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氷結時代の終わり  作者: 六角光汰
第四章 終末の詠唱
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 暗黒のベールを脱ぎ棄てて一斉に姿を見せた夥しい戦闘艦からの攻撃が始まった。直径一万キロ以上ある白いガスの帯に向けて、フェイザー砲の輝かしい筋が無数に走り、ミサイルや砲弾が飛んでいく。ガスの帯に穴が空くほどの爆発が次々に起こり、解放されたエネルギーが輪になって広がっていく。反物質ミサイルの着弾点から直径千キロ以内にあった人工物は、完膚なきまでに破壊されているはずだ。

 攻撃開始を意外に冷静に眺めていたルビアは「こんなものか」と思った。目もくらむような大爆発には音が伝わってこないため臨場感が希薄だ。

 敵船からの反撃は大出力のレーザーが主だった。しかし、レーザーの光芒が走っても、どちら側が発射したのか判別がつかない。それほど激しい撃ち合いがしばらく続いた。

 ルビアはポインティングデバイスでスクリーンに表示されている最前線の船に触れた。そこからの映像を得るためだ。すると、一瞬だけ白い尾が映ったあとに映像が途切れた。同時に、スクリーン上の輝点も消えた。

 空域を拡大すると、消滅していく味方艦も多いことがわかった。損耗率が刻々と増えていく。そして百%だった残存率は、今は八十三・七五六%になっていた。

 最前線の戦闘艦は敵の攻撃を感知したらステルス状態に移行するはずだ。なのに、どうしてこれほどの損害を受けているのだろうか。

「バリー、敵の攻撃が予想以上に有効な理由を探れ」

 振り向いて指示すると、バリーは顔を上げ、「それを見てください」と艦長の前面にあるスクリーンを指差した。

 ルビアが前を向くと、そこには赤く囲まれた小さめの映像があった。明らかにステルスモード中の船で記録された映像だ。この映像は一度十一面体に送られたものをバリーが引っ張て来たものだった。ステルス状態だと攻撃されても物理的な被害はないはずだった。ところが、突然映像が途切れたのだ。

「どういうことだ? バリー」 前を向いたまま問いかけると、部下の声が後ろから聞こえてきた。

「ステルス状態に有効な攻撃法があるということでしょう。おそらく重力波パルスなのではないでしょうか。重力波パルスを発生させるミサイルでしょう」

「まずいな。重力波には弱かったのか」

「非常にまずいです。我々お得意のステルス機能が無効になってしまいます」

「近くの艦が消滅したときの距離を計測した艦があります。それはおよそ二百キロ。二百キロ離れていれば損害はないようです。船は危険なほど揺さぶられますが」

「よし、その情報をまとめて全艦に通知しろ。十一面体にも送れ」

「了解しました」

 ルビアがふと戦力残存率に目をやると、七十八・三五九になっていた。それに対して推定される敵の残存率は四十三・三二六と表示されていた。優勢には違いないが、この数字は予想外だ。

 スクリーンに表示された情報によると、敵はすでに散開し、尾に対して直角の方向へ飛散している。

「よし。後衛部隊、攻撃開始だ!」

 後衛部隊であるガスピル級戦艦たちに合図を送ると、ルビアはシートに深く座った。まるで白色矮星に突っ込んでいくような強烈な加速が始まった。

 戦闘が行われている空域は、あっという間に直径にして三十光分まで広がった。しかし、敵はラロス系の内側に向かうはずだ。外側に逃げ道を求めている敵を追いかける必要はない。

 ガスピル級戦艦たちとその属艦たちは、網を張るような陣形で近づく敵を待ち受けた。そこに次々と球形の敵艦が入り込んでくる。

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