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「もうおよしなさい。これ以上騒ぎを大きくしないで大人しくしてくれれば何事もなくここから出れる。そのAIの行動についても不問に付す」
「ありえない。要求を聞いてくれるまで絶対にやめない」
イアインは銃を首相に向けた。
「その要求というのは?」
「もちろん、自然主義者同盟のことよ」
「前にも言ったように、彼らを一網打尽にして逮捕する作戦はすぐに始まる。それをキャンセルすることは不可能だ」
「違う。そうじゃない。彼らは絶対に徹底抗戦してくるはず。そうしたら戦闘になって彼らは全員死ぬか自爆する。彼らの中には少なくとも十人の子供たちがいる。その子たちに罪はあるの? それから、私の誘拐を決定したのは幹部の人たちでしょ。それ以外の人も巻き添えになって死ぬことになる。そんなことは絶対に許されない!」
イアインは一気にまくしたてた。
「ということは、君は逮捕に向かうのは賛成だが無罪に近い人たちを救いたいということだな? それはもちろん考慮している。交渉もするつもりだ。ただ、彼らが応じる可能性は少ないと考えている」
「彼らの準光速船にはステルス機能があるはず。それを使えばこちらも捕捉できません。簡単に逃げられるはずですよ」
首相とイアインの会話に割り込んできたのはラナンだった。それに応じたのはヨアヒムだった。
「それは無理です。ステルス機能は確率波形変換装置によるものですが、その装置にはリアルタイムでこちらから量子暗号を送り、機能停止できます。ステルス機能も慣性質量制御機能も使えなくすることが可能です」
「そうでしたか。知りませんでした。機密事項なのでは?」
ラナンの問いかけに超AIは答えなかった。
「要するに、彼らは準光速船に乗っていても逃げられないわけね。彼らが比較的罪の軽い人たちを解放するように説得すればいいわけでしょ。わかった。私は要求する。サクゲナ市長のマクモ・ゾーラと、犯人たちと関係があるナチュラリスト数人、それから私を逮捕現場に同行させること」
「オペレーションはすでに始まっているのだ。そういうわけにはいかない」
「いいえ、そういうわけにしていただきます!」
イアインの断固とした態度を見て首相は考え込んだが、「ダメだ。民間人を同行させるのは危険だ」といった。
「ラナン!」
そう言われた小型AIは、また顔を手のひらで覆った。ご主人さまから何を要求されているのかわかってしまったからだ。
動きは素早かった。首相の脇に回り込んで背中をどんと突いた。すると首相はよろけながらイアインの前に飛んできた。その体に抱きついたイアインは銃を首相の頭に突き付けた。
「はぁ~。これで私はもう終わりですね……」
ラナンはその場に座り込んでしまった。
「何をするんだ!」
首相は気色ばんだが、金属の冷たさを頭皮に感じて固まった。警備ロボットたちは動かなかったが、人間の警備員たちは一歩前に出て武器を取り出した。一気に緊張感が高まった。だが超AIだけがその様子を冷徹な目で見ていた。
「イアイン・ライント。その行為は脅迫罪や殺人未遂罪になります。どうか考え直してください。まさかあなたが本当に発砲するとは思えませんが、万が一ということもあります。銃を降ろしてください」
ヨアヒムは表情を変えないままよく響く冷静な声を出した。
「できません! 要求を呑んでください。一つ追加します。ラナンの行為を不問に付すこと」
「あなたは私の敬愛する父、スピルク・ライントの子孫です。どうかやめてください。私はあなたが裁かれるのを見たくない」
「そんなこと関係ない」
「全人類が悲しむでしょう。それほどあなたは重要な人物なのです」
「だったら重要人物の意見を少しは聞いてよ」
「こういうことをしても政府の方針は変わらないのだよ。また、変わってはいけない」
依然として銃口を突き付けられている首相がそう言った。
「犯罪? 脅迫? 殺人未遂? だったらこうすれば罪の償いになるでしょ」
イアインはそれまで首相の腰に回していた左手を解いた。そして銃口を自分に向けた。そんなことをするとは夢にも思っていなかった。




