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氷結時代の終わり  作者: 六角光汰
第四章 終末の詠唱
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「似ているさ。だって君は私のゲノムを使って人工出産した子なのだから」

 首相が驚愕の表情を浮かべて身動きしない。いまや評議員たちも何が起こっているのかわからず、右往左往し始めた。

「お前は誰だ!」

 首相が叫んだ。

「もう君はわかっているのだろう?」

「いや、そんなことはどうでもいい! はやく装置を起動してくれ。そうしないとレザム星はおろか、このラロス系が消滅してしまう!」

「レザムをステルス化しなくてもラロス系は消滅しない。レザム星を衛星含めてすべてアセンションさせてしまえば。矮星は通り過ぎる」

 首相以下、評議員たちは絶句した。

「ヨアヒムを戻せ! 早く!」と叫んだのはケオマ・ロカイだった。

「同じだよ。ケオマ評議員。ヨアヒムが起動しても私が現れることになる。そしてアーイアの詠唱が始まると同時にすべてが終わる」

「どうなっているんだ!」

 今度はルミノア・ターナが叫んだ。

「首相! どうするんです!」

 ヤイサイダ・マイも叫んだ。

「安心したまえ、君たちや十一面体までアセンションさせるつもりはない。起動しているAIがレビルスでもヨアヒムでもこの十一面体を避難させるつもりだ」

「どうしてだ?」

 首相が悔しげな表情をにじませながら問う。

「これから始まる超AIの時代には十一面体が必要だからだ」

 しばらく誰も発言しなかったが、ケオマ・ロカイの「この人格は一体誰なんです?」という問いかけに対して、イーアライ首相が観念したように落ち着いた声を振り絞った。

「スピルク・ライントだ」

 その場に驚嘆の声がこだましたが、首相が肩を落としながら細々と話を続ける。

「AIがいなければ何もできなくなってしまった我々の負けだ。いや、私の無能を許してほしい。アセンション後に人格が保てると、こういうことができるとは知らなかった。まさかスピルク、あなたがアーイアの片棒を担ぐとは……」

「落胆するな。イーアライ。君は人類の希望を創造するのに貢献したじゃないか。それをイアイン・ライントに託した。それで君の使命は終わったのだ。私の使命も終わった。私はもうすぐ宇宙に還るつもりだ」

 首相の体から力が抜け、その場に座り込んだ。異常な疲れと脱力感に襲われ、目を閉じて両手で顔を覆った。

 呆然として声も発しない評議員たちの向こうにあるスクリーンの中では、ステージの上のアーイア・ライントが演説を終えようとしていた。


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