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ステルスモードが初体験だったルビア艦長は、異様な経験とともに敵の攻撃をかわすことに成功し、少し興奮していた。
「ステルスの解除は待ってください。今の攻撃はあまりにも非合理的なおかつ原始的でした。何かあるのかもしれません」
超AIがそういったとたん。細長いホログラムが壁から二本猛烈な速度で突き出た。まるでレーザーの照射のようにいつまでも消えない。しかしよく見ると、幅三メートルほどの帯の内側には構造がある。複雑な電子機器やエンジン、そして激烈な光を発する小型核融合エンジンの構造が流れながらも、長く引き延ばされて見える。
「これは! 大型ミサイルだ!」
ルビアが大声を上げた。結局、相当の速度ですれ違ったにもかかわらず、船内に突入してきた異物が突き抜けるまでに五分もかかった。
「相手の戦術に引っかかるところでした。ステルスを解除するタイミングを見計らって、ミサイルを発射していたのです。ステルス中はミサイルの観測ができませんから」
「最初のデブリのまき散らしも作戦だったのだな。あやうくひっかかるところだった」
「いま、有線でつながったセンサーをステルス空間の外へ出しました。その結果、脅威は観測されません。モードを解除します」
船外の情報が一気に流れ込んできた。ガザリア号は三〇光秒前方にいた。安堵したルビアは次の行動の選択肢を考えた。全面攻撃は早すぎる。まだ交渉を続けるべきだろう。市長に続いてイアイン・ライントにやらせてみてはどうだろうか。情報によれば、彼女が心配しているロロアという女がガザリア号にいるらしい。それがとっかかりになるかもしれない。いや、ならないに違いない。要するにあらゆる手を使ったという経緯はしっかりと作っておくべきなのだ。




