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氷結時代の終わり  作者: 六角光汰
第三章 ラロス系の擾乱
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「つまり、私はこの現象は高度文明が何かのエネルギー源として利用したのだと思っています。恒星をまるごと一つです。そんなに莫大なエネルギーを必要とするものは限られてきます。ワームホールではないでしょうか。ワームホールを一定時間維持するにはエネルギーが必要です。これは敵の仕業の可能性が高いと推測しています。ただし、この百年間に観測された恒星の消滅は、現在の私たちに対する攻撃とは関係ないはずです。時間的な因果関係がありません。また、この事実は敵が二万年前から何かをしていることを推測させます」

「そうか、要するに君は敵の本拠地がそのあたりにあるのではないかと考えているのだな?」

「そうです。しかし、非常に確度は低い。現在、その方向に向けて精密観測を行っています」

「うむ。もしそこに相転移爆弾が届いて炸裂したとしても、こちらが観測できるのは二万年後というわけか」

 ルビアがアゴをこすりながら頭の中の情報を整理している。

 しばらくの沈黙を破ったのはこの作戦の提案者のバリーだった。

「これを実行すると、敵はむやみにワームホールをラロス系の近くに開くことを躊躇するようになるかもしれません」

「なるほど。そういうメリットもあるな。よし。やろう。首相の私も支持する。防衛局長、バリーと一緒に作戦を練り込んでくれ。可能になった段階で報告して欲しい。専用の作戦チームや艦隊も作りたい」

「わかりました」

 ルビアが答えると、首相は疲れた顔を見せながら立ち上がった。次の仕事もヨアヒムが必要らしく、小声で話しながら一緒に薄暗い小部屋を出て行く。残ったのは防衛局長と新入りスタッフの二人だった。

「バリー、なかなか発想が豊かなようだな。その調子で頑張ってほしい」

「ありがとうございます。例の作戦ですが、戦艦を突っ込ませてそのまま敵の本拠地に乗り込むという手もあります。しかし危険が大きい。レベル4AIに指揮させた艦隊を送ることも考えましたが」

「人間の乗った船がワームホールに突っ込むのは無謀だ。行けたとしても二万年も帰れない。AI艦隊を送る手も危険が大きいかもしれない。拿捕されたとしたら、我々のテクノロジーが解析されてしまう。ここは試しに相転移爆弾をお見舞いするのがいいと思う。だが、作戦を考えるときにそのような制限を考慮する必要はない。これからも自由に色々と考えてくれ」

「わかりました」

 局長が立ち上がった。バリーも上司の後ろについて小部屋を出た。

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