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「返信が来ました。『停船は不可能である。このまま系外の惑星を目指す。邪魔するのなら攻撃も辞さない。我々はラロス系の法律の適用を受けない、独立した主権を持つことを宣言する』というものです。声紋からするとナゲホ・ミザム議長でしょう」
「追跡を続行だ。作戦可能な距離になったら教えてくれ」
「了解しました」
「通信チャンネルは固定されたか?」
「はい」
「ではサクゲナ市長を呼んでくれ」
ヨアヒムがごにょごにょとコンソールに向かって何か言うと、すぐにマクモ・ゾーラが入ってきた。同時に、巨大スクリーンにナゲホ・ミザム議長の、強風をまともに浴び続けているかのような苦痛に満ちた顔が大写しになった。ヨアヒムに案内され、市長がナビゲーションシートにゆっくりと座る。こちらは少し体が重いだけで、苦悶の表情を浮かべることはない。
「ナゲホ・ミザム議長、サクゲナ市長のマクモ・ゾーラです。今回、あなたとこんな境遇で相対することになったことを遺憾に思います」
議長の目は閉じ気味だったが、市長の姿を見て一瞬だけ大きく開かれた。必死に口やあごを動かして言葉を絞り出している。
「市長、お久しぶりです…。ご存じのように…、我々にはもう…ラロス系内での…居場所はない…。放っておいて…ください」
「そうはいきませんよ、議長。とりあえず、そんな馬鹿げた加速はやめませんか。せめて2G程度にしてください。我々は攻撃しません。私がそんなことをさせませんから。
最大の懸念は、幹部のあなたの身ではありません。こんなことを申しましてお怒りにならないでいただきたが、イアイン・ライントの誘拐に関与しなかった人たち、あるいは十九人にものぼる十八歳以下の子供たちが心配なのです。彼らに罪がないことは明らかです。したがって、ラロス系には彼らの居場所はある。せめて子供たちだけでも我々に引き渡していただきたいのです」
ミザム議長は、シートに押し付けられて動かない体をよじり、腕を伸ばそうとする。しかし、見えない何十本の手に掴まれてでもいるように、痙攣しながら横の席にいるであろう誰かに何かを指示している。口が言葉を発したのか、ただ苦痛にゆがんだのか判別できなかったが、何らかの意志を伝えようとしていた。
やがて、ミザム議長の苦痛が次第に溶けていった。時速二百メートルの風が徐々に弱まり、普通に呼吸ができるようになっていった。
「ルビア艦長、目標は加速を2Gに落としました」
「そりゃ無理だろうよ」と艦長は口元を歪ませた。
「議長、聞こえますか。マクモ・ゾーラです。あなたの判断は賢明です。加速を緩めましたね。他のみなさんもほっとしているはずです」
「先ほどの市長の提案ですが、我々は全員投降する気はありません」
そういってあご鬚の濃い男は上や左右を見る。何かのデータを確認しているようだった。




