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裏幻想郷 ~黒死異変~  作者: ザ・ディル
裏幻想郷 ~咲夜andウドンゲ編~
13/50

12話 狂者になった因子


 とあるメイドは白玉楼(はくぎょくろう)の手前で考えを巡らし始めた。

 

 

 ――ここが裏幻想郷の白玉楼。幻想郷のと代わり映えしないわね。であれば白玉楼内にいるのは裏幽々子(ゆゆこ)、そして裏妖夢(ようむ)の可能性が高いわね。

 

 

 咲夜(さくや)はそんなことを論理的に展開、想像――予測を打ち立てる。失敗は有ってはならない。時間は惜しいが無策で突っ込んでも、上手くいくわけが無い。それを解ってるからこその十数秒の推測だ。

 

 

 咲夜は白玉楼に足を踏み入れる。

 

 

 ――トラップはなさそうね。あとは裏幽々子、もしくは裏妖夢に会う。裏幽々子であれば黒死病を操作できる奴を直接聞き出すだけ。裏妖夢であれば普遍的な会話で間を持たせつつ、裏幽々子を待つ。もしくは戦闘して勝って拷問し、黒死病を操れる奴を聞き出す。

 

 

 咲夜の即座に考えたアイデアは即座にしては良いアイデアだ。

 最も裏妖夢に会った場合は考えなければいけないことがある。

 それは幻想郷と裏幻想郷の同一人物が同じ特徴――性格では無いことだ。藍はそれについて深くは喋って無かった。誰に会わなくても問題無く異変を解決できると思ってしまった(ゆえ)(おこた)りだろう。

 つまり、咲夜は裏妖夢の性格を把握してなかった。しかし白玉楼に入る前に性格が幻想郷の妖夢に近い可能性が高まり、足を踏み入れてそれは確信に変わった。

 

 

 ――やっぱり……。裏妖夢の性格は恐らく幻想郷の妖夢と殆ど変わらないで問題なさそうね。

 

 

 咲夜の考えはこうだ。裏幻想郷の白玉楼が幻想郷のと変わらない姿をしている。だから裏妖夢もコチラの妖夢と性格が似てるということだ。

 暴論に思われるかもしれないので少し補足をする。もしも裏妖夢が暴れるのが好きであれば白玉楼は半壊してる部分も見受けられるだろう。しかしそれが無い。それどころか、白玉楼にある庭の手入れが幻想郷の妖夢と変わらないように見えたのだ。松などの木々を手入れするとどうしても性格が出てきてしまうらしい。それを利用することで確信の裏付けに至ったのだ。

 

 

 

 

 

 咲夜は西行妖(さいぎょうあやかし)に近づく。そこにいると思ったからだ。

 そこに本当にいた。裏妖夢は剣を振るって修業してるようだった。しかし、すぐに気付いて咲夜に身体を向けた。

 

 

 ――挨拶をするのはメイドとして当たり前。当然、裏の(わたくし)もしてるはず。

 「妖夢、こんにちは」

 

 

 「……咲夜さんですか。こんにちは」

 

 

 咲夜は会釈をし、裏妖夢も会釈する。これで咲夜はいくつかのことを知る。

 

 

 ――裏妖夢と裏幻想郷の(わたくし)の関係はある程度良好のようね。裏幻想郷の(わたくし)はヤクザみたいな性格なんかではない。メイドとしての最低限の働きは必ずしている……わね。

 

 

 瞬時に咲夜は思考を無意識的に巡らせ、予想を打ち立てる。

 そして咲夜は次のステップに進む。

 

 

 「実は今、お嬢様から有給休暇を貰って暇してたのよ。話し相手になってくれないかしら?」

 

 

 「今しがた修行も終わったところですし、問題無いですよ」

 

 裏妖夢は承諾(しょうだく)する。

 

 

 ――……よし。あとは怪しまれず、あの霊が来る前に話をつける。霊が来る時間までは速度的な条件であと5分のはず。それまでに話をつけなければ……妖夢を気絶させるしかない。

 

 

 咲夜は裏妖夢にこの5分で幻想郷からきた者として怪しく無いと証明しなくてはならない。それは困難を極めることだが、しなければ戦闘は免れない。

 

 二人は縁側に腰を下ろす。

 

 

 「咲夜さんが白玉楼に来るなんて珍しいですね」

 

 「……少し話したいことがあるわ」

 

 「…………」

 

 

 沈黙。裏妖夢は冷酷な瞳をしながら咲夜に身体を向けた。

 それを見ながらも、咲夜は話を切り出す。 

 

 「実は……(わたくし)は貴女が知っている十六夜咲夜ではないわ。別の場所からきた十六夜咲夜なのよ」

 

 

 少々強引にも見える手だが、これぐらい強引でなければ霊が来るまで、時間的に余裕がない。

 

 「そうですか」

 

 「…………やけにあっさりしてるわね」

 

 

 咲夜の疑問は最もだろう。

 

 同一人物にしか見えない者がいきなり別人というのはしっくり来ない。というか普通であれば呆然、唖然(あぜん)、そんな感情をもち、そして表情に出す。

 だが、裏妖夢はそんな表情は見せない。これは異質なまでの不気味さだ。

 

 裏妖夢は異様、異質、異色、異常、怪異(かいい)、不気味さを醸し出しながら「そうですか」と言っていた。

 故に咲夜は悟る。

 

 

 ――裏妖夢との交渉は絶望的……。

 

 

 「私は似たことを昔、体験しました。そのとき……死にかけた。幽々子様にも迷惑を……。そして“再び現れた”。だから今度こそは偽物の咲夜、アンタを殺す。今度は騙されない」

 

 明らかなる敵としての宣言。それを数瞬(すうしゅん)前に理解していた咲夜は距離をとっていた。

 そのとき『――』ができないことを知ることになる。それは――、

 

 ――……時止めができなくなっている……!? ……だけれど時を遅くする、自身の時を速めることは……できた。これなら戦える。

 

 

 時止めはできないが、時を操る能力の全てが失われたわけではないと確信した咲夜は疑問を抱いた裏妖夢の言葉に意見する。

 

 

 「今……再び現れたと言ったけれど? 貴女と会ったのは初めてよ」

 

 「嘘も大概にしろ、クズ」

 

 ――挑発……か、本心か? どちらでもいいかもしれないけど裏妖夢の身体に触れるのは絶対ダメね。何か仕掛けてるわね。

 

 

 咲夜の思考は正しいだろう。もし、いきなり拘束するようにすれば何か仕掛け――例えば爆弾を(ふところ)に隠しているかもしれない。そして咲夜ごと爆破させる。それほど怪異的な瞳をしていた。

 

 裏妖夢はいつの間にか戦闘体制に入っていた。

 

 

 「貴女はここで死ぬ。必ず。絶対に、だ」

 

 

 そこに憎しみの声がこもっていたのはいうまでもないほどの圧倒的な憎悪。

 だがそれとは別の感情も有った。

 

 

 

 ――泣いている……!? もしかして昔来た偽者の(わたくし)が何か関係しているのかしら……? なら交渉できるかもしれない。

  

 

 彼女は憎しみのあまり泣く狂人ではない。まるで誰かの(かたき)をとるような、咲夜はそのように感じていた。故に、無駄ではないアクションを起こす。

 

 

 「待って! 私が嘘をついた咲夜でないと証明すればいいんでしょう? それなら証明できるはずよ」

 

 「証明……。いったい何を……?」

 

 咲夜はニヤリとしながら言い放つ。証明できれば戦闘せずに話だけで要件が済むからだ。

 

 「ではその偽者は……例えばナイフをいきなり出すことはしたかしら? 恐らくだけれどできないはずよね?」

 ――私の偽者なら絶対ナイフを無から出すことは不可能なはず……。

 

 偽者の咲夜であればナイフを『(霊力)』から出すことは不可能。

 

 「うっ……っく……。……“できない”――………………できた……できた!」

 

 「――!?」

 ――「できない」と言葉にしたのに……、それを否定した……!? 誰かに操られているの……!?

 

 咲夜は裏妖夢が自身の意向に反して嘘をつくことに、そのような考えに至る。そして咲夜は悟る。

 

 

 ――結局、戦うしか道は残されてない……。

 

 「アンタはここで殺す。『表』からきた偽物。お前ら『表』はルーミアを殺した……! 絶対に許さない!」

 

 ――自分が『裏』の住人と知ってるのか? ルーミア? ……いや、それらを考えるのは後回し、今からの戦闘に準備しないと……。

 

 咲夜はナイフを持ち戦闘準備に入る。

 

 ――最悪、不利だとしても隠れてる鈴仙がサポートしてくれるから勝てるはず……。

 

 鈴仙は白玉楼にある木陰に隠れている。だがここで咲夜は気付いてしまう。

 

 

 ――……隠れている鈴仙が見えてるということは……鈴仙も能力に制限がかかっているのか……? いや、今は目の前の相手に集中しよう。

 

 「……準備はいいですか?」

 

 「……ええ」

 

 

 裏妖夢は咲夜が戦闘体制になるまで待機してたかのように刀の(さや)を外さず、自身の肩に乗っけていた。

 裏妖夢も妖夢と同じで二刀を所持してるようでもう片方――白楼剣は腰に携えている。

 

 裏妖夢は肩に乗せていた刀を目の前もっていく。

 

 そして鞘を(はず)――

 「――っかは」

 

 「えっ……?」

 

 

 鞘を外さず裏妖夢の剣――楼観剣の刃が鞘を突き破った。その刃は伸びる。刹那という時間のみで、ありえないほど速く、(はや)く。

 そして一瞬にしてウドンゲの腹部に刺さった。血を吐きながら(もが)くような息遣い。死に(いざな)われるほどの血の量。ウドンゲはついに動作が消える。それは死が訪れたことと変わりない。

 

 咲夜は呆然とする。そして数瞬(すうしゅん)を経て絶望に変化。眼前で起きた事象を理解したくない故に視野は狭くなり、ウドンゲに起きた事象を無視。

 

 「バレバレなんだよ、偽者野郎ども。オレの使役できる霊が来るまでの時間稼ぎだったろうが残念だったな。時間切れだよ、霊から刺客は2体と聞いた。もうゲームオーバーなんだよアンタら。あのときのように騙されるわけにはいかないからなぁ!」

 

 裏妖夢の人格は壊れる。否、本性を隠していただけかもしれない。悪辣な笑みを浮かべながら話すソレは妖夢とはほど遠い。

 

 裏妖夢伸ばした剣――楼観剣は瞬時に元の大きさに戻る。

 

 

 「次はキサマだ。偽者野郎」

 

 

 裏妖夢の人格は完全に崩壊してると認識できる。最初に咲夜が話しかけたときとはまるで別人。だが、それ故なのか――、

 「――ハッ、来るがいいわ。鈴仙を殺したことを後悔させてあげる」

 

 

 咲夜の人格も崩壊していた。ウドンゲと死別することで吹っ切れたかのような咲夜は裏妖夢にそう言い放つ。

 互いに人格は壊れ――否、死の覚悟を決めれば自然と人格はこのようになるかもしれない。

 

 狂ったような二者は冷静を保ちながら狂者(きょうしゃ)として戦うことになる。

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