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裏幻想郷 ~黒死異変~  作者: ザ・ディル
裏幻想郷 ~黒死異変エンド~
44/50

43話 チェンジコントローラビリティ


 ここは霧の湖の水面下。

 一面は白で飾られ、上を見上げれば黒だけが満ちている。

 そこにいたのはルーミアを操るサグメで、愉悦をただただ楽しんでいた。

 

 「サグメ……! なんで貴女がこんなことを……」

 

 「いやだってさぁ、幻想郷のヤツらって私たちを見下したいると思うんだよね。だから制裁を――」

 

 「なら……! なんで裏幻想郷のルーミアを操っているんだ! 答えろっ!」

 

 「えっ……それは面白いからに決まってるけど……?」

 

 ――サグメは以前こんな畜生じゃなかったはずだ……なぜこんなことに……?

 

 サグメの言っていることは支離滅裂を通りすぎていると言っても過言ではない。

 しかし、妖夢は会話を続ける。

 というのも、サグメは明らかに戦闘体制ではなかった。攻撃をしたのにも拘わらずだ。

 そこから妖夢は会話で出来る限りの時間稼ぎをしようとした。

 そうすることで事はいい方向に運ばれると考えていた。

 

 「いつから……いつからそんな変わりかたをしたんだ……サグメ……!」

 

 「いつ……? というかそんなに変わってなくない?」

 

 ――自覚症状がない? それともただただ私を揺さぶる為のフェイクか? でも、質問を多くすればボロが出るはずだ。特に、支離滅裂なことを言っているサグメなら……。

 

 妖夢は思考を凝らす。

 巡り巡らせ巡り回す。

 そして――、

 

 「いいや、変わったよ。サグメ――お前は変わりすぎだ。屑に成り下がった。『表』の奴ら以下にな」

 

 妖夢は時間稼ぎを諦めた。

 あまりにも支離滅裂すぎて何も分からなかった。

 そしてサグメを殺すプランを一瞬で組み立てていた。

 

 「…………死ね……!」

 

 裏幻想郷の奴に完全に見下され、怒りに満ちたサグメは――、

 

 「ライカード発動! 嘘武器『虚現(きょげん)・楼観剣』!」

 

 サグメは無数の楼観剣を現して、それを超能力みたく操って、妖夢を襲う。

 無数の楼観剣が圧倒的密度となった故、抜け道はない――はずだった。

 

 「ソードカード発動! 魂替『ソウルチェンジ』!」

 

 妖夢は消え、半霊が現れる。

 妖夢は既にサグメの真上だ。

 そして――、

 

 「ソードカード発動! 魂斬『魂求(こんきゅう)一閃(いっせん)!」

 

 刀を振り下ろす。

 しかし、

 

 「ライカード発動! 嘘扱『ライ・アクト』!」

 

 既にサグメはそこにいない。

 さらに――、

 

 「ペストカード発動! 死生『インフィニティ・デス・ループ』!」

 

 ――『カード』の種類が二つだと!? そんなの裏幻想郷に存在しないはずなのに!?

 

 

 妖夢は驚嘆する。

 これは妖夢が知っているサグメとはかけ離れすぎている。

 正直言ってヤバい状況だ。

 事前情報がまったくなく、怪物と戦いを起こしているようなものだ。

 だが、

 

 「スペルカード発動! 霊符『夢想封印』!」

 

 七つの玉虫色がサグメを襲う。

 

 一対一で戦うなら絶望的だが、二人であれば絶望には至らない。 数で圧倒すれば強者でも倒せるのは昔からの謂われで、今現在でも通じるものがある。

 

 しかし、サグメは霊夢の攻撃からも逃れる。

 その攻撃から逃げた手段は……、

 

 「なっ――!」

 「消えた……のかしら……?」

 

 サグメは消えていた。

 その理由は先ほど発動した『カード』の効果だ。

 

 

 死生『インフィニティ・デス・ループ』

 これは、端的に言えば死にながらにして生きていることを可能にする『カード』だ。

 だから殺されても生きていることに換えられる。さらには、ランダムの場所に移動できる。

 それは即ち、この世からの消滅を不可能とさせる因子。

 

 サグメを殺すことは不可能。それは実質的に不死ということを表していて、しかし殺すこと以外なら可能だ。

 

 サグメは刹那で霊夢の後ろに移動していた。

 霊夢は気づかない。まだ、サグメがいなくなったことに戸惑いが生じてしまっている。

 そしてそのまま『カード』を発動し――、

 

 「元正斬(げんせいざん)!」

 

 サグメに『カード』は発動させる隙は与えない。

 妖夢の放った技により、本来あってはならないこと――死してもなお生きていることは否定され――、

 

 「うーん……もしかしてそんなんで死ぬと思ったのかなぁ、妖夢」

 

 「…………なんで……平然としていられる?」

 

 妖夢はサグメの現在の状態を詳しく把握していなかったが、『異』なるものを手にしているのは判っていた。

 だからこそ、『異』を書き消す元正斬(げんせいざん)を使っても何も起こらないことに困惑していた。

 

 「その理由に対しては、死んでも生かされる『カード』を発動したからだ。納得したかな?」

 

 ――納得できねぇよ! そんなインチキカードがこの世界にあんのか!? こっちはそのインチキを絶つようにしたんだぞ!? ……どうしたらこの状況を打開できる!?

 

 妖夢はあまりの事態の大きさ故に、把握することができないほどの衝撃を受けていた。

 

 急に妖夢は手を繋がれる。それは――、

 

 「逃げるわよ!」

 

 霊夢だ。

 

 霊夢は、急いでサグメから離れる。

 

 「へー……、ここから出てくのか。確かにいい判断だよなぁ。霧の湖の上に行けば、『裏』のチルノと魔理沙がいる。逃がせば面倒だな。まぁ……逃がすわけにはいかねぇけどなぁ! ペストカード発動! 黒影『ドールトリート』!」

 

 「なっ……!」

 「これって……!」

 

 白一面と言っても過言ではない場所に『黒』は現れる。それが現れた場所は霊夢たちにとってみれば上、霧の湖で言えば水面からだ。

 そこから霊夢たちを襲うために『黒』は落とされ、それは霊夢と妖夢を狙う。

 さらに異常なのはその数だ。

 無数と言ってもいいほどの『黒』は人を模して、故に人を型どった『黒』となる。

 それらの『黒』は異常な速度で霊夢たちに向かって取り込もうとする。だがそれは無意味だ。

 

 「あ゛っ?」

 

 サグメは驚く。

 無理もない。霊夢は自ら『黒』に向かって、妖夢と手を繋いで突進していく。

 そして――、

 

 「なにィィ!?」

 

 『黒』は霊夢たちを吸収しない。

 むしろ、『黒』は破壊されている。

 

 「このまま逃げるわよ、妖夢!」

 「はいっ!」

 

 霊夢たちは無数の『黒』を無に帰しながら霧の湖の下面から出ようとする。

 

 「させねぇよ! ペストカード発動! 知覚狂『ブラックショート』!」

 

 「「――!?」」

 

 全てが『黒』に包まれる。結果、視覚が奪われてしまった。

 霊夢と妖夢は何も見えなく、何も感じられない状況下に陥る。

 でも、それでも妖夢たちには関係ない。

 何故なら、

 

 「元正斬(げんせいざん)!」

 

 「…………は? ふざけんなっ!」

 

 『黒』を正にして、『黒』を消し去るから問題ないからだ。

 現に『黒』は消え、霧の湖の表面にしか『黒』はない。

 

 そのまま霊夢たちは霧の湖の下面から抜け出した。

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