角光汰
第三章 ラロス系の擾乱
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 ラロス系全体の哨戒活動は防衛局だけでは人員が足りず、深宇宙探査局も協力していた。ライル・ニアーム局長が自殺した後釜として就任したのはライン・マクイエという男だった。首相やヨアヒムから局長としての権限を説明され、情報アクセスキーや、いくつかの政府専用コードを渡されたのもつかの間、すぐに十一面体の中にある深宇宙探査局に、数十人の部下と一緒に泊まり込むはめになった。哨戒活動とあわせて、今のところ深宇宙探査局が最も関心を寄せているのは例のガンマ線だ。どんな影響を系内にもたらすのかを予測したり、その振る舞いを観測したりしている。

 防衛局長のルビア・ファフは、評議会でライン・マクイエと初めて顔を合わせたとき、さんざん昔のことを言って驚かせてやろうと思った。おまえをひらの職員から系外惑星研究部長に抜擢してやったのは自分だと。

 それに、敵の存在が公になったいま、自殺せずに整形して生きながらえていることを隠しておく必要はもうない。自分の部下が生意気に見えてしかたがない一方で、ルビア・ファフは防衛局長という現在の役職に満足していた。こっちのほうが明らかにやりがいのある仕事だったからだ。

 例のガンマ線噴出事件があってから、ヨアヒムはワームホールの研究に没頭していた。欲しかったデータを手に入れ、ワームホール探知プログラムを開発した。そのプログラムを送り込んだ哨戒艇がラロス系全体を網羅し始めたとたん、新たなワームホールの前兆が探知されたのだ。

 前兆が現れたのは前回とは違った場所で、ラロス系の黄道面から仰角八十度、恒星ラロスから〇・八光年の距離があった。ラロス系を黄道面から眺めての上部と下部の情報は深宇宙探査局が管轄していたから、最初に異変に気がついたのはライン・マクイエの部下だった。

 近くにいたレイスタニス級の哨戒艇から、リアルタイムでアラートが届いたとき、ライン・マクイエはすぐに防衛局とデータの共有を開始した。十一面体の地下にある薄暗い防衛局内でも唸るような低いアラート音が鳴り始めているはずだった。

 ワームホールの探知という仕事を終えたら、次は戦力の移動と配置という段取りになる。それは防衛局の専門だ。ワームホールは一ヶ所だけに出現するとは限らない。ライン・マクイエは部下に情報収集を続けるように命じ、今後の本拠地となる地下へ向かった。

 低音で響くアラートが鳴り始めたとき、ちょうど防衛局には首相のイーアライ・クールグもいた。例によってルビアとヨアヒムと三人でひそひそ話をしていた。そのうち、防衛局長官とヨアヒムが話の途中にもかかわらず咄嗟に立ち上がり、緊急オペレーション用のシートについた。近くには、いまや長官の側近となったバリー・セナジもデータを睨んでいる。

 中央のホログラムにはヨアヒムが開発したプログラムが動き始め、哨戒艇からのリアルタイムデータが表示される。ワームホールの形成度や大きさ、周辺の重力やエキゾチック粒子線といった数字も刻々と変化していく。

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。ここまででおよそ60%ぐらいの進行です。

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