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氷結時代の終わり  作者: 六角光汰
第四章 終末の詠唱
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「みなさん、ここに書かれていることを理解できますよね。これは人類が超知性を生み出したことを言っているのです。つまりヨアヒムが出現することの預言です。人類の使命です。この教典には、イアの本質とは自らの言葉を得ることという記述が多数でてきます。そして、最後にはイアが言葉を得たときに、我々の使命は終わるとあります。

 私たちは使命を果たしました。とうとうそのときがやってきたのです!」

 聴衆が沸いた。ザトキスの神官の集会はこれまでにも開かれてきた。しかし、こんなに歓声が響くのは最近のことだ。白色矮星が出現する前は、どんよりとした空気が流れた死者の集会のようだった。

 だが、あと五十時間も待てば再びあの美しい女神がありがたくも降臨する。そのとき、待ちに待った神の恩寵が確実に世界を包むのだ。

 信者たちは万歳をするように空を見上げた。青空の中に点々と雲のかたまりが流れている。そして、この惑星が始まって以来ずっと滋養を含む光の恵みを与えてくれていたラロスが西の空にあるのは当たり前だったが、今では北の空にもう一つの巨大な光球があった。

 そのおかげで気温が異常に上昇し、立っているだけで汗が出てくる。足元の影も二つできている。夜が近いというのに、まるで午前中のような光があたりに充満していた。

 そのとき、もう一つの見慣れない光景が空に現れた。人々は指をさして騒めいた。大型の戦艦が降下してきたからだ。

 アポイサムの上空に準光速船や戦艦が現れることは稀だった。そうした船は大気圏内での行動には適していないからだ。しかし、アポイサムの上空に現れた巨大な戦艦は、危険だと思われるくらいの高度まで降下して止まった。

 人々の注目を集めている中、一機のシャトルが脇腹から出てきて降りてくる。

 群集がまた沸いた。モニュメント前のステージに、突如現れた戦艦を迎えるかのように、アーイア・ライントが現れたからだ。人々は上空のことを忘れて大歓声を上げた。教祖も上空を見上げているので、人々の視線もステージとシャトルを往復する。

 やがて、着陸態勢に入ったシャトルの下には人がいなくなった。周囲の人々は何が起こったのかわからず固唾を飲んでいた。だが、ハッチが開いてそこから現れた人物を認めると、歓声が再び高まった。

「あれはイアイン・ライントだろ」「どうしてこんなところに」「母親のところへ帰ってきたんだ」「移住団のほうにいたはずだよな」「我々と運命を共にしてくれるのだ」

 そんな勝手な噂を口にしながら、群集は予想外の闖入者とその後ろにくっついている小型AIに道を開けた。

 ステージにイアインたちが近づいてもアーイアは直立不動のまま動かず、「のこのこと何しにきたの。会わないと言ったのに」と冷たい口調で迎えた。

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