教会編 7
夜行列車がツェントガルムに着いたのは、朝食を食べ終えてから1時間後のことだった。
「ここがツェントガルム…。」
王都とは違い自然が多く、建物も木で作られているのが沢山見られた。少し薄暗く太陽の光もこの国を覆う世界樹の葉に遮られ、所々木漏れ日が差し込んでいる。
王道ルミエスの隣国であるこの国は最も世界樹に近い国と言われている。王都は世界樹から離れており、世界樹の葉の外側に位置しているが、隣国は近すぎる故に世界樹に覆われていた。
太陽の光が入りにくいがその分、土地に栄養が多く含まれているため植物の成長速度が速いと有名である。また、パワースポットが多いことでも有名な国なのだ。
「では、エルピス教会に向かいましょう。」
何度か来たことがあるというヘレナを先頭に4人は歩みを進めた。私の後ろを歩くネロの姿を少しだけ盗み見て、ため息をつく。
夕食後に部屋へ戻った後もネロはやはり部屋の外で過ごした。声をかけようにも断られると思うとなかなか言い出せず、結局朝を迎えてしまった。
ネロは昨日と変わりなく何かあれば声をかけてきたり、此方に気を配ったりしている。私だけが昨日のことを気にしてしまいネロのことを避けてしまっているようだった。それもネロに伝わっているみたいで、さらに気を使わせてしまっているのがわかった。
エルピス教会は都市の外れにあるらしい。徒歩では時間がかかるということで、馬車を借りて行くことにした。首都と言っても全ての地域で栄えているわけではなく、外れの方に行けば行くほど見かける建物や人が少なくなっていった。
「ほら、着いたよ。」
馭者が指差す先には、木に囲まれた中にポツリと1つの教会が建っている。漏れだす木漏れ日が教会に差し込む様子は、どこか幻想的な雰囲気を湧き立たせていた。そして、何より教会の後ろに見える世界樹の幹は、見ている者を圧倒させる何かがある。
「それにしても物好きな客だ。エルピス教会なんて何処にでも建っているだろう。」
確かにその通りだ。馭者の言っているようにエルピス教会は世界平和の指標として戦後に作られた建物で、今では第二階層内の国に必ず1件以上は建っている。とても観光地に選ばれるような建物ではないことは確かだった。
「ある天族を探しに来た。羽だけは立派な馬鹿面を見なかったか。」
ネロの問いに馭者は首を横に振る。どうやら天族は教会にいる司祭しか知らないとのことだった。
「それにしても、この時期にこの教会に来るなんざ本当に物好きな天族だな。」
「この時期とはどういうことかしら。何かあったのですか。」
馭者の言葉に引っ掛かりを感じ、すかさず口を開く。馭者は辺りを見渡すと小声でポツリと呟いた。
「近頃、異教徒による脅迫状が届いたそうだ。『エルピスは天界神ヴァイスによって作られた虚偽の女神にすぎない。虚偽の平和を享受する愚かな家畜共よ。目を覚ませ、全ては神ニルヴァーナの教えをもとに。解放こそが救いなのだ。』とな。」




